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42 遺跡調査(1)

 無事にイオナの葉を採取したアレス君は、どうか効果がありますようにと願いを込めて、ホッパー商会経由で王都のアロー公爵屋敷に送った。

 そして身の安全のため家庭教師のシロクマッテ先生と一緒に、お爺様の馬車でファイト子爵領へと移動した。

 滞在するのはお爺様が経営しているホテルで、魔術具の勉強もするとアレス君は張り切っていた。


 ……不安で仕方ないはずなのに、アレスにいには笑顔で手を振っていた。


 ……私も実地検証をして、イオナの葉の効力を試すよアレスにいに。気を付けてね。待ってるよ。ぐすん・・・


『元気出しいなサンタさん。アレスなら大丈夫や』

『うん、ぐすん』


『サンタや、本当に髪を金髪にするつもりか?』

『うん、ヒバド伯爵が来るんなら、そのくらい当たり前』


『そうよね、小さな子供が魔術師として金級パーティーに交じってたら、絶対に目を引くし探りを入れてくるわよね』

『うん、常にフードを被って、わざとアロー公爵と親しくする』


 よし、寂しいけどホッパー商会に戻って、侍女頭さんに髪を染めてもらおう。

 男の子に見える服を買い増しして、用心のためにナイフや武器も準備しなきゃ。

 サーク爺が空間拡張って上級魔法を教えてくれたから、2週間毎日頑張った結果、昨日リュックの収納量が20倍になった。重さはほぼ感じない。


 こっそりホッパーさんに聞いたら、私のリュックは国宝級の代物らしい。

 お世話になってるからホッパーさんにも作ってあげたかったけど、私と同等の魔力量がないと扱えないらしい。

 このリュックは、私以外が持つと内容物の実際の重さを感じるし、勝手に開閉することもできない。


 ……スコップだってランプだって、非常用の水や食料だって入ってるから、3日間くらいは問題なく生きていける。魔法万歳!


 昨日リーダーから聞いたんだけど、【聖なる地】とイオナの木の所有権は、現在最速踏破者と協会が半分ずつ持っているらしい。

 でも、もしかしたら今後は、国の管理下に置かれるかもしれないって。

 そうなれば、イオナの葉を勝手に採取することは誰にもできないらしい。

 だからね、手の届く範囲の葉は昨日採取して、私のリュックに入れてある。


 ……当然のことだけど、イオナの葉についての情報を公開する気はない。




 私はアレスにいにを見送ってから、ハンター協会ゲートル支部の来客用に貸し出す宿泊部屋に自分の生活物資を運び込んだ。

 ここからなら最強守護霊3人に、ヒバド伯爵のバカ息子の様子を監視してもらうことができる。

 敵の動向を知ることは、アロー公爵を守ることに繋がるもんね。

 

 ホッパーさんとの繋がりも探られたくないし、ハンター支部で寝泊まりすれば、調査団の人間も私に手出ししにくい上に、調査団の行動の変更等も直ぐに分かる。

 最も重要なことは、調査団の代表であるアロー公爵と、極秘で密会し、命を守るために情報を共有することだ。


 この支部の要人用の豪華な応接室は3階にあり、関係者以外3階には立ち入りできない決まりだ。

 そして来客用の宿泊部屋で一番高額な特別室が、3階に1室だけある。

 そう、その特別室を借りたのが私だ。フハハハハ。

 ベッドの他に応接セットや机、タンスも完備されている。

 

 私は無駄使いもしないし生活費もほぼ必要ないから、お金は貯まる一方で、現状では王宮の上級役人なんかより稼いでいる。

 朝夕食付きで一泊のお値段は小金貨1枚(5万エーン)だけど、私は準銀級トレジャーハンターだから、大銀貨3枚(3万エーン)に割り引いてもらえる。

 因みに小金貨1枚で、田舎の家持ちなら3人家族が1ヶ月生活できる金額だ。


 今回は遺跡の発見者であり護衛として、最速踏破者が調査に毎回同行するから、結構な日当も支払われるらしいし、倒した地底生物の換金もできる。

 痛い出費だけど、もしもイオナの葉でアレス君のお父さんが解毒できたら、ホッパーさんがアロー公爵から謝礼金を貰ってくれるらしいから、ちょっと期待してる。




 いよいよ、調査団との顔合わせの日がやって来た。

 いろいろ準備に手間取って来るのが半日遅れたそうで、【聖なる地】に向かうのは明日の朝からと決まった。

 3階の宿泊部屋から調査団の様子を見ていたら、魔術師のローブを着た団体の中に若い男が1人混じっていた。


『荷物の仕分けなんかを使用人ぽい人としているから、あれがロールテンじゃない?』


「そうかも・・・新人ぽいね。見た目はいい人そうなのに・・・」


『無理矢理命令されてる可能性もあるわよ。上司や先輩に逆らえないのかも?』


「う~ん、暫く探りを入れて、同意の上なのか強制なのか、何も知らずに罪を被せられる可哀想な人なのかを確認する」


 パトリシアさんと眼下を注視しながら、ロールテンらしき人物について語る。

 サーク爺はバカ息子の偵察に行っていて、トキニさんは調査隊の中にさり気なく紛れ込んで会話を聞いてる。

 一行はハンター支部から少し離れた場所にあるホテルを、1か月間貸し切って滞在するらしく、調査関連の機材だけを支部で保管する。



 午後4時、ホテルに荷物を運び準備が整った調査団一行が、再びハンター支部の会議室に集合した。

 私たち最速踏破者は、チーフとサブチーフがイオナロードや【聖なる地】について説明を終えた後から、発見者であり同行する金級パーティーだと紹介される。


「冗談だろう? 金級パーティーに幼児が?」

「魔法使いって何だ?」

「トレジャーハンター協会の魔術師資格が中位?」


 幼児の私を見て、予想通りに皆さん困惑というか怒りの表情で疑念を口にする。


「トレジャーハンター協会としても前例はないのですが、サンタくんは間違いなく中位・魔術師レベルであると、協会魔術師試験官でもある私が保証します」


 魔術師協会の高位・魔術師の皆さんや、王立能力学園の魔術師の教授に向かって、魔術師のファーズさんが立ち上がって保証してくれる。


 ……あぁ視線が痛い。フードを被ってなかったらガクブルだよ(涙)

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

新章スタートしました。

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