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62 調査の行方(6) 

 他にも色々とできますが?と私が笑顔で訊くと、父が後見人に名乗りを上げた理由がよく分かったとホロル様は仰った。

 なんなら中位・魔術師の上レベルの魔術も使えますけどって言ったら、これ以上の衝撃は心臓に悪いからと断られた。


 ……なんで?


「では、アンタレスも魔法が使えるのですね?」


 すっごくキラキラした瞳で、ホロル様が質問してきた。


「はいホロル様。アンタレス君、いやアレス君は優秀な弟子なんです。

 私の魔法の師匠によると、アレス君は魔力量が多いから、高位・魔術師はもちろん、中級魔法使いに成れると言っています。

 私が7歳になったら、アレス君と一緒に魔術師学校に入学し、1年で中位・魔術師資格を取り、8歳になったら王立能力学園に一緒に入学する予定です」


 私はこれからの予定を、父親であるホロル様にしっかり教えておく。


「なんと、アンタレス様はサンタさんより2歳年上だから、9歳で中位・魔術師に合格されるということですか?

 それではアンタレス様は、10歳から王立中級学校に入学されるのですね。

 王立能力学園は、中級学校卒業後に入学する学園ですが・・・」


 アレス君の優秀さを知って嬉しそうなコーシヒクさんだけど、何故か中級学校の話を出してきた。はて?


「はい、アレス君は9歳で中位・魔術師資格を取ります。今でも合格できますが、私はアレス君を守らねばならないので、一緒に入学する必要があります」


 一緒に入学するってアレス君と約束してるから、そこは絶対譲れない。

 そのために、一生懸命勉強を頑張ってきたんだもん。


「通常、王立能力学園に入学するには、初級学校と中級学校を卒業し、難しい入学試験に合格しなければならないのです。

 サンタさんもアンタレス様も、既に中級学校の勉強をほぼ終えていると、家庭教師のシロクマッテ先生が仰っていましたが、中級学校をすっ飛ばす人なんて普通は居ません。

 サンタさんは、もう少し世間の常識を学ばれた方がよろしいかと」


「えっ? 中級学校に行かなきゃいけないのホッパーさん?

 でも、高位貴族家は家庭教師の子も多いって聞いたよ。 

 それにシロクマッテ先生が、試験に合格すれば大丈夫だって言ってたけど?」


 今更計画を変更するなんて面倒臭いし、中級学校で学ぶ時間が勿体ないよ。


「ハハハハハ、これは愉快だ。我が息子はそれほどに優秀であったか。

 これは寝ている場合ではないな。

 サンタさん。問題ない。中位・魔術師に合格していれば、入学試験は免除され絶対に王立能力学園に入学できる。

 中位・魔術師資格は、本来王立能力学園に入学してから取る資格なんだよ」


 ホロル様は愉快そうに笑って、出会った時より血色も良く元気になっている気がする。

 あっ、追加のイオナの葉を渡しておかなきゃ。

 私の常識知らずは5歳なんだから仕方ないと思うことにして、時間も無いから、今後のイオナの葉の飲み方と、呪術の話をしなきゃいけない。



 折角だからお茶とお菓子をいただいて、今後はイオナの葉を煎じるのではなく、葉1枚を普通の茶葉に混ぜて、1日2回飲むように家令のコーシヒクさんに伝えた。


「乾燥した葉の方が飲みやすいって、守護霊で薬草に詳しいパトリシアさんが言ってますが、魔術で乾燥ってできますか?」


「いや、魔術には植物を乾燥させる詠唱も魔法陣もないな」


 テーブルの上に置いた袋からイオナの葉を1枚手に取って、ホロル様は残念そうに仰った。


「それじゃあ、私が魔法で乾燥させます。パトリシアさんが、今の健康状態なら1週間ほどお茶に混ぜて飲めば、痺れもなくなると思うって言ってます」


 そう言って私は、イオナの葉の袋を手に持ち「乾燥」って魔法で命じて水分を取った。


「はあ?」ってホロル様は驚き、「ありがたいことです」ってコーシヒクさんは乾燥させた葉を見てご満悦だ。



「あと1件、私の師匠から大事な話を聞いています。

 この屋敷には、古代魔法の一種である【呪術】がかけられているそうです」


「なんだと!」と驚いたホロル様が、思わず車いすから立ち上がってしまった。


「なんですと! 呪術? あっ、旦那様、立てるようになられたのですね」


 呪術に首を傾げていたコーシヒクさんは、立ち上がった主の姿を見て、思わず涙を浮かべ右手を口に当てている。


 そこから私は、この場に居る3人に呪術について教えていく。

 この屋敷の壁の一部、特に2階の壁に呪符の魔法陣が、隠匿の魔法付きで貼られており、庭にも仕掛けられていると、サーク爺の話を聞きながら説明していった。


「2階の、2階のどの部屋ですかサンタさん」


 ホロル様は、車いすから身を乗り出すようにして質問する。


「この部屋のバルコニーから見た、右斜め下の部屋の窓の右横に貼られているそうです。だから呪術は、その窓の右隣の部屋に向けて仕掛けられているんじゃないかって師匠が」


「そこは、その部屋は次男トーラスの部屋じゃないか!」


 ホロル様は再び立ち上がり、今度はショックのあまりドスンと直ぐに座ってしまった。

 その表情は怒りで歪み、両手をギュッと握り締めて震わせている。 


「実はアレス君にもかけられています。この国には呪術師は居ないそうなので、ヒバド伯爵は他国から呪術師を招き入れているのではないかと、最強守護霊全員が言ってます」



 3人ともあまりにショックが大きかったみたいで、暫く無言で何かを考え、そして「許せません」とコーシヒクさんが呟いた。


「旦那様、トーラス様が健康を崩され始めた3年前に、ヒバド伯爵は新しい執事だという人物を伴って屋敷を訪れています。

 あの執事、エイバル王国語を話していましたが、時々発音がおかしかった記憶がございます。それと、我が国では珍しい銀髪に銀色の瞳でした」


 コーシヒクさんはそれらしい犯人に心当たりがあったようで、直ぐにその時の宿泊者記録を持ってくると言って部屋から出ていった。


「おそらく敵国、ザルツ帝国の者だろう。確か数日泊っていたな。クソ!

 サンタさん、その呪術は解呪することが可能でしょうか?」


 ホロル様は犯人をザルツ帝国の者だろうと言い、何でもするので、どうか息子の部屋の呪術を解いて欲しいと頭を下げられた。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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