表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/144

70 魔術具検証とレンタル契約

 魔術具の所有者として相応しく、紫色が示す【空間】属性(魔力)について上から目線のドヤ顔で説明したら、何故か会議室内が再びシーンと静まり返った。


『えげつない、奴等の上をいきおったわ』と、サーク爺が呆れたように言う。


『ほんまにな。一気に知能を上げたんちゃうか?』ってトキニさんが呟く。


『まあ、これくらい言っておけば、簡単に利用できる幼児だとは思わないわね。

 これからはきっと、畏れられると思うわよ。可愛い幼女には戻れなくなったわねサンタさん』


 ……えっ? 私って可愛い幼女よ?


 パトリシアさんったら、そんな怖いこと言わないでって念話で言いながら皆を見回すと・・・確かに困惑したような、異質な者を見るような視線が私に向けられていた。

 一部、怒りの視線も交じっているけど、わざと生意気な発言をしたんだから仕方ない。ちょっと気まずい。


「あれ、私、なんか難しいことを言ったっけ?」


 場の雰囲気を変えるため、とりあえずチーフの方を向いて訊いてみる。


「いや、もう何も言うな。言えば言う程、皆が混乱する。

 18歳から25歳くらいに知能年齢を上げて付き合ってきたが、もう40歳くらいで・・・いや、いっそのこと賢者を名乗ってくれた方が腹が立たない。

 トレジャーハンターとしても、魔法使いとしても規格外過ぎる!

 は~っ、なんなんだよこの幼児は。 

 魔術具貸し出しの件は、希望として聞いておく。それでいいなリーダー?」

 

「えっ? は、はい大丈夫です」


 ……やっぱり腹が立ったんだ。でも、賢者って、勝手に名乗っていいの?


 ごめんねリーダー。なんか勝手に決めちゃって。

 リーダーは善人で権力に弱いから、この凄いメンバーに対抗したり反論したりできないと思う。だから相談せずに決めちゃった。



「魔術師協会はそれで構わない。それよりも【空間】について学びたいと思うのだが、その機会はあるだろうかサンタさん?」


 魔術師協会を一番目にしといたから、アロー公爵は魔術具レンタルの件を了承してくれたけど、【空間】属性の方に興味が移ったのか、ギラギラした視線を向け質問してきた。

 他の魔術師の皆さんも、憮然とした表情から再起動して、自分も学びたいと迫ってくる。


 ……私の生意気な態度を窘めるより、新しい知識欲の方が高いって、さすが研究者であり第一人者ってことなのかな?


『いや、お主の持っておる空間拡張バッグが欲しいだけじゃろう』


『せやな、あれは便利やし、もしも作れたら金も稼げるしな』


『サンタさん以外の者も作れたら、サンタさんの危険度が下がるわ。教えると言っておけば、自分が習うまでサンタさんの危険を排除してくれるかもね』


『そういう考え方もできるんだ。うん、分かった』



「私もまだまだ学びの途中だから、魔術師学校に入学し、中位・魔術師の資格を取って、王立能力学園に入学したら、教える時間が取れると思います」


「まだ3年も先じゃないか」って、王立能力学園のエバル教授が不満そうに言う。

 そして、王立能力学園の魔術師学部に入学するなら、特例で下位と中位の魔術師資格の受験を許可するから、直ぐにでも王立能力学園に入学して欲しいなんて、訳の分からないことを言ってきた。

 すると工学者のツクルデ教授まで、もう少し早く入学して欲しいなんて我が儘を言う。


「いやいや、私は学ぶために入学するのであって、教えるためじゃないから」


 この勢いに吞まれてはいけないので、ちゃんとお断りしておく。



 ハンター協会のハウエン協会長と、ナンバー2のボルロさんは、すっかり出遅れて「競売は?」とか「うちは最後なのか?」って、泣きそうな顔を私に向け文句を言ってくる。

 残念ながら魔術具は、私のレンタルプランで決定した雰囲気。ごめんね。


 この場に居る誰よりも、アロー公爵は爵位も立場も上だから、アロー公爵が了承したことに異議を唱えられる者は居ないだろう。

 居るとしたら、ガリア教会くらいだと思う。この魔術具は教会にとっても必要だと思われるから、有料で貸すのは問題ない。

 貧乏みたいだから、お値引きしてあげよう。


「あっ、王宮魔術師団には貸さなくていいのかな?」


「ああ、問題ない。必要だったら魔術師協会に来て属性を判別すればいい」


 魔術師協会トップでもあるアロー公爵が、問題ないと悪人顔をして言ってくれたから、私が責められることはないってことよね。ね?

 ヒバド伯爵とかラースクみたいな人とは、二度と関わりたくないもん私。



 どっと疲れた会議・・・いや属性判別魔術具検証だったけど、ちゃんとお金の話はしたし、無茶な要求にも流されなかった・・・と思う。

 王都の屋敷の代金を、予定通りトレジャーハンター協会本部から借りてたら、ハウエン協会長のゴリ押しに逆らえなかったかもしれない。


 ……ああ、怖い怖い。


「あっ、大事なことを言い忘れてました。

 魔術具をお貸しする契約ですが、前金として白金貨2枚出してくださった組織には、遺跡調査期間中であれば、魔力が増えたかどうか、属性が増えたかどうかを確認するため、魔術具の使用を許可します。


 白金貨3枚を全額前納してくださった組織には、特別大サービスで魔力循環の特別指導や、古代語指導、魔術師の皆さんには初級魔法指導も考えています。

 今回、魔力が発現しなかった人は、ぜひ調査期間中に魔力循環の訓練をして、魔力持ちになれるよう挑戦してみてください」


 今日一番のいい笑顔で、早くお金を頂戴ねってストレートじゃない言い回しで、特典まで付けて提案してみる。

 もしも誰も前払いしてくれなかったら、屋敷の不足金はホッパーさんに貸してもらおう。白金貨10枚までなら無利息で貸せると言ってくれてたから。


「サンタさん、工学者チームは魔術具のレンタルはしないが、お金を払うから魔力循環の訓練を受けることは可能だろうか?」


 パネルが光らなかった王立能力学園建築学のハーカル准教授が、真剣な表情で訊いてきた。


「ああ、それなら他のチームの者も魔術具で魔力の有無を検査して、希望者には指導をしてやればいい。特別講義だから、指導料は講座毎に金貨1枚でいいだろう」


 なんと、アロー公爵がナイスな提案をしてくれた。さすが後見人。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

ブックマーク、評価ポイント、リアクション応援ありがとうございます。とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