特別だから、見せてやる
もし、冬城が恋をしたら
文化祭の熱気が冷めやらぬ放課後。
教室のカーテンが揺れる中、誰もいない空間に一人立っていたのは、冬城司だった。
ドアが静かに開く。
「来たな」
振り返った彼は、いつもの無表情……じゃない。
わずかに口元が緩み、何かを企んでいるような目をしていた。
「……今日のダンス、見てたろ?」
その問いにうなずくと、司は一歩、こちらに近づいてくる。
そして――静かに、シャツのボタンを、ひとつ、またひとつ外しはじめた。
「こういうのが、好きだって……聞いたからな」
開かれたシャツの下、鍛え上げられた胸元が覗く。
いつもの鎧のような服越しじゃわからなかった、彼の体温がそこにあった。
「触ってみろよ。……俺のこと、もっと知っていいって、思ってるんだろ?」
そっと手を引かれ、指が彼の腹筋に触れる。
ぴくりと体が反応し、彼の口元がふっと緩んだ。
「ふはっ……くすぐってぇな。けど……嫌じゃねぇよ。お前になら」
そして、彼はふいに頬を近づけてきた。
熱のこもった視線が、真正面から突き刺さる。
「お前だけだよ。こんなことさせるのは。……俺が、俺のままでいられねぇくらい」
教室には、二人きりの呼吸だけが響いていた。
けれど、それは息苦しいほど心地よかった。
司は、再びニヤリと笑って言った。
「だからさ――責任、とれよ?」
普段は見せない顔と、触れさせた体温と、まっすぐな言葉。
それは全部、“特別な人間”にだけ許されたものだった。
彼にとって、それはただのパフォーマンスじゃない。
本気で、心から、その人を選んだ証。
誰かに見せるものじゃないのに、見せてくれたんだ。
――そう思うと、胸があたたかくなる。