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教主マリウスが強すぎた

「そうか。アリサたちは私がこの森を出て行った後に、この小屋にやってきたんだね」


 ようやく身体が回復してきたアイシャさんに、私はこれまでの出来事を報告した。


「私よりもずっと錬金術の才能があるあなたがこの小屋に来て、私の仕事を引き継いでくれた。ここを残しておいて本当によかったよ」


「勝手に住み着いてしまって、本当にすいませんでした。最初は長居するつもりはなかったんですが――」


 私はアイシャさんに謝罪した。成り行きとはいえ、勝手に住み着いて中の道具や錬金用の素材まで無断で使ってしまったからだ。


「気にしなくていいよ。元々ここは、私がアンナに魔法を教えるために作ったんだ。あの子が魔法使いとして独り立ちしたから、そのうち畳もうと思っていたんだけど、あなたたちに使ってもらえて本当にうれしいよ」


 確か、アイシャさんは魔法も得意だってレイさんが前に言っていた。あの強いアンナさんに魔法を教えていたってことは、アイシャさんは魔法使いとしても一流なんだろう。


「こんなに立派なお家を畳むなんてもったいないです。ここにあった道具や素材も、よく手入れされていて、整理されていました。だから、私はなんとか錬金術師としてやってこれたんです」


「気に入ってくれたのならうれしいよ。これからもここはアリサたちが自由に使っていいからね」


「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」


「それはそれとして、アリサは私の小屋にある本を読んで錬金術を覚えたのかい?」


「ええ。書庫にとてもわかりやすい入門書があったので、初めはそれを読みながらここにある素材でポーションなどを作っていました。そこから素材集めなどをして、徐々にいろいろなアイテムを作れるようになった感じです。最近は錬金術協会にも所属したので、協会からの仕事も請け負っています」


「なるほど。独学で高等魔術言語まで扱えるようになるとは、本当にすごいことだよ。私なんかよりもずっと錬金術の才能があるね」

 

 アイシャさんが言うには、高等魔術言語で術式を組むには一定のルールがあるらしく、正しい手順で術式を組まないと、そもそも効果が発動しないという。私は術式に一定のルールが存在することは本を読んで知っていた。だから、そのルールに従って、どうすればその効果が発動するのかを頭の中で考えながら、実際に術式を組み立てていっただけだ。

 

「高等魔術言語は術式次第で強力な効果をアイテムに付与出来るけど、その術式を組み込むのが結構シビアでね。私は術式を何年も研究して、ようやく効果を発動できるようになったのに、ほんの短い期間であそこまで術式を組み込んで自在に効果を発動できるようになったのは、本当に天才だとしかいいようがないよ。あと、ゴーレムのコアに自爆の術式を組み込んだのはとてもいいアイデアだった。普通は思いつかない、素晴らしい発想だよ。アリサはすでに錬金術師として、トップクラスの実力に達していると私は思う」


 アイシャさんが私を褒めてくれた。アイシャさんに錬金術師として認められたのはとても嬉しかった。私は、自分が特別だなんて思っていない。ただ私は、ナルカとマチさんと、ずっと一緒にいたいだけだった。二人と一緒に生活するために、そして二人を守るために必死だっただけだ。


「お久しぶりですアイシャさん。お身体はよくなりましたか?」


 レイさん一家がアイシャさんに会いに来た。


「久しぶりだね、レイ。ルカも元気そうで何よりだ。ふふ、リリも大きくなったね。ああ、アリサたちのおかげでなんとかこうして生きているよ」


「アイシャさん、突然いなくなってしまって、私たち、本当に心配だったんですよ。アリサさんたちから、ローア聖教会に捕まって、大変な目にあっていたと聞きました。それで、アンナちゃんたちが今、アイシャさんを捕らえていたローア聖教会の幹部たちと戦っているんですよね? 大丈夫でしょうか?」


