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皇太子妃の身代わりとして隣国へ引き渡され移住先で聖女をしていたら、元婚約者が追いかけてきた  作者: 綾井このか
1章

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22/22

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したから推しCPを堪能しようと思ったのに、ヒロインが全く恋愛フラグ立ててくれないんですけど!?③



 持ち前のポジティブで開き直った私は、今度はララちゃんとギルバートをくっつけるべく、行動を切り替えた。


 「ララ様、ギルバート様はあの容姿で家柄もよく、剣の技術も素晴らしく、あの若さで第一騎士団の副団長ですから、令嬢たちの憧れの的なのですよ」

「ギルバート副団長様は、結婚したい男ナンバーワンですのよ」


 まずはとにかく、ララちゃんにギルバートを売り込んだ。

 だってララちゃんは、ギルバートの顔も名前も認識してなかったので、まずは存在を認識してもらうことが必要だった。

 ゲームでは、ある程度面識もあって、顔を合わせれば会話をする仲だったはずなのだが……。


 アランの時とは違い、今度は望みがあった。

 とはいっても私の作戦に手応えがあったわけではなく、私がどんなにギルバートを売り込んでも、ララちゃんは「そうなのですか、ヴィクトリア様は何でも知ってらっしゃいますね」なんて私ににこりと笑ってくれて大変可愛らしい……!

 が、ギルバートの話題そのものには全く興味を示してくれない。


 ところが、ギルバートの方はララちゃんに気があるようなのだ。


 私の情報網で仕入れた情報によると、ギルバートは聖女の地方遠征の護衛に、わざわざ毎回立候補していると言うのだ。

 本来は仕事の多い役職つきの騎士が、聖女の遠征の護衛につくなんてめったにないことなのに、彼は毎回膨大な量の仕事を鬼のような残業で片付けては、護衛に参加しているらしい。


 これは間違いない。

 ララちゃんの側にいたいからだ。


 17歳で成人を迎えたララちゃんは、聖女になるための修行が終わったので護衛をつければ自由に神殿の外に出掛けられるようになったが、あらゆる欲望が薄い彼女はめったに神殿から出ない。

 唯一彼女が神殿から出るのは、地方遠征の時。

 だからギルバートはララちゃんに会うために、多少の無理をしてでも地方遠征に参加しているのだろう。


 これはいける。

 そう確信した私はまたしても、地方遠征でララちゃんに街の散策を提案した。

 もちろん、ギルバートにエスコートを頼むように助言して。


 街の散策に出た二人は、隠れ家的なおしゃれなカフェを見つける。

 そこで時間を忘れるほどお互いの話をして、店を出る頃には辺りが真っ暗に。

 周りがくらいせいか、ララちゃんが段差に足を取られて転びそうになるところを、ギルバートが気耐え抜かれた肉体で軽々と支え、二人はあまりの近さにドキドキして……。

 これでギルバートとのルートが確立するのだ。

 今回はすでにギルバートがララちゃんに気がありそう。

 間違いなく成功するだろう。


 ところが、何故かギルバートは私を散策に誘い来た。


「ヴィクトリア様、よければこの街を散策しませんか?」


 心なしか赤い顔で私を誘うギルバートに、私は思わず首をかしげた。


 何で……?

 何が起きてるの……?


 意味がわからなかった。

 ギルバートは私が焚き付けたララちゃんに誘われたはずなのだが。


「え、と……。ララちゃ、いえ、ララ様は?」

「は……? 聖女様でございますか? 聖女様ならお一人で散策に出られました。もちろん、護衛を二人つけておりますが」

「え、そんなはずは……」


 どうしてなのララちゃん!?

 確かに少し気が乗らなそうな顔してたけど、アランの時と程嫌そうじゃなかったじゃない!


「聖女様から、ヴィクトリア様がお祈りでお疲れのようだと聞き、気分転換に散策でも……と思ったのですが……」


 くそ、失敗した!

 ララちゃんに『疲れているから私は遠慮しますわ』なんて言うんじゃなかった!

 優しいララちゃんが素直に私を放っておかないかもしれないと、少し考えれば予想できたのに……!!


 私は作戦がうまくいかなかったことに落胆したが、ギルバートはララちゃんに気がありそうだし、また機会はあるだろうと考えた。

 しかし私の考えは甘かった。


 ララちゃんの気遣いを無駄にできないのでしかたなくギルバートと街に出たが、ギルバートと二人でいて気付いてしまった……。

 ギルバートはララちゃんではなく、私を好きなようだ……。

 いつも仏頂面の彼が、やけに私に優しい、私にだけ微笑む、そしてたまに照れたように顔を赤くする。

 さすがの私もわかってしまった。


 そうか、ギルバートが遠征に毎回同行するのは、そう言うことだったのね……。


 でも私は諦めない!


