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45 遺跡調査(4)

【聖なる地】に到着するまでの道程、珍しく地底生物に遭遇すこともなく順調に進み、ほぼ予定通りの時間で目的地に到着できた。

 到着後、全員が荷物を置き身軽な格好で遺跡を見て回る。

 皆は、超古代の遺跡保存魔法に愕然とし、各遺跡の大きさに度肝を抜かれ、雄々しく立つ1本のイオナの木に感動した。


 簡単な昼食後、各チームで調査の段取りを話し合い、代表者会議で明日からの活動予定を決めていく。


「魔術師チームは、これから扉に向かうが、この地にかけられている保護魔術の解明も行いたい。

 それと、この地にブラックウルフが居たと聞いている。

 安全な調査を続けるため、侵入経路の特定と、侵入を防ぐ措置を急ぐ必要があることから、泊まり込みができるよう準備をお願いしたい」


 魔術師チームを率いているアロー公爵は、予想以上の規模の魔術に驚嘆し、すっかり魅せられているようだ。


「それは素晴らしい考えですアロー公爵様。

 歴史学者チームも、是非泊まり込みで調査をしたいと思います。

 これは大発見と言って間違いない遺跡です。ああ、この感動を早く学園の者にも伝えたい」


 歴史学者チームを率いている王立能力学園のターンキュウ教授55歳は、少し興奮しながら泊まり込み調査に賛同する。

 体力や調査時間を考えると、毎日町と遺跡を往復するなんて、時間と体力の無駄遣いだと付け加えた。


 ……ああ、50代や60代の人も居るから、毎日往復10キロはキツイよね。


「それは我ら地質学者チームも同じです。

 あの地層を見てください! あのようにはっきりと年代が分かる場所など、ザルツ帝国の死の谷くらいです。あぁ、なんと素晴らしい」


 地質学者チームを率いている王立能力学園のカンドウ教授42歳は、恍惚とした表情で早く宿舎を作りましょうと提案する。


「天文学者チームも同様に考えます。

 なんと、あの三角の遺跡の四隅は、正しく東西南北を向いています。

 神聖国ガリアの聖地にも似たような遺跡がありますが、その規模はここの半分以下です。これは直ぐに応援を呼ぶ必要があります」


 天文学者チームを率いているのは、ガリア教会大学のシンセイ教授48歳だ。

 両手をプルプル震わせて、応援を呼びたいとアロー公爵に要請する。


 ……う~ん、専門家がこんなに感動するってことは、もう国の管理下に置かれることは決定だね。


「気象学者チームを率いているアメフラです。

 調査前にいただいた資料には、この建物が星の動きを観察し、厄災から身を守るための物である可能性が書かれていましたが、それは何を以てそう思われたのでしょうか?」


 ガリア教会大学の教授であるアメフラ教授60歳は、資料に記入してあることの根拠をチーフに向かって訊ねた。


「えーっ、それは、これから向かう魔術具の扉にそう書かれていたからです」


 ちらりと私に視線を向けたチーフが、しまった!って顔をしながら答える。


「それでは、超古代の遺物と思われる扉の文字を、解読した者が居るということでしょうか?」


「何ですと!」


 アメフラ教授に問いに続いて、各チームの教授たちが驚いた顔で色めき立つ。


「確かに、古代文字や超古代文字を解読できる者は居ます。

 しかし、その類稀な能力故に、他国に奪われたり私欲の強い者に攫われる可能性があります。

 よって、その者の存在を知りたければ・・・いえ、調査団全員に、その者の名や存在を口外しないと約束する念書を書いていただきたい」


 そう答えたのは、調査団の副責任者でもあるハンター協会のボルロさんだ。


「いやいや、そのような貴重な存在がいるなら、今すぐにでも王立能力学園に講師として迎えたい。ぜひ、その方をご紹介ください」


 神殿遺跡の柱に座っていた歴史学者チームのターンキュウ教授が、立ち上がってボルロさんにお願いする。


「我が教会大学にも紹介してください。古文書が解読できるかもしれません!当然、高位・学者なのでしょう?」


 天文学者チームのシンセイ教授も、立ち上がって懇願する。


「工学者チームのツクルデです。

 これまで発見してきた魔術具には、高度文明紀の古代文字が刻んであります。

 もしも、もしも高度文明紀の文字が解読できれば、時代は大きく変わるでしょう。うちにこそ必要な人材です。

 念書だろうが誓約書だろうが、書けと言われれば書きますので、どうか一度、王立能力学園に来ていただきたい」


 工学者チームを率いているツクルデ教授61歳は、今回の調査団の中で最も高齢だけど、お爺様と同じ魔術具の専門家で、この大陸一の研究者だと言われている。


 ……ちょっと怖いかなぁ・・・古代文字とか、超古代文字が読める人って、そんなに少ないの?


『サンタや、チーフが言っていただろう。高度文明紀の文字が読める者など居ないと。もちろん超古代文明紀の文字など、わし以外に読める者はおるまい。

 そう言えばパトリシアさんは、高度文明紀の文字が読めるかな?』


『そうねぇ、あの時代には、大きく2つの言語を持つ文明があったみたいで、私が読めるのは片方だけね』


『それでも凄いよパトリシアさん。やったー! 今度教えてね』



 まあそんな感じで、代表者会議で決まったのは、簡易宿泊施設を3日以内に作り、宿泊に必要な日用品等は、各自で持ち込み持ち帰ることになった。

 それでも、食料の鮮度や調理できる調理人も居ないことから、二泊三日で調査して町に戻り、4日目は調査報告書を作成し、5日目に休みを取るという、5日間のルーティンワークを基本とすることになった。


 荷物を運ぶため協会ポーターを各チームに1人だけ配置すると、副責任者のボルロさんが妥協案を出し、盗難や秘密漏洩を防ぐため、ハンターに依頼したら調査団から排除すると、アロー公爵が厳しく釘を刺した。



「では、帰路の途中で超古代の扉へとご案内しましょう。

 本日扉を見学できるのはリーダーだけです。他の方は2.5キロ地点のセイフティールームでお待ちください」


 副責任者であり高位・鑑定士のボルロさんが、全員に向かって告げる。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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