 ルカさんが心配そうにアイシャさんに尋ねる。


「アンナは元々体内の魔力の量が普通の人間よりもかなり多かったし、今では私よりもずっと強いから、普通に戦えばまず負けないよ。あの子が本気を出せば、ローア聖教会の幹部たちには余裕で勝てるはずだ。アローラとクロードもいるからね。でも……」


 アイシャさんの表情が急に曇って、声のトーンが低くなる。

 

「教主のマリウスは別格だ。私は捕まる前にあいつと対峙したんだが、目が合った瞬間に絶望的な力の差を感じて、身体が震え出してしまった。それでも何とか身体を落ち着かせて立ち向かったんだが、まったく歯が立たなかった。それで、出来損ないの賢者の石も奪われてしまったんだ」


「それなら、私たちもアンナさんたちを支援しに行きましょう。アンナさんたちの現在の居場所なら、ダウジングで割り出せますし。アリサ、あなたが空間転移の魔法を使えば、アンナさんたちのところまで移動できるわよね?」


 マチさんがアンナさんたちを助けに行くことを提案してくれた。私からもアイシャさんにお願いすることにする。


「もちろん。私もマチさんと同じ気持ちです。教主のマリウスがいる限り、私たちは命を狙われます。それなら、彼を倒してしまうしかないです」


「確かにそのとおりだが……」


「私に考えがあります。成功するかどうかはわからないですけど、やってみる価値はあると思います。レイさんたちはこの森を守ってください。またローア聖教会の人たちがこの森に来るかもしれない。だから、森とこの小屋を、私たちの家を守ってください」


「……わかった。俺たちが責任をもってこの森と小屋は守る。アンナちゃんたちのことはお願いするよ」


 私は一つだけ残しておいた予備のゴーレムのコアを取り出して、ある術式を書き加えていった。アイシャさんの話では、マテウスは恐ろしく強い。でも、これが成功すれば――。


 準備が出来たので、私はダウジングでアンナさんたちの居場所を割り出した。彼女たちは今、ローア聖教会の本部である、エルビアン大聖堂の地下にいることがわかった。


 私は空間転移魔法でアイシャさんとマチさん、ナルカ、そして私自身を大聖堂の地下へと転送した。


 転送した先では、司祭の格好をした異形の存在が立っていた。その脇には結界の壁がまるで檻のように張られていて、その中にカタリナさんたちが捕らえられていた。


 アンナさんだけは、虚ろな表情で異形の存在の横に立っている。おそらく、彼女は魔法か特殊能力で、この異形の存在に操られている。


「マリウス。お前、アンナに何をした!」


「おやおや、誰かと思えば、アイシャさんじゃないですか。せっかくお仲間に助けてもらえたのに、また私の元へと戻ってくるとは。面白い人ですねえ」


「私の質問に答えろ! アンナに何をした!」


「ふふ、この娘は体内にかなりの魔力を宿していましたからね。腹の中に私の子供を産み付けて、育ててもらうことにしたのです。これだけの魔力があれば、魔力をどんどん吸収して、良い個体へと成長するでしょうからねえ。彼女たちには、私の大切な同志たちを殺されてしまいましたから、少なくても、彼らと同じ数は出産してもらいます。それまで彼女の子宮が持てば、ですけどねえ」


 アンナさんが服を捲り上げて、私たちにお腹を見せる。マリウスはいやらしい笑みを浮かべながら、アンナさんが出したお腹をさすっている。アンナさんのお腹は、まるで妊婦のように大きく膨らんでいた。そのお腹の中で、何者かがモソモソと蠢いているのが見える。


「キサマぁぁ! 私のアンナによくも――。絶対に許さんぞ!」


 激昂したアイシャさんがマリウスに殴りかかろうとする。


「迂闊よアイシャさん! 落ち着いて――」


 アイシャさんはマリウスに近づくが、何故か地面に伏せてしまう。彼女はそのまま動かなくなってしまう。


「なんだ? 急に身体が重くなって、動かせねえ――」


「アイシャさん、あなたの周辺の重力を操作して強化しました。通常の十倍程度ですが、これでもあなたは動くことができないようですねえ。普段のあなたの体重が五十キログラムだとしたら、今は五百キログラムですから、無理もないです」


