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54 秘密の扉(3)

 扉に到着してから、皆さん研究者としての本領を発揮し、其々がノートや筆記用具・計測器などをカバンから取り出し、調査を開始していく。


 歴史学者チームは、扉に刻まれている超古代語や図を記入していく。

 鑑定士チームは、金や宝石や魔核の大きさや価値を査定し始める。

 地質学者チームは、この場が超古代紀の地層だとすると、その後の高度文明紀の地層も近くにあるはずだと、後方の壁を掘り始める。


 ……何してるのかなぁ? 神聖な場所を掘ってもいいの? ねえ!


 天文学者と気象学者チームは、扉に描かれている太陽と月、それらを囲むように散りばめられている宝石を見て、もしかして星座と同じ配置なのかもと仮説を立て、星座図表を取り出し照合していく。


 魔術師チームは、魔核の大きさに驚きながら、本当に透明の魔核ですねぇとか、この大きさの魔核は見たことがないぞと騒ぎながら、試しに魔核に魔力を流してみようかなんて言い始める。


 工学者チームは、扉自体が魔術具なので、全体の高さや長さなどを計測し始める。

 それが終わると早く扉を開いてくれと、きらきらした瞳で私に懇願する。

 おやつタイムを楽しんでいた私としては、食べ終わるまで待って欲しいところだし、開けると収拾がつかなくなるから嫌だ。


 ……はーっ、なんてまとまりのない現場なんだろう。


 まあ調べたい観点がそれぞれ違うから仕方ないのかもしれないけど、煩い。とにかく煩い。

 特に地質学者チームのゴツゴツ壁を掘る音が、地中である空間に響く。

 天文・気象チームの皆さんは興奮度が高くて、「これは山神座です!」とか「あの星は船に方位を示しているようです!」なんてテンションが高すぎる。


 でも、一番テンションが高いのは鑑定士チームだ。

 希少な宝石もさることながら、扉の材質が見たこともない金属の可能性が高いと、大はしゃぎしながら叩いたり撫でたりするから、余計に収拾がつかない。


 ……こらこら魔術師チーム! 勝手に魔核に魔力を流すんじゃない!



『ん? そう言えば前に、トレジャーハンターに同行する下位・魔術師の重要な仕事は、発見した魔術具に魔力を注入する仕事だって教えて貰った気がする。

 でも、おかしくない? 魔力を注入するって・・・魔力について知ってるってことよね? あれ? あれれ』


 おやつを食べ終わった私は、凄く重要なことを思い出して、首を捻りながら守護霊の皆に質問した


『ああ、サンタさんは魔術師が魔力注入するって意味を勘違いしてるで。

 あれは魔核を魔術具にセットするっていう意味や。

 魔術師がセットした方が起動する確率が高いってのが、この時代の常識やな』


『はあ? 全然意味が分からないよトキニさん。

 魔力って言葉を知っているのに、魔核の力だけを魔力って思ってたの?

 魔術師が魔核をセットした方が、魔術具が起動しやすいって何?

 もしかして、無意識に魔核に魔力を流してるってこと? いや、魔核に魔力を吸い取られてるって可能性も・・・』


『サンタや、またお主は直ぐに結論を出そうとしとるな。

 よいか、先ずは今この時代の常識を知ることじゃ。勝手に先に進もうとするでない。お主の思考は周囲を混乱させるぞ』


 またサーク爺に叱られた。

 そんなこと言ったって、疑問に思ったことは確かめたいんだもん。


『サークレス様、天才の思考とはこういうものなのだと思いますわ。

 サンタさんを天才に育ててしまった、サークレス様にも責任があるのでは?

 暴走を止めるのも我々の仕事であり責務ですけれど、まだ5歳なのです。

 サンタさんも、生き急がず周囲の者を頼ることを覚えましょうね』


 ぐすっ、パトリシアさんが優しい。

 でも、何気に叱られてる気もする。暴走? 私ってそんな感じに思われてるの? ちょっとへこむ。

 


「私は薄い黄色に染まったぞ!」と、能力学園のエバル教授が興奮して叫ぶ声が聞こえてきた。


 ……ちょっと、守護霊の3人と念話している間に、魔術師チームが暴走してるじゃん。


『似た者同士じゃのサンタや』


『え~っ! 違う、私は暴走してないもん』


 唇を突き出し文句を言うと、守護霊3人が大笑いする。


 ……なんでよー!


「おぉ、私は薄いオレンジ色ですよ」と、魔術師協会のミエハール部長も、魔核の色が変わった瞬間、嬉しそうに叫んでいる。


「まあ、私は薄い緑色ですわ」と、魔術師協会のニンターイ課長が言っている。


 ……ん? 色の違いって本当に魔力量? 属性も関係してる?


「ねえねえ、色の違いって、魔力量の可能性もあるけど、属性の違いって可能性はない?」


 ……しまった! サーク爺と念話しようと思ってたのに、つい声に出しちゃた。


『フウ、そういうところじゃサンタ。まあよい、分からないことは専門家に任せて、お主はゆっくり大人になれ。出過ぎた杭は打たれるぞ』


 ギャーッ、いつもの癖で質問しちゃったよ。

 こんなに煩いのに、何故か魔術師の皆さん、私の呟きというか会話が聞こえたようで、ヒュンと私の方に首を向け、眉を寄せたり驚きの視線を向ける。


「この天才は本当にもう・・・簡単に凄いことを言いだす」


 アロー公爵が、こめかみを揉みながら疲れたように言う。

 

 ……サーク爺が言うように私って出る杭? 天才じゃなくていいよ?


 そこから魔術師の皆さんは、互いの属性について確認し合う。

 直ぐに結論は出そうにないが、ぜひ検証項目に加えようと盛り上がっている。



『そう言えば私って、七色に染まってたよね』


『わしの時代も、属性を色で考えたことはなかったのう。じゃが、サンタが7色であれば、それは全属性を示しているのかもしれんぞ』


『サンタさん、また自分の仕事を増やした気がするわ。大丈夫?』


『やだ~、そんな縁起の悪いことを言わないでパトリシアさん。専門家に任せるよ。ただ働きはイヤ』


『この際やから、おやつやのうて、アドバイザー料を取りいなサンタさん』 


『うん、本気で考えてみる』


 てな念話をしていると、前回魔核に魔力を流したファーズさんが、見本を見せましょうと言いながら、魔核に手をついている。


「私の魔力量では扉は開きませんから大丈夫です」


 いやいや、何が大丈夫なのよファーズさーん!

 もしも開いたらどうするの? 全員が中に入りたがるよ? ねえねえ。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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