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錬金術をやってみた

 この小屋に来てから何もすることが無かった私は、地下室の錬金道具と本を使って、錬金術を行ってみることにした。

 とりあえず、地下の書庫にあった本の中から、錬金術の初歩的なやり方が書いてあると思われる本を見つけ出して読んでみる。

 本によると、初めは、ポーションのように簡単に調合できるものから作っていくといいらしい。

 幸い、調合に必要な素材は地下の倉庫に全て置いてあった。この小屋の住人の貴重面な性格のおかげで、私は、きちんと整頓されている倉庫の棚から、すぐに目的の素材を見つけ出すことが出来た。各棚には、丁寧に素材の名前が書いたメモ書きが貼られていた。

 そして、ポーションの作成に不可欠な水は、この小屋の外にある井戸から汲んでくることができた。井戸の水はとても綺麗で、濁りなども無かった。


 私は水を汲むために、大きめの瓶を持って井戸の前に行った。井戸には水を汲み上げるための大きな手押しポンプのレバーが付いている。だが、いくらレバーを押し込んでも水が出てこない。壊れているのかと思って落胆したが、ポンプのすぐ近くに小さなロープが付いてるのを見つけた。どうやらロープは井戸の底まで続いているようだった。私はそのロープをゆっくりと引き上げると、小さな木のバケツが上に上がってきた。そのままバケツを上に引き上げる。少しだが、バケツには水が入っていた。私はその水を瓶へと注いだ。後で知ったのだが、井戸用の手押しポンプは、呼水といって、中に少しだけ水を入れないと動作しない。この小さなバケツは、その水を取るために置いてあったのだ。でも、この時の私はそんなことは知らなかったので、しばらくはこの小さなバケツを使って、時間をかけて水を汲んでいた。


 次に倉庫で素材を探した。本によると、ポーションは効能に応じて、調合する薬草などを選択する必要がある。私はまず、身体を回復させるポーションを作ることにした。本に書かれている素材を倉庫の棚から一つずつ見つけ出していく。素材は綺麗に瓶に小分けして置かれている。私は、必要な薬草の入った瓶を拾い出していく。瓶一つ一つにも名前の書かれたメモが貼ってあったので、すぐに必要な素材を集めることが出来た。私も、こういうところは見習おうと思う。


 作業部屋へと移動した私は、本を確認しながら、調合に必要な道具を探した。こちらもきちんと整頓整頓されていて、どこに何があるのかがすぐにわかった。


 私は乳鉢とフラスコを準備すると、まず、乳鉢に薬草を入れて乳棒ですり潰した。乾燥していた薬草はすり潰すとすぐに粉末状になった。


 次に、釜戸に薪をくべて、火をつける。火がついたら、ふいごという道具を使って、釜戸の中に風を送る。こうすることで、薪についた火の勢いが増すのだ。

 

 釜戸の中の薪が十分に燃えたので、私は、ガラスで出来たフラスコの中に粉末にした薬草と水を入れて、ゆっくりと混ぜ合わせた。充分に混ざったら、釜戸の火に近づけて慎重に熱していく。フラスコの中の液体から蒸気が出てきたら、すぐに火から離して、そのまま冷ます。本には、沸騰させてしまうと成分が飛んでしまうので、必ず沸騰する寸前に火から遠ざけなくてはならないと書いてある。


 こうして、私は初めてポーションを調合した。

 私の精製したポーションは、透明できれいな赤色の液体だ。少し味見をしてみると、苦味と甘味が混ざり合った、複雑な味がした。しかし、癖になる。喉の渇いていた私は一気に飲み干してしまった。

 

 その後、何本かポーションを精製した私は、食料を求めて、森の中を探索することにした。水は井戸があるからなんとかなっているが、ろくに食物が食べられないのがつらい。ポーションでは、空腹を満たすことが出来なかった。あまりにもお腹が空いたため、地下の倉庫にあった保存食のようなものを少しずつ食べていたが、それももう限界だった。


 私は意を決して森に狩りに行くことにした。定期的にポーションを飲んでいれば、とりあえず死ぬことはないだろう。しかし、絶えず襲ってくる空腹感に、私はもう、耐えられなくなっていた。

 小屋の中には、武器になりそうなものがいくつか置いてある。その中から、私でも使えそうなナイフと、スリングショットを選んで持っていくことにした。


 それまでナイフなど使ったことがなかった私は、その取り扱いに慣れるまでに苦労した。しかし、スリングショットはとても使い勝手がよかった。地面に落ちている石を拾ってスリングショットでぶつけるだけで、弱い魔物ならなんとか倒すことが出来るようになった。後からわかったのだが、ポーションを飲んだことで、私の体内では少しずつ魔力が生成されるようになっていた。そして、スリングショットを使うことで、魔法をまったく知らない私でも、その魔力を攻撃に利用することが出来た。獲物を狙う時に、無意識のうちに石に魔力を込める技術を習得していたらしい。この技術は、後で正式に魔法を習得する時に役に立った。

 

 しかし、アイシャの日記帳によると、魔物の肉には魔素という毒が蓄積していて、これを食べるには無毒化するための加工が必要らしく、その方法がわからない場合はむやみに食べない方がいいらしい。

 相変わらずお腹は空いていたが、魔物の肉は、少しずつこの世界の食物を食べて、耐性がついてから食すことにした。

 

 こうして私がポーションを精製するのに慣れてきた頃、傷ついた一匹の狼が小屋にやってきた。

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― 新着の感想 ―
Xから来ました。 ゆっくりした展開でスローライフを感じられて良かったです!
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