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41 アロー公爵家の闇(4)

 話が纏まったところで、私たちは急いで地下の試験会場に向かう。

 残念ながら試験官となる協会の魔術師が居ないから、合格レベルだとチーフとサブチーフが認めたら仮資格証を発行することになった。

 調査隊が王都に帰ったら、ファーズさんに再試験をしてもらって、正式な資格証を発行してもらう。


 ……結果は言うまでもなく合格。うん、当然だよ。私の弟子なんだから。


 真面目なアレス君は、私と出会ってからずっと魔法と魔術の訓練を重ねてきた。

 魔術に関しては、私よりたくさん詠唱の言葉を覚えているし、魔法攻撃だって抜かりなく頑張っているけど、実戦での経験はほぼない。

 それでも試験会場の的は全て魔法で撃ち抜かれ、巨石は魔法陣で粉々になった。

 アレス君は土魔法が得意だから、石礫を用意する必要がなくて羨ましい。



 試験が終わる頃には、緊急招集をかけた最速踏破者メンバーもやって来た。

 さあ、いざ出発!って気合を入れていたら、重要な伝達があるからと、私たちはチーフの執務室に呼ばれた。


「おめでとうカーリン、今日から君たちは金級パーティーに昇格だ。

 今日、本部から昇級認定書が届いた。

 本当は調査団が帰ってから、ゲートル支部で昇級祝いをしようと思っていたんだが、調査団の奴等は高位貴族が多い上に、ハンターを見下す可能性がある。

 銀級パーティーだからと、舐められるのも癪に障るからな」


 チーフはそう言いながら、リーダーのカーリンさんに【金級パーティー・最速踏破者】と書かれたパーティー専用ネームプレートを手渡した。


「やったー!」と私も含め全員で万歳して喜び合う。


「それに伴い、カーリンは金級、ボンゴライアとヨケンヤラは銅級に昇格だ。

 ちなみにサンタさんは、巨大トカゲの単独討伐等の成績で銅級から準銀級に昇格する」


「やったな! おめでとう!」


 昇級した4人を、お爺様、ホッパーさん、アレス君を含め皆が祝ってくれる。


「準銀級って何?」


「今までの規定では、魔術師試験で中位・魔術師に合格した者は、1年以上のハンター経験を積めば銀級だったんだ。

 まあ、ハンター登録するような中位・魔術師なんて30年に1人くらいだがな。

 しかしサンタさんは、魔術師学校にも行かず、ハンター協会の魔術師試験で中位・魔術師に合格してしまった。・・・そんな前例がないんだ」


 チーフは困った顔をして、なんとなく歯切れが悪い。


「本部の奴等もサンタさんの優秀さは分かっている。だからこそ不安なんだよ。

 今回の調査で魔術師から誘いが来て、トレジャーハンターを辞めるんじゃないかってな。

 4歳の銅級も前例なし。当然5歳の準銀級なんてあり得ない話だが、それでも精一杯の誠意を見せて、準銀級なんてものを作って引き留めたいのさ」


 それは俺もチーフも、最速踏破者の仲間も同じだろうがなと付け加えて、シルバーに輝く新しいネームプレートをサブチーフが渡してくれた。


 ……えっ、もう準銀級? ダメダメ、ここで調子に乗るのは良くないわ。


「ありがとう。私の目標は、サーク爺から上級魔法使いと認められ、ついでに上位・魔術師の資格を取り、金級トレジャーハンターになって、発見したロードに【サンタロード】と名付けることよ。

 そして爵位を貰って独立するの。高位貴族とか無能魔術師なんて糞食らえよ!」


 フンスと鼻息も荒く、私はこれからの目標を皆に公言していく。

 私は有言実行の幼女よ。

 折角の目標なのに、ガクッってなるのは止めてお爺様。

 キラキラした瞳で拍手してくれるアレス君、公爵家を継げなかったら、私とトレジャーハンターになって生きていこうね。




 そんなこんなのサプライズもあり、私たちは足取りも軽くイオナロードへ。

 さあ、アレス君のお父さんのために、イオナの葉を持って帰らなきゃ。


 入場ゲートでは、アレス君の中位・魔術師の仮資格証を見た職員が首を捻ったけど、同行しているサブチーフが「サンタさんの弟子だ」と言ったら、「ああ、成る程」って納得してた。

 この1年で、私もトレジャーハンターとして認められたってことだよね。

 そういえば、ゲートの職員さんは時々お菓子もくれる。いつもありがとう。


 イオナロードに到着してからは、危険もあるので全員が警戒しながら進む。

 明りは、留守番しているお爺様の馬車から広域ランプを借りてきた。

 先頭を歩くカンパーニさんが、ロードを照らしてくれる。

 私はサブチーフの抱っこで、今日は急ぎの依頼だから、アレス君も特別にボンゴライアさんに抱っこされている。



『お待たせサンタさん。

 どうやらヒバド伯爵が、7日後に極秘でゲートルの町に来るみたいや。

 息子はアホそうやけど、父親はえげつない上に狡猾で抜け目ない奴やで。

 アホ息子が持っとった伯爵の指示書には、事細かに毒殺の手順や方法が書いてあったし、容疑がかからんよう遅効性の毒を使うらしいわ』


『遅効性の毒?』


 トキニさんの話を聞きながら、聞いたことのない単語について質問する。


『遅効性の毒というのはね、摂取してから半日後とか数日後になって症状が現れる毒のことよ。

 あとは少量ずつ飲ませて、摂取後30日くらいで殺す毒の飲ませ方もあるわ。

 もしもアレスの父親が少量ずつ飲まされていたなら、なかなか気付けなかったと思うわ。気付いた時には手遅れって感じよ』


 毒に詳しいパトリシアさんが、分かり易く説明してくれる。

 そういえばホッパーさんは、突然じゃなく次第に体調が悪くなったって言ってた気がする。


『それじゃあ、アレス君のお父さんも遅効性の毒にやられた可能性があるってことかぁ・・・

 もしも敵がアロー公爵に同じ手口で、同じ毒を摂取させる気なら、似た症状が出るってことよね?』


『ええ、この時代の毒の種類が分からないけど、遅効性の毒は珍しいから、可能性としたらあるんじゃない?

 実物を見て匂いが分かればね~、この体じゃ匂いが分からないから・・・」


 ……ふ~ん、だったら、この機会を無駄にはできないわね。


『サンタや、悪い顔になっとるぞ。

 何をするにも根回しや段取りが大事じゃ。先ずは、わしらに相談せい』

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

次話から新章スタートします。

これからも応援よろしくお願いします。

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