「ぐぅぅ、こんなものがなんだ! 身体が動かなくても、魔法でその顔をぶっ飛ばしてやる!」


 アイシャさんの手のひらに光の渦が回転していく。光の渦が高速で回転する球になると、アイシャさんは指をマリウスの方に向ける。次の瞬間、光球は信じられないほどの速さでマリウスの顔面めがけて飛んでいき、彼の顔を弾き飛ばした。


「はは、そのムカつく顔を飛ばしてやった!」


「ふふ、さすが長い年月を生きたエルフだ。いい攻撃です。しかし……」


 弾け飛んだマテウスの首が余裕の表情で話を続ける。


「首だけでも、生きているだと……」


 アイシャさんは驚きの表情を隠せない。


「不死身なんですよ、私は。身体が一部でも残っていれば、何度でも再生できる。例えば、こんなこともできますよ」


 マリウスの首からみるみるうちに身体が再生していく。そして、マリウスの胴体からも、首が生えてきた。そして、アイシャたちの目の前には、二人のマリウスが出現した。


「さすがに二人になると、体内の魔力も半減してしまうので、一人に戻りますがねえ」


 二人のマリウスは笑いながら重なり合って一人の姿へと戻った。


「くっ、バケモノめ……」


「さて、アイシャさん。こう見えて、私も大切な同胞を殺されて、はらわたが煮えくり返っているのです。今結界の中に閉じ込めている奴らは、この後、異端者として公開処刑にする予定です。あなたの時よりもずっと惨たらしい方法でね。あなたは一度公開処刑をしてしまいましたから、私が今ここで殺して差し上げますよ」


 マリウスは背中から無数の触手を繰り出すと、アイシャの身体を触手で締め付ける。触手がギリギリとアイシャの身体を締め上げていく。


「ぐうぅ……あああ……」


「私は、宗教を使ってあなたたち人間を正しい世界へと導いてあげるつもりでした。愚かな人間たちは自分の過ちを認めることが出来ず、自然を破壊して、この世界を滅亡の危機に陥れています。私は、そんな人々をこの罪から救済するためにローア聖教を創設し、各国に布教したのです。それなのに、お前の仲間たちは私の同胞を一方的に殺害し、私をここまでコケにしたんだ。楽には死なせん。このままゆっくりと締め上げて、じわじわと苦しめてから殺してやる」


「ぐうぅ……そんなものは……お前たちが都合よく……人間を支配するための……詭弁だろうが……」

 

 すでに十倍の重力に捉われているアイシャさんは、ジタバタともがいているが、マリウスの触手から逃れることができない。私は、ナルカとマチさんと一緒にアイシャさんを助けることにした。


「ナルカ、あいつの気を引きつけたいの。狼になって私と一緒に攻撃して。その間にマチさんは、姿を消してアイシャを助け出してください」


「まかせて」


「わかったわ」


 ナルカが狼に変身してマリウスに咆哮をあげる。


「ほう、白い狼に変身できる人狼とは珍しい。あなたは処刑せずに、私のコレクションに加えてあげましょう」


「ナルカは私の大切な仲間よ。お前なんかに渡すものか!」


 私とナルカはわざとマリウスに接近して彼の気を引きつける。マリウスはアイシャさんの時と同じように重力を操作して私たちを動けなくする。その間に姿を消してアイシャさんに近づいたマチさんが実体化して、アイシャさんに絡みついていた触手を風の魔法で作った空気の刃で切り裂いた。触手から解放されたアイシャさんに、マチさんが素早く回復魔法をかける。


