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55 秘密の扉(4)

 ファーズさんを止める間もなく、大きな魔核はオレンジ色に染まっていく。

 先程染めたランプ用の魔核は濃いオレンジ色だったけど、今回は薄いオレンジ色だ。どんどん魔力を流しているけど、色は濃くならない。

 それでも、魔核である月の回りに散りばめられている宝石が、数個キラキラと輝いた。


「オーッ、本当に宝石が輝いたぞ!」と、エバル教授が感動して声を上げる。


「なんと素晴らしい仕掛けだ!」


 いつの間にか魔術師チームに混じっていた工学者のツクルデ教授が、うっとりした視線を扉に向けて言う。

 直ぐに他の工学者仲間を呼んで、開閉の仕組みを予想し始める。


「では、最後は私だな」と言いながら、アロー公爵もチャレンジするようだ。


 もう勝手にしてって溜息を吐いていたら、なんとアロー公爵、右の扉の月を象った魔核の回りの宝石を、全てキラキラと輝かせた。

 様子を見ていた全員から「おーっ!」と感嘆の声が上がる。


『アレスも魔力量が多かったが、祖父であるアロー公爵もなかなかじゃな』


『この様子なら、調査が終わるまでに扉を開けるかもしれないねサーク爺。

 そうじゃないと、次の扉の先には進めないもんね。もっと魔力操作を頑張ってもらおう』



 魔核に魔力を流すと宝石が光り輝くという幻想的で神秘的な光景に、他のチームの皆さんも手を休めて見学する。

 そして当然のことながら、次はサンタさんの番ですよって視線を向けてくる。


「扉が開いても、今日は中には入らないよ。

 それから厳重注意しとくけど、扉が開くと入場口には透明の柔らかい膜のようなものがあって侵入を阻まれます。その膜を通り抜けられるのは、一定の魔力を流せる者だけです。


 もしも、その膜を傷つけたりしたら、魔術具が発動して体が雷に打たれたようになり倒れます。

 うちのリーダーが経験済みなので、どんな衝撃なのか経験したいと思う命知らずの人が居たらご自由に。死ぬことは、うーん、ない・・・ような気がします」


 私は上を向いて、死ぬかなぁって考えるフリをしながら、好奇心旺盛で探求心が強すぎる皆さんに脅しをかけておく。

 いや、笑い事や冗談じゃないから。屈強なリーダーが倒れるくらいだから。


「では、サンタいきます」


 私は深く息を吐きだし、魔核に手を当てゆっくりと魔力を流していく。


「オォーッ、なんだこの眩しさは!」


 私が魔力を流し始めると、魔核は七色に輝き、右側の扉の宝石を夜空の星のように煌めかせ、続いて左側の扉の太陽の周りの宝石を眩しく輝かせる。

 黄金でできている太陽までが眩しく見え、皆は眩しくて一瞬目を瞑る。

 重厚な扉はガコンと音をたて、ゴゴゴゴゴと振動がして、奥に向かってゆっくりと開いていく。


「オーッ、開いたぞー!」と、皆は目を見開き大興奮している。


 工学者チームは開く扉に目が釘付けで、あれ程柔らかい膜があるって言っておいたのに、半数が顔を膜にぶつけて跳ね返され、残りの半数は扉が開く様子を興奮しながらノートに記録している。

 他のメンバーも、中を見ようとランプをかざすけど、膜の先は光を通さないので何も見えなかった。


「はい、今日はここまでです」と、私はきっぱりと終了を告げる。



「そんな~、それじゃあもう1回、もう1回だけ開いて見せてくれないか?」


 工学者であり建築が専門のハーカル准教授が、両手で拝みながら懇願してくる。


「あっ、エバル教授、今日はダメだって言ったのに」


 ファーズさんの焦った声が聞こえたので扉の方を見たら、エバル教授が膜に魔力を流し右腕を突っ込んでいた。

 その様子を見ていた他の魔術師チームの皆さんも、面白がって膜に魔力を流しながら右腕を突っ込んでいく。


 ……やっぱり・・・だから扉を開けるのは嫌だったんだよ。みんな自由過ぎ!


 結局好奇心に勝てなかった魔術師チームは、ファーズさんを先頭に膜の先の空間に進むことになった。

 魔術師チーム以外のメンバーは、挑戦したけど残念ながら魔力量が足らなかったのか、膜の先に進むことができなかった。

 私は残って、他のメンバーと一緒にピラミッド遺跡の出口で待つことにする。


 でも、待てど暮らせど扉が閉まらない。


『サンタや、中に入った者では、扉を閉める魔核に注ぐ魔力量が足らぬのではないか?』


『あぁ、そうかも』


「どうやら中に入ったメンバーでは、中から扉を閉められないみたい。

 みんな、【聖なる地】のピラミッド遺跡の正面階段の所で待っていて」


 中に入れないのが悔しくて堪らない学者の皆さんに、私は大きな溜息を吐きながらお願いという名の指示を出し、やれやれって感じで膜の中に入っていく。


 中に入ると、困り果てた魔術師の皆さんが、扉を閉めるための魔核の前でたむろしていた。


「サンタさん、気付いてくれて助かったよ。扉を閉めてくれるか?」


 光り苔に薄っすら照らされている階段前で、私を見たファーズさんが笑いながらそう言った。


『サンタや、階段から先は我らの声が届かない。こ奴らに、少し危機感を植え付けておいた方がよいじゃろう』


『うん、魔力切れってこともあるもんね』


 閉まる扉の様子を見て、「おー、閉まったぞ!」って騒いでいる皆さんに、私はサーク爺の助言通り注意する。


「みなさん、一旦中に入ったら、中の音や光は遮断されます。

 中に入れても閉められなければ、この先の扉が開かない可能性があるし、扉の仕掛けが反応しなくなる可能性だってあります。

 一番怖いのは魔力切れです。そうなれば、閉じ込められることになります」


「この先の出口の扉なら、私でも開けるぞサンタさん」


 そんな怖い顔をしなくてもって、ファーズさんが私の機嫌を取るように言う。

 

「あのさ、超古代紀も高度文明紀も、その後の星の再生紀も、この遺跡は神聖な場所であり、民を導く大切な場所だったんだよ。

 だからこそ、どれだけ恐ろしい罠や仕掛けが隠されているか分からない。

 しかも、この先の扉は2つだけじゃないんだ。


 僕が居なくても扉の開閉ができるよう、どうか皆さん、早く魔力量を上げてください。

 この先の扉も結構魔力量が必要だから、最初の扉を開ける魔力量を持つ人が、最低でも2人必要です」


 ……ああ、なんか凄く生意気な幼児になってるよ私・・・

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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