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57 調査の行方(1)

 久し振りに魔力(能力)枯渇に近い状態まで力を使ったと、魔術師の皆さんは外に出る扉の前で楽しそうに語り合っている。

 扉の魔核に魔力を流すのはファーズさんで、今日は魔力を多く消費したせいか、前回の赤と違い濃いオレンジ色に染まり、充填するのに時間がかかっていた。

 なんとか魔力が足りたみたいで、私は皆を急かすように外に出し、閉まる寸前で外に出た。


「なんと、本当にピラミッド遺跡の途中じゃないか!」


 アロー公爵が驚いたように言うと、皆も景色を見て驚き、閉まった扉が遺跡と同化している様を見て再び驚いた。

 いや私、ちゃんとピラミッド遺跡の途中に出るって言ってたよね? ね!

 ぐるりと表側に回って、皆を安全な降り口に案内すると、他の調査団メンバーが階段下で待っていた。


「遅いですよ!」


 待ちくたびれた様子で、工学者チームのツクルデ教授が文句を言った。


「悪い悪い、それじゃあ早速、扉の中で見たことを報告しよう」


 アロー公爵が、不機嫌そうな他のチームに向かって詫びる。

 待っていたのは地質学者チームを除くメンバーで、地質学者チームは【聖なる地】の南側で地層の年代調査をしているらしい。


 アロー公爵から報告を聞いた皆さんは、自分たちも扉の中に入りたいと再びごね、なんとかならないのかと私に訊いてくる。


「魔力操作と魔力放出を覚えないと無理だと思うよ。

 ああそうだ、出口の空間には2枚の扉があるんだけど、お土産にスケッチして来たよ。下手だけど見る?」


 そう言いながらスケッチ帳を取り出すと、皆さん嬉しそうに奪い合いをしていた。

 喜んでもらえたようで良かった。そこ、喧嘩しない!


 夕食まで自由時間で、私は久し振りにイオナの木から葉をちょっとだけ頂いた。

 調査が終わっても、暫く【聖なる地】は一般公開されない可能性が高いと副団長のボルロさんに聞いたので、念のために採取しておく。

 光猫のシリスが木に登って取ってくれたので、他の人から見たら、私はシリスと遊んでいるように見えたと思う。


 ……イオナの葉の秘密は、調査団に知られてはならない。


 夕食後、明日からの予定を立てる会議で、私は自分が3枚目の扉の先で見た光景を皆に教えた。

 その時に、これは自分の推測だけどと前置きをして、魔核の大きさが5センチまでなら中位・魔術師でも魔力充填できて、8センチまでなら高位・魔術師が頑張れば充填できるんじゃないかと話した。


「では、最初の扉の魔核の正式な大きさは12センチだから、サンタさん以外、開くことができないと?」


「いいえエバル教授、私と同じ中級か上級魔法使いレベルの魔力量になったら、充填できると思います。

 だから、扉の先に進みたければ、各扉に埋め込まれている5センチ・8センチ、12センチの魔核を用意して、充填する練習をする必要があると思います。


 どのくらいの魔力を充填したら、自分の魔力が枯渇するのかを知らないと、扉の中に閉じ込められるか、倒れてしまうんじゃないかな?

 私でも、3枚目の扉に魔力充填したら不安になったから。

 ああ、それから私は協力者なので、来週はお休みです。今後も隔週の活動になるので、魔術師の皆さんは頑張ってください」


 当たり前のように私が居ると勘違いしているようなので、一緒に研究はするけど、できる範囲での協力しかできないと、きちんと皆さんに伝えて丁寧に頭を下げておく。


 休むのは、幼児である私を守るために、元々トレジャーハンター協会が決定していたことであり、お爺様との約束でもある。

 また、イオナの葉を採取していた時、私は守護霊の3人と相談して、これ以上調査に深く関わらない方がいいだろうと結論を出していた。



『まあ一番の心配は、思いついたことを何でも発言する癖やな』


『そうじゃの、本来なら金貨100枚積まれてもおかしくない情報や知識を、調査団の者は無料でサンタから得ておる。

 あの者らは、サンタの情報や知識で、これから世間に名を馳せることになるじゃろう。本来なら、与えた知識だけで叙爵も可能なはずじゃ』


『えっ、叙爵?』


『そうよサンタさん。貴女が提供した魔法の知識は、誰も持っていなかった知識だから、中には与えられた魔法の知識を、自分のモノにしようと企む者が居るかもしれないわ。

 もしもアロー公爵が後見人として名乗っていなければ、結構危うい立場だったと思うわ』


 3人は、私が都合よく利用される未来しか見えないと言い、アロー公爵が本当に後見人として私を守る気があるのかどうか、試した方がいいとも言った。

 間違いなく私に対して好意的なアロー公爵だけど、それは私の能力を半分も知らない時に申し出たことだから、今後のことは分からないと心配している。


 誰のことも悪意で見たくないけど、確かに私は幼児。自分自身を守り切れない。

 だから、守護霊3人の忠告は素直に受け入れることにしている。

 実は調査団の中には、私に対して生意気だとか、でしゃばり過ぎだと批判している学者が居ると、偵察好きなトキニさんから聞いている。

 いや、生意気なのは間違いないと思うけど、やり過ぎたことは反省だ。



 翌日の午前中は各チーム毎に活動し、私たち最速踏破者は、調査団の安全のため見回りをした。

 そして昼食後、予定通りゲートル支部に戻るため【聖なる地】を出発した。

 帰りは、期待していたトカゲとブラックワームには遭遇しなかったけど、休憩時間に偶然隠し部屋を見付け、土に埋もれていた魔術具を私とシリスが発見した。


 魔術具は支部に帰ってから鑑定士チームが鑑定し、工学者のツクルデ教授が起動させてみると張り切っている。

 もちろん発見者の私と最速踏破者のモノだよ。大きさは1メートル四方の金属製で、見た目は職業選別で使う魔術具に似ていた。高額だったらいいな。


 調査団の皆さんは、調査報告書を明日作成し、明後日は休日となる。

 私は7日間の休みに入り、ホッパーさんと一緒に王都へ向かう。

 約1年半振りに、母様と兄さまに会える。

 念願の家を購入できるので、嬉しくて嬉しくて眠れないかと思ったら爆睡してた。


 ……いざ王都へ! アロー公爵家の調査もするわよ。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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