「クロウリーと同じように自身の姿を消せるとは、あなたも珍しい能力をお持ちですねえ。ですが――」


 マリウスは何事もなかったかのように冷静さを保ちながら、アイシャさんたちの周囲に結界の壁を作りだして、二人を閉じ込めた。


「ふふ、実体を消しても、私の結界からは逃れられませんよ」


 私はマリウスがアイシャさんたちの方に気を取られているうちに、魔法で近くの壁を破壊して、改良したゴーレムのコアを起動した。粉々に砕け散った壁の破片から、ゴーレムが形作られた。


「ありがとうナルカ、マチさん。おかげで間に合ったよ」


「砕いた壁石からゴーレムを作り出すとは、面白いことを考えますね。だが、石で人形を作ったところで、私の優位は揺るぎませんよ!」


 マリウスは私たちの周囲にも結界の檻を出現させて、中へと閉じ込めた。


「これでアイシャさんの仲間は全員捕まえました。その結界は決して破ることができませんし、あなたたちの魔力を奪い続けるので、魔法も使えません。もちろん、特殊能力もです。私が本気を出すまでもありませんでした。これであなたたちは終わりです。私を暗殺しようとした重罪人として、相応しい最後を用意してあげます」


 マリウスは不敵な笑みを浮かべて笑っている。


「それはどうかしら? まだ私の作ったゴーレムが残っているわよ」


「見苦しい小娘ですね。石の人形が私に勝てるとでも?」


 私はマリウスの結界に閉じ込められる前に、ゴーレムのコアに書き込んだもう一つの術式を起動していた。


 その術式の効果で、人形の形をしていたゴーレムが人間の姿へと変形していく。そして、ゴーレムは一人の女性の姿へと変貌した。


「何が起きた? その姿、まさか……」


 その女性の姿を見た瞬間、それまで余裕の表情をしていたマリウスが明らかに動揺し始めた。


「なんとか成功したようね。そう、私はゴーレムのコアに降霊術を組み込んておいたの。私が呼び寄せたのは……」


「間違いない、こいつはイバラ姫、ローゼズだ……。バカな。賢者の石も無しに、そんなふざけたことが出来るものか! しかも、生前の姿まで再現されているだと? これは……これは、明らかに人間に許された行為を超えているぞ!」


 私がゴーレムのコアに追加記述して発動させた術式は、かつてイバラ姫と呼ばれこの世界を救ったという、英雄ローゼズの魂をゴーレムに呼び寄せた。そして、ゴーレムをかたどっている石の破片を、彼女の生前の姿へと変形させた。現世へと降臨したローゼズは石の身体であるにもかかわらず、まるで本物の人間のように精巧な体つきをしている。


「そうよ。かつて、この世界を異形の者たちから救ったと言われる英雄、ローゼズよ。あなたたちの天敵でしょう?」


「よりによってローゼズを転生させるとは……。小娘が、ふざけたことをしおって! だが、所詮身体は石人形。私が粉々に破壊してやるわ!」


 マリウスは、明らかに動揺しているようで、先ほどまでの余裕が感じられなくなっていた。


「ふん。まずは限界まで重力を強化してやる。通常の百倍といったところか。その石の身体では動くことはできまい。石人形め、私の前にひざまづくがいい!」


 マリウスが重力を限界まで強化したことで、ローゼズの真下の地面が重さに耐えきれずに落下していく。しかし、彼女は何事なかったかのように空中に浮かんでいる。


「空中に浮かんでいるだと? バカな、百倍の重力だぞ! くっ、これならどうだ!」


 狼狽始めたマリウスは、ローゼズの頭上に巨大な火球を召喚した。


「バトラ聖典にも記述がある、神が龍族を滅ぼした際に使用したといわれる裁きの火球だ。灼熱の業火に焼かれて灰になるがいい!」


 マリウスはローゼズに向けて、巨大な火球を落とした。灼熱の炎が彼女の身体を包み込む。


「はぁ、はぁ。まさか、神話の時代の禁術まで使わされるとは――。だが、これでひとたまりもあるまい。この世界に、私より上位の者など、存在してはいけない。いけないのだよ!」


