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幽霊さんがやってきた

 私はナルカと素材集めをしながら、魔法の練習を続けていた。


 魔法は、イメージが大事だ。頭の中にあるイメージが具体的であればあるほど、魔法の精度が上がるからだ。だから、炎の魔法を使うには炎の観察が、氷の魔法を使うには氷の冷たさを感じることが大事になってくる。

 回復魔法も、人体の構造を詳しく知っていると、より効果が高まるみたい。ここが、必ず一定量の回復をするポーションとの違いだった。


 夜、寝ているとナルカが話しかけてきた。


「アリサ、大分魔法が使えるようになってきたんじゃない?」


「まだまだよ。魔法には、レベルがあってね。もっと高等な魔法を使おうとすると、身体から力が抜けてしまうの。きっと、まだまだ私の体内にある魔力の量が足りないんだわ」


「なるほどねー。まあ、この世界の食べ物を食べていれば、徐々に魔力の量は増えていくだろうから、焦らないことだよー」


 ナルカは、どさくさに紛れて、私の布団に潜り込むと、後ろから抱きついてきた。ナルカの膨らみかけの胸が私の背中に当たっている。私は、そんなナルカが愛おしくなって、彼女を正面から抱き直すと、彼女のおでこに軽くキスをして優しく頭を撫でてあげた。


 ある日、ナルカと素材集めをしていた帰り道でとある女性に話しかけられた。


「あの、お二人はこの森で暮らしているのですか?」


「そうです。あなたは?」


「私はマチといいます。気がついたら、この森にいたんです。そしたら、お二人を見かけたので、追いかけてきました」


「……すいません。とりあえずこれを着てもらえますか? 目のやり場に困ってしまいます」


 話しかけてきた女性が何も衣服を身に纏っていなかったので、私は思わず顔を背けてしまった。私は、カバンから上着を取り出して、彼女に手渡した。


「あら、ごめんなさいね。私、いつも服は着ないようにしてるから。その方が気楽でいいの」


 マチと名乗った女性は私たちよりずっと大人びた身体つきをしている。胸もとても大きくて、大人の女性の裸体を見慣れていない私はドキドキしてしまった。


「これで大丈夫かしら?」


 マチさんは私が手渡した上着を身体に羽織った。彼女には少しサイズが小さかったらしく、大きな胸が隠しきれていない。マチさんはまだ恥ずかしそうにしている私に気づくと、長い黒髪を身体の前に垂らして大きな胸を隠してくれた。


「ええ、なんとか。さっきの話だと、マチさんは、この世界の住人ではないのですか?」


「そうなの。さっきも話したけど、気づいたらこの森にいたの。それで、困っていたところにちょうどあなたたちを見かけたから、声をかけたってわけ」


「そうだったのですね。私たちも気がついたらこの森にいたんです。私はアリサ。彼女はナルカです」


「ナルカです。よろしくです」


「あらー、お二人ともいい名前ですねえ。アリサさん。ナルカさん。よろしければ、私もしばらくお二人と一緒にいさせてもらってもよろしいかしら?」


「もちろんだよー。いいよね、アリサ?」


「マチさんがいてくれると、私たちも心強いです。二人だけでは出来ないこともたくさんありますから」


「あ、ちなみに私、もう死んじゃってるの。信じられないかもしれないけど、今の私は幽霊なのよ。でも、何故かこの森に来たら、身体を実体化出来るようになってね」


 マチさんの身体が急に消える。マチさんがいた場所に手を伸ばしても、身体に触れることが出来ない。


「すごいでしょう? 私も驚いたんだけど、この世界だと、私は身体を出したり消したり自由に出来るの」


 何もない場所からマチさんの声が聞こえる。どうやらマチさんが幽霊だというのは本当らしい。

 

 でも、ナルカも狼人間だから、マチさんが幽霊だとしても、私は全然平気だった。


「なるほど、それで服を着ないでいるのが普通だったんですね」


「あらー、もう少し驚くかと思ったんだけど。そうでもないのねえ」


「実は、ここにいるナルカも狼人間なんです。彼女は狼の姿に自由になれます」


「へええ、それはすごいわねえ。よろしくね、ナルカちゃん」


「こちらこそです。マチさん」


 こうして、マチさんも私たちと一緒に暮らすことになった。彼女は生前は専業主婦だったらしく、家事が得意で私たちにお手製の料理を振る舞ってくれた。料理が苦手な私たちにとってはとてもありがたかった。

 でも、マチさんは幽霊だから、別に食事を取らなくても平気らしい。けれど、私たちに気を遣ってくれているのか、食事の時は必ず実体化して私たちと一緒に食事を食べてくれた。

 そして、私たちが拝借して無理やり着ていたアイシャの服を、私たちに合うサイズに仕立て直してくれた。


 マチさんは実体を消している時に空を飛んで、空中から周囲の様子を見ることが出来る。彼女が空を飛んで上空から森の周辺を確認してくれたことで、森の外に集落があることがわかった。おかげで、森の大体の大きさがイメージ出来るようになって、私たちは森から出る方法を検討することが出来るようになった。


 倉庫に無かった錬金用の素材も大分集まってきた。そろそろポーションの調合から、もう一段階上の、アイテムへの効果付与、エンチャントに挑戦してみようと思う。


 それが出来たら三人でこの森を抜けて集落へ行こうと思っている。集落にいけば、きっと今まで手に入らなかったアイテムも手に入るはず。美味しい食べ物もね。


 だいぶ肌寒くなってきた。まもなくこの森にも冬がやってくるのだろう。その前に、冬支度を終わらせないといけない。

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