俺が踊りたいから踊る。ただ、それだけだ
文化祭の午後、体育館の特設ステージ。
照明が落とされ、薄暗い中でスポットライトがひとつだけ落ちる。
観客席には生徒だけでなく、先生や保護者の姿も混じっていた。
そんな中、一本の銀色のポールが中央に据えられ、音楽が流れ始めた。
妖しく、それでいて荘厳な旋律。
会場がざわつき始めた、その時――
「……あれ、ポール……?まさか……いや、でも……」
そして、現れたのは冬城司だった。
白いフリルシャツはさらに深く開かれ、肩から滑り落ちる寸前。
黒いレザーパンツは腰骨をギリギリまで露出させ、
脚には太ももをしっかり見せるハイカットのヒールブーツ。
その姿はまさに、艶やかな“黒薔薇”。
そして次の瞬間、彼はポールに手をかけ――
「……っ……!!」
軽やかに、しなやかに、空中へ舞い上がった。
鍛えられた体がポールに巻きつき、重力を無視したような美しい姿勢。
上半身を反らせ、シャツがはらりと翻るたびに、観客席から小さな悲鳴が漏れる。
「……えっ……な、なんであんなに色っぽいの……!?」
「嘘だろ……あれ冬城くんだよな……!?」
「表情一つ変えずに……エロすぎる……無理……脳が焼ける……」
唇を軽く開き、汗のにじむ胸元を晒したまま、
彼はただ一心に踊り続けた。
無表情のまま、官能的な軌道を描いて、ポールを滑り落ちる。
けれど、誰も彼を“卑猥”だとは思えなかった。
あまりに堂々と、あまりに自然体で――それが逆に、背徳的な色気を放っていた。
最後、ポールに片足をかけて逆さにぶら下がり、
静かに観客席を見下ろしたその目が、鋭く光る。
「――見たきゃ見ろ。俺は踊るだけだ」
その一言で、全員の理性が焼き尽くされた。
控室では、女子たちが顔を赤らめて言葉も出ない。
男子は絶望の表情で天を仰ぎ、
保健の先生は気絶寸前で、「あの子……罪だわ……」と呟いていた。
冬城司――鋼の騎士、価値観ブレイカー、そして文化祭の伝説へ。