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79 王都からの呼び出し

 今現在、この国であの大きさの魔核に魔力充填できるのは、私とアレス君とアロー公爵しか居ない。


「アレス君ごめんね。危険なことに巻き込んじゃった。暫く私と一緒にガリア教会本部に行って保護してもらう?」


「サンタさんが行くのなら、僕は何処にでもついて行くよ。

 ハウエン協会長は、遠回しにサンタさんを戦争で利用すると言ってたし、魔術師協会の奴等なんか、次に会ったら何をしてくるか分からない。

 魔術具の教授なんて、親しくなったからって僕たちが魔力切れで死ぬ危険性なんて全く考えてないよね。皆、自分の利益しか考えてなかった」


「そうよね、捕えて牢にでも閉じ込めれば、便利に使えるただの子供だもんね私たちって。

 アロー公爵様が後見人でも、行方不明になったら成す術がないわ。

 私はまだ死にたくない。アレス君だってなんとか助かったのに、ごめんなさい」


 私たちの話を聞いて呆然としているお爺様は放置し、私とアレス君は自由に生きる方法を考える。

 一番いいのは、私たちが王立能力学園に入学して、魔術師が魔力充填できるよう鍛えることなんだけど、大人たちは待ってくれそうにない。

 空間属性だって、学園に入学したら教えるって約束してあるのに・・・


 結局お爺様は翌朝、私たちと一緒にゲートルの町に戻ることにした。

 王都の中流地区のホテルには、手紙や小荷物を届けてくれる有料サービスがあったので、母様と兄さまにはお土産と手紙を届けてもらう。

 帰りは貴族や商人が使う、小さな町は素通りする急行馬車を使った。



「確かに子爵くらいの爵位では、高位貴族であり権力者でもあるあの連中には逆らえないだろう。

 サンタやアレス君が脅かされることがないよう、わしも気を付ける。

 じゃが、もしも複製が可能なら、あの簡易空間魔術具を作ってみたい。

サンタが無理して勝ち取った権利じゃから、死ぬ気で研究すると誓おう」

 

 ゲートルの町に帰った翌日、お爺様はそう言い残してファイト子爵領に戻っていった。


 ……複製は無理そうだけど、私が王立能力学園の工学部に入学したら、少しは複製のヒントが見つかるかもしれない。でも格安で魔核充填なんかしないよ。



 直ぐガリア教会本部に逃げようと思ったけど、チーフが王都から帰ってこないと出発できないから、最速踏破者・アレス君・シリスと一緒にイオナロードに籠ることにした。

 冗談半分で、大扉の先に隠れていたら、誰もあの扉を開けられないから安全だよねってアレス君が言うから、ちょっと本気で思案しちゃった。


 もう第二期調査隊には協力しない方針だから、【聖なる地】には入れない。

 だから2.5キロ付近で側道を見付けて、魔法でセイフティールームを作ろう。

 側道の入り口を、私専用の荷物部屋にカモフラージュして登録してしまえば、誰も中に入ることはできない。


 なーんて緊急用の逃げ場のことを考えながら、地底生物をサクサクと倒す。

 光猫のシリスとアレス君と私が揃えば、怖いものなんてない。今のところ。

 帰り道、地底生物には見えない獣に苦戦・・・ほぼ殺されかけていた他領から来た金級パーティーに遭遇した。


「頼む、討伐を手伝ってくれ」


 リーダーらしき人物が、うちのリーダーに応援を頼んだ。

 7人パーティーの内3人は、既に戦力外で血塗れだし、下位・魔術師と思われる女性は魔力切れなのか目が虚ろで、魔核付き杖を握って土壁に凭れ掛かっている。

 初めて女性の魔術師に出会って、ちょっと親近感が芽生えた。


「どうするサンタさん?」


「う~ん、ここは私とアレス君が中位魔術で倒す方がいいかなリーダー。アレス君、頭を土魔法でお願い。私は先に目を潰すから」


 私は応援を了解し、皆に指示を出す。

 心得たとばかりに、シリスが4メートル級の巨大な猪みたいな生物の前に走り出て、威嚇したり左右に飛んで攪乱を始める。

 私は魔法だと気付かれたくないから、わざとらしい詠唱をしながら石礫で猪もどきの目を潰す。


「石よ砕けて鋭利な武器となれ! 風魔法の23式。あの生物の頭を貫け」


 猪もどきの目に攻撃が命中した直後、中位魔術をちょっとだけ改良した詠唱を唱えながら、アレス君は大人の拳大の石3つを頭に向け撃った。

 今回は私個人が助っ人したんじゃないから、倒した獲物の6割は最速踏破者の取り分となり、私とアレス君にも分け前がくる。



 この一週間で倒した地底生物の3割は、これ見よがしにリヤカーに積んであるけど、7割は新しく作った獲物用空間拡張リュックに収納してある。

 現在アレス君が背負っていて、私は王都から戻って直ぐにアレス君と一緒にこのリュックを作成していた。


 リュックを作る時にアレス君も一緒に魔力を流したら、アレス君も開閉可能になった。

 これは新しい発見で、アレス君並の魔力量があれば、私と共有することができるってことだ。

 私を本当に守ってくれるなら、格安でアロー公爵親子にも作ってあげよう。



 助けた金級パーティーのケガ人を予備のリヤカーに乗せ、ゲートル支部に戻る。

 途中ケガ人を病院に運び、魔力切れの女性魔術師は宿泊先の宿まで、うちのメンバーが背負ってあげた。

 助けたパーティーのリーダーとサブリーダーは、辛うじて歩く気力が残っていたので、私たちと一緒にゲートル支部で獲物の査定をしてもらう。



 支部の受付にはチーフが待っていて、私とアレス君は会議室へと連行された。

 チーフの表情は硬く、面倒ごとが語られるに違いないと推察し、話を聞く前から大きな溜息を吐いてしまう。


「すまないサンタさん、アレス君。魔力学会に協力してくれ」


「嫌です!」


「即決かよ、もう少し考えてもいいんじゃないか?」


「考えるだけ無駄。僅か5歳と7歳の幼児を、この国の偉い人たちは都合よく利用しようと企んでるんだから、話を聞く必要も、協力する義理もない」


「うぅっ」


 私がキッパリ断るとチーフは言葉に詰まり、【簡易空間魔術具売買契約書】と書かれた紙をテーブルの上に置いた。


「販売価格は白金貨10枚。うち白金貨2枚はトレジャーハンター協会本部への謝礼金だ。

 サンタさんに入る白金貨8枚の内1枚は、魔核充填2回分(金貨5枚×2)として契約締結している。

 購入者は国王様だ。断ることはできない」

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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