あの人だけが、わたしを見た
「もし、冬城が恋をしたら」の女の子視点。
文化祭の日、彼――冬城司は、いつもとはまるで違っていた。
ポールダンスのステージ。
無表情でクールな騎士みたいな人だと思っていた彼が、光の中で堂々と踊っていた。
黒の衣装がきらりと光り、シャツの胸元から覗く肌が、まるで何かを挑発しているように見えて――でも、それはいやらしさじゃなくて、強さだった。
自分の身体を、存在を、恥じずに魅せる、そんな強さ。
……気がつけば、目を離せなくなっていた。
放課後。呼び出されたのは、誰もいない教室。
心臓がうるさいくらいに鳴っている。わたし、何を期待してるの?
「来たな」
司くんが、振り返る。
いつもの無表情、じゃない。少しだけ口元がゆるんでいて、何かを企んでるような……でも優しい、そんな顔。
「……今日のダンス、見てたろ?」
うなずくと、彼はわたしの前に歩み寄ってきて、シャツのボタンを外し始めた。
一つ、また一つ。
鍛えられた胸元、汗のにじんだ肌。
近すぎて、息ができない。
「こういうのが、好きだって……聞いたからな」
ドクン、と心臓が鳴った。
言葉にならないまま立ち尽くすと、彼はそっと手を取って、自分の腹筋に触れさせてきた。
硬くて、熱くて、生きてる。
目をそらせないのは、彼の肌より、その目だった。
まっすぐで、真剣で、少し照れているような。
「お前だけだよ。こんなことさせるのは。……俺が、俺のままでいられねぇくらい」
そう言って、ふわりと笑う彼に、わたしの世界は崩れた。
怖いほど綺麗で、嬉しいほど優しくて、ドキドキして。
「だからさ――責任、とれよ?」
もう、限界だった。
顔が熱くて、涙が出そうで、でも、笑ってしまって。
――あぁ、この人はわたしの全部を見てくれる。
その瞬間、ただの憧れが、恋になった。