 しかし、ローゼズの再生能力はマリウスの想像を遥かに超えていたようだ。燃え尽きた灰が集まり、人の形へと変化していく。そして、先ほどよりもさらに精巧に再現された姿で、彼女の身体は再生された。


「ローゼズは賢者の石によって人間の限界を超えた最初の人間だと聞いていたが、これほどまでとは――。クソッ! こんなことが、こんなことがあってたまるか! 私は、この世界の支配者になるんだ! 人間如きが、私の計画を、私の計画を邪魔していいはずが無いのだー!」


 マリウスが全身から禍々しいオーラを放出しながら、ローゼズに突っ込んでいく。ローゼズは体当たりをしてきたマリウスを上空に飛んで華麗にかわすと、そのままマリウスの後頭部を足で蹴り飛ばしてマリウスを跪かせた。


「何故だ? 何故私が人間如きに跪かされるのだ? こんなことがあってたまるか! 私は、私はこの世界を手に入れるために長い年月をかけて、準備してきたのだぞ! それを、こんなに簡単に壊されてたまるか!」


 マリウスはすぐに立ちあがろうとするが、ローゼズの攻撃でかなりのダメージを受けたのか、なかなか立ち上がることができずに必死に足掻いている。


 ローゼズは跪いたマリウスの前に立ち、右手を頭上にかざした。彼女の手に、大型の聖剣らしきものが現れる。


「魔の者よ。これよりこの聖剣クレイバスでお前を浄化する」


 ローゼズが光輝く聖剣を振り下ろす。同時にマリウスの全身を光が包み込む。


「なんだこの光は。私の身体が消えている? やめろ、これでは私が――」


 溢れ出す光の中で、マリウスの身体が消滅した。


「浄化されても身体が残らなかったか。転生はできなかったようだな」


 マリウスの身体が消滅したことを確認したローゼズは、アンナさんの元へと駆け寄る。


「なるほど、腹の中に魔の者の子を産み付けられたのか。それでは――」


 ローゼズは自身の右手に異形のモノを出現させた。おそらく、アンナさんの子宮から空間転移の魔法と同じ要領で異形のモノだけを移動させたのだと思う。彼女はそのまま異形のモノを聖剣の光で消滅させた。


「これでいい。念のため、彼女自身も浄化しておくか」


 ローゼズはアンナさんの身体にも聖剣の光を当てると、私の方へと近づいてきた。マリウスが消滅したことで、彼が私たちを閉じ込めるために作り出した結界も消滅していた。


「さて、私を現世に呼び寄せたのは、あなたですね?」


 ローゼズが私に話しかけてきた。


「勝手に呼び出してしまって、申し訳ありませんでした。あなた以外に、あのマリウスに勝てる人物が、どうしても思い浮かばなかったんです」


「いえ、おかげさまで久しぶりの現世を楽しませていただきました。ですが、この身体はまもなく限界のようです。私を召喚したのが、あなたで本当によかった。時間がありません。最後に私の記憶の一部をあなたに差し上げましょう。賢者の石の錬成方法です。私を現世に召喚できたあなたなら、きっと錬成することができるはずです」


 ローゼズは私の頭に手をかざした。私の頭の中に、賢者の石を錬成する錬金術師のビジョンが浮かんできた。


「ありがとうございます。あなたの記憶が、私の頭の中に入ってきました」


「間に合ってよかった。では、私は黄泉の世界へと戻ります。実際に賢者の石を錬成するかどうかは、あなたに任せます。賢者の石がもたらすのは、栄光だけではありません。それだけは覚えておいてください。それでは――」


 そこまで話すと、ローゼズの身体は崩れていき、元の灰へと戻っていった。

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