8 運命の出会い(3)
暫くゲートルの町に居ると決めた私は、ホッパーさんの望みである魔法を教えることについて了承した。
全てはお爺様が許可してくれたらの話しなんだけど、私はトレジャーハンターにも会ってみたいし、もっと魔法の練習もしたい。
ホッパーさんに聞いたんだけど、トレジャーハンターは7歳から見習いになれて、1年以上経験を積んだら助手になれるんだって。
でも、5年以上の経験者が同行しなければならないし、上部探索に限定される。
10歳になったら本登録可能で、新人トレジャーハンターになれる。
新人・鉄級・銅級・銀級・金級の順にランクが上がり、新人は上部探索のみ、鉄級は中部探索まで、銅級以上になると未採掘ゾーンに潜れる。
当然幼児の私では古代都市には潜れない。
でも、ホッパーさんはトレジャーハンター協会の会員で出資者だから、トレジャーハンターや【鑑定士】や【魔術師】を同行して古代遺跡に潜ることができるそうだ。
……すばらしい!
同行できる【魔術師】は、王都の魔術師試験で下位魔術師以上の合格者か、トレジャーハンター協会が行う魔術師試験に合格した者に限られている。
同行者の年齢規定はないそうで、協会の試験を受けて合格したら同行させてもらえる可能性もアリだって。やっほーい!
……まあ協会も、まさか幼児が試験を受けるなんて想定してないよね。年齢を明記してないなんて、ムフフ、ラッキー。
これまで同行を認められた最年少魔術師は、王都の魔術師試験の受験資格が得られる7歳で、公爵家のご子息だったらしい。
魔術師【下位】資格より、トレジャーハンター協会の試験の方が難易度が高いから、同行希望者は子供でも大人でも、王都の魔術師試験を受けるらしい。
……ホッパーさんは、サンタさんなら現在の実力でトレジャーハンター協会の試験に合格できますよと言ってたけど、目立ちたくない。
魔術師にもランクがあって、職業ランクが【専門職】だと【下位魔術師】って身分証に記載され、頑張っても【中位魔術師】になるのは困難らしい。
だから軍や警備隊に入隊するか、稼ぎたい者はトレジャーハンターになる。
例え【下位魔術師】でも魔術師の数は少ないから、銀級パーティーに誘われる可能性が高いとか。
そもそも魔術師は超エリートだから、好んでトレジャーハンターになる者は極少数で、中位魔術師に合格すれば王宮魔術師団に入団できるし、侯爵家や伯爵家のお抱え魔術師への道も開けている。
上位魔術師なんて、エイバル王国には10人も居ないらしい。
ゲートルの町に来て3日目、私はホッパーさんと警備隊に行って、捜索願いが出ているかどうかを確認した。
◎ 探し人の名前 サンタナリア 年齢3歳 貴族家使用人の娘
◎ 特徴、短い銀髪に紫の瞳。知能が低く、自分の名前が言えない
◎ 行方不明になった時の服装 白色のワンピース
◎ ほんの少し目を離している隙に居なくなった。1日中探したが見つからなかった。
◎ 依頼人 ファイト子爵家 発見できたら死体でも構わないので連絡して欲しい。
「ねえ、私って濃紺に金髪が混じる長い髪で、瞳は黒に近い濃紺よね?
服装だって花柄の薄汚れたワンピースだし、ずっと噴水の前で待ってた。
どうやら、このファイト子爵家の人は、私を探しているんじゃないみたい。
だって私、使用人の子じゃないし、自分の名前だって言えるから」
今日も先日と同じ親切な警備隊のおじさんが担当してくれて、ホッパーさんと顔を見合わせて困った表情になる。
「まあ、意図的に置き去りにされたのを目撃している者も居るし、こうも事実と違う内容では、真剣に探す気はないと思って間違いないな。
ナルム隊長、私がファイト子爵に直接連絡を取ろう。なので、この捜索願いは無視して構わないでしょう。
ホッパー商会の商会長である私が、責任を持ってこの子を保護します」
「そうしてもらえると助かる。できるだけ貴族家のごたごたに巻き込まれたくないしな。
あの母親と娘は、当日この町に泊ったらしい。心配なら直ぐに届け出るのが当然だが、さして心配している様子もなかったぞ。
は~っ、嬢ちゃんも苦労するな」
親切なおじさんはナルム隊長という名前らしい。
溜息を吐きながら私の頭を優しく撫で、【迷子者保護申請書】に記入してくれとホッパーさんに言って、手続きを完了してくれた。ありがとう。
ところで昨日の強盗は? ああ、留置場ですか、そうですか。
手続きを終えた私とホッパーさんは、町の外に馬車で向かう。
なんでも、これから世話を頼まれた男の子5歳を迎えに行くそうだ。
それなら町の中で待っていた方が?って訊いたら、人目を避ける必要があるからだって。
……なんじゃそりゃ・・・
「これから迎えに行くアンタレスくん5歳は、某高位貴族の庶子でね、【職業選別】で中位職の【魔術師・中位】を授かってしまったんですよ。
まあ、何というか・・・」
「ああ、私と似た境遇で命に危険があり、居場所がない子ってことかな?」
馬車の中で事情を聞いた私は、直ぐにピントきた。
苦笑しながら差し出されたお菓子に手を伸ばし、素の自分で会話する。
「いやいや、サンタさんには敵いませんね。本当に3歳ですか?
将来有望な息子を保護して欲しいと頼まれたので、妻の実家の養子にして、ゲートルの町で暮らす予定なんですよ。
でもね、魔術教師を雇うのは簡単じゃないんです。高額な謝礼を積んで魔術師協会に頼んでも、優秀な家庭教師の派遣は期待できません」
ホッパーさんったら、本当にいい人なんだな。
だからこそ、どこぞの高位貴族から面倒ごとを頼まれちゃうんだ。私も含めてだけど。
「なるほど、私がホッパー商会でお世話になる条件って、その男の子に魔術を教えることなんだね。分かった」
……下宿代と食費分くらいは働かせていただきますとも。はい。
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