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37 5歳の誕生日

 思わぬ大発見をしてしまった私とアレス君は、発見者としての権利を放棄し協会に一任した。

 私もアレス君も、身を隠して生活している身だ。華々しい表舞台に立つなんて寿命を縮めることに等しい。


 発見した扉の価値が高すぎて、国王の判断を仰ぐ必要があるとトレジャーハンター協会は決議した。

 国王は国宝となる可能性を考慮し、王立能力学園の各専門家、魔術師協会の高位・魔術師、そして暦や天候を研究している神聖国ガリア教会本部から研究者を招集し、調査隊を結成して来月から本格的な調査を開始させる。


 あの扉への道は協会の秘匿事項とされ、ゲートル支部はイオナロードの立ち入りを、2キロまでに制限すると告示した。

 違反者は半年間の活動停止処分や、金貨50枚以上の罰金刑に処すと、協会ではなく国が刑罰も課した。


 国が介入する事態に、ハンターたちは何が発見されたんだろうと様々な噂をしたが、関係者である最速踏破者のメンバーも、ハンター協会ゲートル支部の職員も固く口を閉ざした。

 イオナロードの2キロ地点には、協会の職員が見張りに立ち、ロードを一旦塞いで扉を設置する徹底管理まで開始した。



 私以外の最速踏破者メンバーは、告示通りに入場口から2キロまでの間で採掘をしている。

 魔術師が居ないので、他の銀級パーティー2つと合同だ。

 私は他のパーティーから狙われないよう、アレス君と中級学校の勉強や、魔術具の勉強をして調査開始を待っている。


 翌月、協会の掲示板に新しいお知らせが貼り出された。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

【聖なる地】で、超古代文明紀の遺跡が発見された。

 国王様は、高位職である学者や魔術師、王立能力学園の教授、教会本部の専門家に遺跡の調査を命じられた。

 調査期間中は、イオナロードの採掘を入場口より1キロまでに制限する。

 違反者が出た場合は、調査期間中のイオナロードの入場が禁止される。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 私は今朝、5歳の誕生日を迎え、新しい守護霊が仲間に加わった。


 今度は女性で、名前はパトリシアさん。29歳だから声も若い。

 パトリシアさんは、7千年前の【星の再生紀】時代に生きていた冒険者だった。

 冒険者とは、現在のトレジャーハンターと似ているけれど、彼女は主に地上で活動しており、天文学に詳しく大陸のあちらこちらを探索していたそうだ。


 パトリシアさんによると【星の再生紀】は、まだ多くの高度文明紀の魔術具が残っていて、環境は厳しかったけれど便利な道具や武器のお陰で、獰猛な獣にも対抗できていたんだって。

 でも修理できる職人が少数で、壊れたら使えないのが当たり前だったらし。


 ……獰猛な獣と戦える武器なんて、絶対欲しいに決まってる。壊れててもいいから採掘したい。お爺様なら修理できると思うもん。



『ああ、そこは天文観察をしていた高度文明紀の【マヤネ遺跡】だと思うわ。

 直接見たことがあるけど、超古代から上級魔法使いしか入れない特別な場所だったと聞いてる。

 私の時代も火山噴火の影響を受けずに、ちゃんと遺跡が残っていたわ』


 パトリシアさんに、発見した【聖なる地】と三角の遺跡の話をしたら、行ったことがあるという驚きの答えが返ってきた。

 なんという幸運。名前まで分かったし【星の再生紀】の文字も解読できる。

 ちなみにパトリシアさんは、魔法使いじゃなかった。


 私には3人の姿が見えないけど、守護霊同士は姿を見ることができるみたいで、服装もその時代の特徴があるんだって。

 パトリシアさんとゲートルの町を見て回ったら、文明は劣っているけど、人口が多いし活気があって羨ましいって言ってた。


 パトリシアさんが生きていた頃は、地上でも地下でも生活していて、火山に近い場所では地下に住み、溶岩や火山灰の影響がない場所や、山間の場所には高度文明紀の町が残っていたから、地上で暮らしていたんだって。

 高度文明紀が終わりを告げた天変地異って、本当に人類存亡の危機だったみたいで、パトリシアさんが親から聞いた話では、大陸の北部には隕石も落ちたらしい。



「でも良かったよね。【星の再生紀】ってことは、底層部で生活していたってことだから、発見された魔術具や生活用品の使い方が分かるってことだろう?

 サンタさんと一緒に居ると、僕も色々な知識を得られてラッキーだよ」


 そう言いながらアレス君は、誕生日プレゼントだよって【高位・魔術師大鑑】なる分厚い本をくれた。

 どう見ても一般人には手に入らない代物だと思うけど、自分も同じ本をお爺様に貰ったから、一緒に勉強しようって。


 同じ本なら1冊あれば十分なのにと言ったら、魔法を伝授してくれるお礼として師匠に渡すよう、アロー公爵が送ってきたらしい。

 さすが公爵・・・太っ腹だ。有難く頂いておこう。


「ああ、お爺様が、魔術師の責任者として調査隊を率いてこられるらしいよ」


 まだ1回しか会ったことがないお爺様に会えるって、アレス君は嬉しそうだ。 


「へ、へえーっ、さすが高位・魔術師の最高峰に君臨する人だね。

 でも、本当にアレス君は、私から魔法を学んでも良かったの?

 お爺様は魔術師の代表者みたいな偉い人なのに、叱られない?」


「いや、ホッパーさんがサンタさんの規格外の強さとか凄さを伝えているから、ぜひ自分の目で魔法を見てみたいって言ってるらしいよ」


 本当だろうか?

 確かトレジャーハンター協会は、私が魔法を広めると魔術師協会に喧嘩を売ることになり、宮廷魔術師に消される可能性もあるって心配してたはずだけど・・・う~ん、謎だ。


 昨年同様、お爺様も誕生日には駆け付けてくれて、私に新しい服を買ってくれた。何故か今年も、ひらひらした可愛いワンピースが混じっている。

 ホッパーさんは、アレス君が持っていた携帯用の小型ランプをプレゼントしてくれた。

 凄くお高いのに申し訳ないって言ったら、私が倒した巨大トカゲの肉が、王都で高値で売れて利益が出たから、当然ですよって微笑んでいた。


 誕生日の御馳走を楽しく食べていたら、アロー公爵家から早馬便が届きましたと副店長さんが手紙を持ってきた。

 内容を見たホッパーさんは、どんどん険しい表情に変わっていく。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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