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静かすぎる嵐の中心で

「あのさ、聞いた? 冬城先輩……全裸で美術室にいたって……」


「うそでしょ!? 誰と!? なんで!? え、そういう関係なの!?」


「いや、なんかモデルだったらしいけど……でも二人きりだったって……」


昼休みの教室。女子たちがひそひそと囁き合う。

話題の中心は、学年問わず“氷の騎士”と呼ばれて憧れられている、冬城司。

彼が、男子とふたりきりで美術室にいて、裸だった――という目撃情報が、一部の生徒の心をえぐっていた。


「冬城先輩って、そういう人だったんだ……? 全然わかんなかった……」


「しかも、普通に『脱ぐぞ』って言って脱いだらしいよ。なんなの? 感情あるの?」


「ある意味プロ意識……?」


誰もが、冬城の静かな狂気に気づき始めていた。


一方その頃――


「おーい、冬城ー。なんか最近お前、視線感じねぇ?」


「感じるが、気にする必要はない」


「いやいやいや、気にしろよ。お前、何やらかしたんだよ。昨日も三年の女子がめちゃ見てたぞ? しかも赤面しながら」


冬城司は弁当をつつきながら首をかしげる。


「……心当たりはない。ただ、美術部の奴にモデルを頼まれただけだ」


「その“モデル”が問題なんだよなあ……」


「……脱ぐことに、特別な意味はない。描くために必要なら、それでいい」


「だーっ、やめろやめろ! その無感情発言が余計にドキドキするんだよ! なんでそうサラッとヤバいこと言えんだ!?」


「……理解できない」


教室の隅でも。


「あれが冬城先輩……私、もう直視できない……でも見ちゃう……」


「前より人気出てない? なんか“秘密を抱えた男”感が強くなって……」


「しかも冷静だから逆にドキドキするんだよね。何考えてるかわかんないし、でもたぶん本人は本気で何も考えてないんだよ……ヤバい……」


――静かなる嵐は、本人の知らないところで確実に広がっていた。


冬城司はただ、今日も静かに弁当を食べて、午後の授業へ向かう。

誰よりも平常運転で、誰よりも無防備なまま。


そんな彼に、周囲は勝手に妄想をふくらませ、心拍数を上げ続けていた。

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