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96 魔術師学校入学

 いろいろあった爵位授与式の翌日午後、私とアレス君はホロル様の依頼で呪符の捜索をした。

 ホロル様、家令のコーシヒクさんと警備隊3人、王宮から派遣された国王直属の魔術も使える騎士が3人、そして何故か、正室と側室も同行している。

 アロー公爵は今日も王宮に行って留守だ。


 長男レイノルド16歳と次男トーラス14歳は、王立能力学園に行っていて、長女ビビア11歳は王立中級学校に行って留守だった。

 アロー公爵領から来ていた貴族たちも、昨夜は屋敷に泊ったけど昼前には領地に帰ったそうだ。


 ……まあ呪符のことなんて知られない方がいいよね。特に世間知らずの子供や敵対する貴族が知ったら、ペラペラ喋る危険性があるもんね。



 今日の呪符探しは主に私が行う。

 正妻の言動や態度がクソババアに似ているので、アレス君が優秀だと分かれば殺そうとするかもしれないから、用心する必要がある。

 前に私とホッパーさんが呪符を発見した時は、正室と側室と子供たちは、其々実家や親族の屋敷に避難していたから、呪符を見たことがない。 


「別館はあれだけで、本館は外側には何も仕掛けられてはいないようです。室内も調べますかホロル様?」


「客室と家族の部屋は確認して欲しい。その後、家族は誰も健康を害していないが、ケガや爆発の呪術を仕掛けられていたら目も当てられないからな」


 ホロル様は私にそう言って、王宮から派遣されている騎士団の3人に、王宮で健康を害したりケガをしたりする者は居ないかと確認する。

 犯人は逃走中だから、王宮に忍び込んでいる可能性があると、昨夜アロー公爵が王様に進言したらしい。


 廊下を歩いていると、ある部屋の扉に呪符が仕掛けられていた。

 その部屋はコーシヒクさんが半年前まで使っていたそうで、今は別の部屋に移動していて難を逃れていた。

 私は魔法で呪符を露わにし、現れた呪詛の内容を読み上げていく。


「この扉を500回通った者は、高熱・麻痺・失明するだって」


「・・・・・」


 私の説明を聞いた皆さんは、何も言葉を発することなく無言だった。

 勿論、恐怖のあまりなんだけど、側室さんは今にも倒れそうだけど大丈夫?


 ここは1階だけど、コーシヒクさんの今の部屋は2階にある。今回は2階で呪符は発見されなかった。

 でも3階のアロー公爵様の予備室の扉に、コーシヒクさんと同じ呪符があった。

 そして長男レイノルドの部屋の右隣の室内の壁には、強烈な呪符が貼ってあった。


「これは・・・魔力・知能・生命力を奪い、凶暴性を高めるですね」


「な、何ですって、ヒバド叔父上がレイノルドを、そ、そんなバカな!」


 正室さんが、急にヒステリックに取り乱して叫んだ。


 ……ん? 今の言葉って含みがあるよね? コーシヒクさんも警備隊長も一瞬眉を寄せたもん。


 ……そう言えばアロー公爵の弟であるバクルは、ヒバド伯爵家に婿養子に入ったんだった。正室グラシアはヒバド伯爵夫人の姉の子だったわ。


「レイノルドが自分で望んで一番広い部屋に移動したのは、先月ではないか。以前は私の予備室だった。狙われたのは私だ」


 ホロル様はじろりと正室を睨み、隣の部屋の壁だから影響は低いと言って、取り乱している正室を黙らせた。


 結局、今日発見された呪符は3枚で、どれもギリギリで難を逃れていた。

 さすがに当人の部屋に侵入することはできなかったようだけど、凄い執念を感じて心が重くなった。

 後で犯人の呪術師は、敵国ザルツ帝国の王族の可能性が高いと教えておこう。

 剝がした呪符は、アレス君が聖水で清めてから魔法を使って焼却した。 


 

 そう言えばアロー公爵は、大賢者である私を、魔術師学校卒業後に子爵に陞爵し、10歳になったら名誉伯爵に陞爵するという確約書を王宮に提出し受理されたらしい。

 王様は、私が王立能力学園に入学する時に、大賢者は王族と同等に扱われるものとし、何者も大賢者を害することは許されないと発表する予定だとか・・・


 ……私の本業はトレジャーハンターだから、アロー公爵家や国に縛られるのは嫌なんだけど大丈夫だろうか?




 あっという間に7月1日になり、今日は魔術師学校の入学式だ。

 入学者は18人で、クラスは2つしかない。

 中級学校を卒業している【上位クラス】が5人と、初級学校卒業又は学校に行っていない【一般クラス】の13人に分けられていた。

 下位・魔術師に合格している者が入るクラスは、残念ながらなかった。


 魔術師学校は、3歳で受ける職業選別で下位・魔術師または中位・魔術師を授かっていれば誰でも入学できるので、筆記試験も実技試験もない。

 私は下位・魔術師に合格しているので、学校は魔術師だと思っているだろう。

 平民の学費は無料だけど、寮費や食費等の生活費は個人負担だ。


 初級学校を途中までしか行っていないアレス君と、初級学校にすら行っていない私は、【一般クラス】に入れられてしまった。

 貧乏な下級貴族でも、普通は初級学校を卒業して10歳頃に入学するらしい。

 例外として、男爵家以上の家の子供は家庭教師を雇うこともあるので、初級学校を卒業していなくても【上位クラス】に入れるそうだ。


 う~ん、私もアレス君も、入学手続きをした時の身分は男爵や公爵家子息じゃなかったもんなぁ。

 いろいろ納得できない部分はあるけれど、威張り腐った貴族と同じクラスじゃない方が気分的には楽だから、文句を言ったりはしないよ。

 まあ今年の【上位クラス】は、王立能力学園の受験に失敗した13歳以上の者ばかりだから、お付き合いしたいとも思わない。



「来年には必ず下位・魔術師に合格して就職するか、王立能力学園を受験して中位・魔術師合格を目指すのもいいだろう。

 既に下位・魔術師合格した者も居るようだが、僅か1年で中位・魔術師合格できた者など居ない。中級学校に入学する道もあるので、よく考えて勉強しなさい。

 明日は、魔術がどれだけ使えるのか実技試験を行う」


 入学式でそう挨拶したナバロ校長58歳は、魔術師協会の所属らしい。

 因みに副校長は、ヒバド伯爵がいる王宮魔術師団の所属だ。


 ……どうやら私とアレス君の情報は、何処からも回ってきてないみたい。


 ……明日の実技試験は楽しみだけど、手を抜くかガツンといくか・・・迷うなぁ。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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