表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

着たきゃ着るだけだろ?

その男、冬城ふゆき つかさは、学年でも一目置かれる存在だった。

長い黒髪に鋭い目。無駄な言葉は話さず、常に冷静沈着。

制服の着崩しすらしない堅物で、「鋼の騎士」なんてあだ名まで付けられてる。


女が優位なこの世界で、男にしては珍しく威圧感をまとっていた。

女子のほうが一歩引くくらいのオーラを持つ、まさに“例外”。


──だから、誰も想像していなかった。


文化祭当日。

演劇部の『幻想舞踏会』と銘打たれた出し物で、彼が堂々と舞台裏から現れたその瞬間。

その場にいた全員の思考が止まった。


「……え?」


彼が着ていたのは、上半身を大胆に開いたフリルシャツ。

胸元までボタンを開けて、すらりとした鎖骨と胸筋が覗いている。

黒いレザーパンツはぴったりと張り付き、足のラインが丸見えだ。

そして極めつけにヒールのあるブーツを鳴らし、すっ……と優雅に歩み出た。


その姿は艶やかで、まるで男娼のように……いや、それ以上に“堂々としていた”。


「冬城くん!?え、ちょっと……あの人、何してるの……!?」

「え、え?ノリで着せられたんじゃ……え?自分で選んだって……ウソでしょ!?」


ざわめく控え室。

絶句する女子たちの間を、冬城は何も気にする様子もなく通り抜ける。


「……衣装決め、遅れてたから勝手に選んだ。見たきゃ見ればいい」


その一言だけ残して。


驚いたのは舞台だけじゃなかった。

教室を練り歩くパレードの時間にも、彼はそのままの格好で現れた。

写真係の女子が手を震わせながらシャッターを切り、保健委員の子が顔を真っ赤にして逃げ出す。


「や、やばい……なにあの腹筋……」

「こんなの反則だよ……なんで堂々としてんの……」

「ギャップで脳が焼ける……!!」


誰かが「騎士じゃなくて堕天使だったのかよ……」とつぶやいてた。

そのくらい衝撃だった。


だが本人は、終始冷静。

露出を煽るわけでも、見せびらかすでもなく、ただ自然体でそこにいる。


──そう、“それが普通”という顔で。


「着たきゃ着る。別に、誰かに許可なんていらない」


それが、冬城司という男の“本性”だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