 私は婚約している身なので、ギルバートとの仲が進展する訳がないのだ。

 ララちゃんに恋愛フラグを立たせよう作戦は失敗続きだが、ありがたいことにヴィクトリアいい人作戦は成功している。

 実はそのお陰で、セドリック王子との仲が良好なのだ。

 それどころか、完全に恋人のような雰囲気になっている。

 自分で言っていて恥ずかしいが……。


 なのでセドリック王子がララちゃんに恋愛感情を持つ心配はなくなったので、私が囚人になる心配もなくなった。

 ひとまずはこれで安心だ。


 あとはララちゃんの幸せだけなのだ。

 私はなんとしても、ギルバートの気持ちをララちゃんに向けさせてやろうと誓った。




 自分の中でそんな誓いを立てたはいいが、それ以来結婚式の準備や宮殿への転居に忙しく、ろくにララちゃんと会うことすら叶わなくなってしまった。

 結婚式と新婚旅行が終わったら、ララちゃんとギルバートをくっつけよう作戦を本格的に開始する予定だった。


 そう、予定だった……。


 新婚旅行中の私の元に、とんでもない報告が飛び込んできた。

 それは、ララちゃんとダニエル王子の婚約である。

 セドリック王子は弟の幸せが嬉しいのか、浮かれたように弟への祝いの品を選びに行ったが、私は崩れ落ちた。


 ララちゃんはようやく恋愛フラグを立ててくれた。

 でもその先には破滅しかない、最悪なルートを選んでしまった。

 どうしてよりによって、ダニエル王子を選んでしまったのか。


 こうしてはいられないと、私は宿を飛び出した。

 慌てて私を追いかける侍女と護衛騎士にすぐに王都へ戻る準備をするよう指示し、とにかくララちゃんのもとへ戻らなくてはと、全力で走って馬車へ向かった。

 近道をしようと、大通りから路地に入ったその時、首に衝撃が走ったことまでは覚えているけれど、そこで意識が途切れてしまった。




 そして気がついたら、エトルリアへ向かう船の上だった、と言うわけだ。


「手荒な真似をして悪かった。俺たちはどうしても聖女が必要でな。グランジアは大聖女聖女、どっちもいるだろ。それに密偵に探らせたところ、グランジアは聖女を持て余してると見た」


 と、言うのが隣国エトルリアの主張だった。

 何でも、エトルリアの今代の聖女は体調を崩してしまったが、次期聖女はまだ幼く仕事を手伝わせることができない。

 そんな時にグランジアへ送っている密偵から、グランジアでは今代の聖女が現役なのに大聖女が誕生したと情報が入った。

 それならば、大聖女を人質に取り、聖女をこちらに貰おうと言うことになったらしい。

 エトルリアの主張を説明しに来たこの男は、エトルリアの総統レナード・ラドフォートと名乗った。


 私は男の話を聞いて、意外にも悪くない、と思っていた。


 あのままグランジアにいては、ララちゃんを待つのはダニエル王子ルートのバッドエンド、もしくはメリバ。

 いずれにしろララちゃんは幸せにはなれない。

 それならばいっそ、ダニエル王子からララちゃんを引き離すのはいいかもしれない。

 エトルリアの存在はゲームにはない設定だから、ララちゃんがエトルリアでどんな人生を送ることになるのか、私はわからない。

 ララちゃんが幸せになるのかもわからない。


 それでも、グランジアにいるよりは幸せになれる可能性が高い。


 そうだ、ララちゃんを一人でエトルリアにやるなんて事はないだろう。

 護衛を一人二人つけて送り出すに違いない。

 その護衛に選ばれるのは、地方遠征に毎回参加していたギルバートになるに違いない。

 そうだ、絶対そうなる!

 二人は見知らぬ土地で身を寄せ合って暮らし、やがて愛を育んでいく……。

 そんなハッピーエンドが待っているに違いない。


 そうと決まれば、ララちゃんの安全とララちゃんが快適に暮らしていける環境を、この男に約束させなければ。

 私はエトルリアへ向かう船の上で、エトルリア総統にララちゃんへの極上の暮らしを約束させるべく、交渉に交渉を重ねた。


 大丈夫。

 大丈夫よ、ララちゃん。

 私が絶対に、ララちゃんを不幸にしたりはしないから……!


 ギルバートとのハッピーエンドをこの目で見ることが叶わないのは悔しいけれど、ララちゃんが幸せになってくれるなら、贅沢は言わない。


 そう思っていた私だが、引き渡しの時にララちゃんが建った一人でエトルリアに引き渡されることを知って、ショックのあまりろくにララちゃんと別れの挨拶もせずに、とぼとぼとグランジアへ向かう船へ歩いていくことになるとは……まだ知らなかった。


お読みいただきありがとうございます!

これにてヴィクトリア視点は終わります。

次話からは2章突入です。

ぜひお楽しみにお待ちください。

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