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46 遺跡調査(5)

 今日は見学するだけですよと副責任者のボルロさんが念を押したはずなのに、2枚の巨大扉の前に立った各チームの代表者は、豪奢な黄金の太陽や魔核の月、散りばめられた宝石や初めて見る超古代文字に、大興奮のあまり帰りたくないとごねた。


 責任者であるアロー公爵が帰るぞと言っても、ボルロさんが明日にしてくださいと頼んでも、興奮は治まらず困り果てる事態に。


「神に選ばれし者にのみ開かれる。選ばれし者よ、暦を読み天の声を聞いて知らしめよ。星の動きを観察し、厄災から民を守れ」


 扉の中央部分に書かれた超古代語を私が大きな声で読み上げると、あれだけ興奮して雄たけびを上げていた研究者の皆さんが、シーンと静まり返り全員が首をブンと私の方に向けた。

 全員の目は見開き口は半開きで、でも直ぐに獲物を発見したハンターのようなギラギラした目に変わった。


「ここに居るのは、約束も守れない大人ばかりなのか?

 僕はもう、明日から調査団に同行するのは止めた方がいいのかもしれない。

 超古代語など、きっと学びたくないんだと思わないかサブチーフ?」


 私は超生意気な男の子って感じで、帰ろうとしない大人たちに最後通告する。


「はっ? まさか超古代語や古代語が翻訳できるのって・・・」と、天文学者のシンセイ教授は口籠もる。


「皆さん、何をしているのです。急いで帰りますよ」と、慌ててイオナロードに向かうのは工学者のツクルデ教授だ。


「明日は、美味しいお菓子を必ず持参しましょう」と、いい笑顔で約束したのは歴史学者のターンキュウ教授だった。


 そこからの帰り道、今度は先頭に王宮魔術師団の2人を配置し、最速踏破者の半分がその後ろを歩き、最後尾を残りの半分が護衛としての役目を果たす。

 1キロ地点のセイフティールームでは、王宮魔術師団の2人を見張りにして、他のメンバーは休憩する。


 ……アロー公爵は、王宮魔術師団の2人と私を、できるだけ引き離したいみたいだな。



「サンタくん、もしも本当に読めるのなら、この古代語を読んでみてくれ」


 セイフティールームに入ると直ぐ、壁に刻まれていた古代語を見付けた気象学者のアメフラ教授が、本当に私が古代語が読めるのかどうかを試すため声を掛けてきた。

 この人は、疑問に思ったことは確かめなきゃ気が済まないのか、何でも疑ってかかるタイプみたいね。


「幼児は(もぐもぐ)如何なる時も(もぐもぐ)おやつを優先します。暫く(ごっくん)お待ちください」


 私はセイフティールームに入ると直ぐに、楽しみにしていたお菓子を食べ始めたので、教授にちょっと待ってとお願いする。

 その間に守護霊3人が、星の再生紀頃のものと思われる古代語を読み始める。

 チーフとサブチーフは、私を試そうとしたアメフラ教授に、抗議するような視線を向け軽く睨む。


 ……私だってトキニさん時代の古代語は普通に読めるけど、これってそれより前の時代の文字?


「この部屋は穀物の管理倉庫であり、許可なしに入室することはできない。麦は袋に入れて積み、豆は瓶に入れて保管すべし。

 ふ~ん、星の再生紀頃も瓶で保管してたんだ」


 私はパトリシアさんから教わりながら、不機嫌そうに読み上げていく。


「信じられない!」とアメフラ教授は言って、手に持っていた水筒の水を溢している。


「皆さん、口外禁止です。もしもサンタくんの才能を他に漏らすことがあれば、調査隊から外されることは間違いないでしょう。

 また、希少な協力者を危険に曝したと王様に報告します。

 外の2人は調査団ではなく護衛ですから、当然知られてはなりません」


 責任者であるアロー公爵が、厳しい口調で驚いている皆にゴンゴンと釘をさす。


「申し訳なかった。明日からも宜しく頼む。これは星の再生紀時代の文字で間違いない。あぁ、この出会いを神に感謝申し上げる」


 どうやらアメフラ教授の疑念は晴れたみたいだけど、今度はキラキラした瞳で私の前に跪いた。

 このキラキラした瞳は、地底生物との対戦で死にかけてるハンターを助けた時に向けられる瞳と同じ気がする。


 ……これは間違いなく、おやつを貢いでくれる人を増やしたわね。そうよね? 教会大学に連れて行こうなんて考えないわよね? ね!


 帰り道、なんとブラックワームが1匹出た。

 ちょっと小振りだけど、間違いなく美味しい! 

 討伐したサブリーダーが、売った残りで明日の昼食にブラックワームのサンドイッチを用意すると約束してくれた。これで明日も頑張れるよ。ありがとう。



 今日は疲れたから早めに寝ようと思っていたら、チーフとアロー公爵から要人用の応接室にご招待されてしまった。


「サンタさん、魔法の他に古代文字も読めるなんて聞いてなかったが・・・私はホッパーから貴女の職業を聞いていない。

 もしも問題ないなら、職業選別で授かったランクと職業を教えてくれないかな?

 チーフに訊いたが、ハンター協会の保護対象者に関することは話せないと断られてしまってな」


 恨めしそうな顔をチーフに向けながら、アロー公爵が私に頼んできた。 


「職業ですか? あ~ぁ、いいですよ。

 私の職業は【過去・輪廻】。そして今のところランクは【中位】です」


「今のところ? ん、過去? 確か過去持ちに魔術師など居なかったと思うが?」


「アロー公爵さま、私の【過去・輪廻】は、ガリア教会で調べていただければ確認できます。

 私には、輪廻の輪という所から来た守護霊が3人居ます」


 自分を隠さないことで、疑いを持たれたり敵視されるのを防げるじゃろうとサーク爺が言うから、私はこれまでの体験を、包み隠さず話した。

 トキニさんもパトリシアさんも、アロー公爵は信用できる人物だと判断したみたいで、能力を伝えて協力体制をとった方がいいって。


「1万5千年前の超古代の魔法使いに、7千年前の星の再生紀の冒険者、そして3千年前の王国紀の開拓者・・・その方たちの知恵を受け継げると?

 では、アンタレスが学んでいるのも超古代の魔法・・・

 うむ、これは常人では理解できない職業であり能力だな」


 アロー公爵はそれだけ言うと腕を組み、暫く何かを考えていた。


「希少価値が高過ぎて危険だ。サンタさん、公爵である私が後見人になろう」

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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