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我儘

作者: 湯豆腐
掲載日:2025/11/15

あなたって我儘よ。

だってそうでしょ。

もう20年になるんだもの。

ずっとそう思っていたわ。

別れ話じゃないのよ。

別れたい訳じゃ決して無いのよ。

だって愛しているもの。

でも今日くらいはなに言ってもいいわよね。

あなたと初めて会ったのは25年前、大学生の時。

初めての飲み会でふわふわした思いでいた私を口説いできたのがあなただった。

始めは嫌いだったわ。

だって初めて会った女の子を口説いちゃうような軽い男は苦手なんだもの。

それからしばらく関わることはなかったわよね。

時々あなた連絡を寄越してきたけれど。

私があなたを好きになったのはね。

あの日、大学を卒業して少しって時。

お母さんが病気になっちゃって、介護が必要になって。

私一人っ子だしお父さんはその時海外にいたから、私が家に戻るしか無かったのよね。

そのせいで私が苦労して入った会社も辞めなくちゃいけなくて。

辛かったわ。

今だから言えるのだけどね。

本当に辛かった。

でもあなたが助けてくれたのよ。

塞ぎ込んでた私にとっておちゃらけたあなたの態度が、妙に温かく感じたの。

あれって私を笑わせる為にわざとやってたのかしら。

それともあなたはもともとそんな人なのかしら。

私から見ればどっちの可能性もあると感じる。

だから今でもこれだけは分からないの。

結婚してから思い始めたことなんだけれど、もしかして初めて会ったとき、私からしたら軽い感じに見えたけれど、実はあなたは普段の自分を変えてまで私に話しかけてくれたのかしら。

だとしたら私も軽々しく誘いに乗る女でいれば良かった。

そしたらもっと永く過ごせるものね。

それとも、そんな軽々しい女をあなたは愛してくれないかしら。

もしそうならやっぱり私は私で良かったのかもしれないわね。

ごめんね。

急にこんなこと話しちゃって。

びっくりしたかしら。

悪いことしちゃったかしら。

でもいいわよね。

あなたほど迷惑かけてないわ。

むしろお釣りがでるくらいよ。

あ、そうそう私のお母さんのことだけどね。

最近体が良くなってきてね。

もう随分老けてしまったけれど、もう一人でも大丈夫ってぐらいには元気になったのよ。

本当に良かったわ。

正直なこと言うとね。

お母さんのこと、恨んだりしたこともあったけど。

って、あなたには話したわよね。

でもこれは言えてなかったと思うんだけど、もしあのときお母さんが病気になってなかったらあなたと結婚することは無かったかもしれないのよね。

だから今ではあのときのこと寧ろ良かったんじゃないかとも思ってるの。

ちょっと不謹慎な感じだけどね。

実は、あなたには、まだ言ってないこと沢山あるわ。

最近で言うとねあなたが欲しがってた財布誕生日プレゼントに買ってたのよ。

あの財布高いのね。

私の貯金だいぶ持ってかれちゃった。

あなたはきっと喜んでくれるわよね。

だってあなた優しい人だもの。

でもそれと同時に抱え込む人よね。

あなた、詳しいことは分からないけれど、嫌なことがあったのでしょう。

あなたってば大したこと教えてくれないんだもの。

なんでこんなことになっちゃったのかしらね。

あなたってば勝手なのよ。

私のこと一切考えて無いじゃない。

こんなに一緒にいたのなら私の気持ちくらい分かるでしょう。

あなたって我儘よ。

どうして自殺なんてことしたの。

あなたには私がいたじゃない。

それだけじゃ足りない程のことがあったのね。

ひどいわ。

置いていかないで欲しかった。

結婚してから20年。

もっともっと増えるはずだったじゃない。

死ぬにはまだ早いわよ。

あなたはどん底から私を救ってくれたのだから、もしあなたに何かあったらってときは、私があなたを救ってみせようと思ってたのよ。

あなたがずっと好きだった。

嫌いになったことは無かったわ。

会いたい。

我儘かしら。

でも私までって訳にもいかないから。

次会うときのために、たっぷりお話用意しておくわ。

だからそのときはあなたの話しっかり聞かせてね。

またね。


彼女は棺桶を閉めた。




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