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28 新しい守護霊トキニさん

 2人になった守護霊が、私に「おはよう」と機嫌よく声を掛ける。

 窓の外を見ると、まだ太陽は昇り始めたばかり。良い子は睡眠時間が大事なのに、煩くて2度寝はできそうにない。は~っ。


『はじめましてやな。俺はトキニ32歳。3千年前に開拓者をしてたんや。

 開拓者ってのは、今でいうところの地質学者と探索者を混ぜた感じの職業やな』


「はじめましてサンタです。私の詳しい話は、魔法使いのサーク爺から聞いてください。

 ゴホン、2人にとても大事な話をします。私が寝ている時は緊急時以外、私に聞こえるように話をしたり話し掛けないでください」


 私は超不機嫌な声で挨拶をして、しっかり釘をさしておく。

 中途半端な睡眠で目覚めた幼児の寝起きは、最悪だって覚えて貰わなくちゃね。


『わしは悪くないぞサンタや。こやつが勝手に話し掛けてきたんじゃ』


『それは関係ないよ。はっきり言うね。私、無理矢理起こされて超不機嫌!

 今後は人数が増えるみたいだから、私が呼び掛けた時か、私に危険が迫った時とか知識を教える時()()話し掛けて。

 いい? 勝手に2人の会話を私に聞かせないで。

 もう2人になったから、私に話し掛けなくても寂しくないでしょうサーク爺』



 朝食時間の頃には、すっかり目も覚めて体も脳も起動して、ちょっと言い過ぎたかなと反省した。

 だって、あれから2人とも話し掛けてこないもん。

 今日は誕生日で勉強も魔法の練習もお休みだから、もっとコミュニケーションをとっとかないとだよね。ごめんなさい。


『トキニさん、さっきは寝ぼけてたから、詳しい仕事内容をもう一度教えてくれる?』


『サンタさん、もう怒ってないんか? ゴメンやったな。

 俺が生きてた時代は、トレジャーハンターが探索してる中層部で生活してたんや。

 底層部と呼ばれている部分は、7千年前の星の再生紀と呼ばれている時代の遺跡やな。あの時代はまだ、高度文明紀の遺物が使われていたらしいで。

 でもな、もっと下には1万年前の高度文明紀の都市が眠ってるんや』


「なんですって!」

『なんじゃと! 完全に滅んだ訳じゃないのか?』


 サーク爺と私の驚きの声が重なった。


 トキニさんの主な仕事は、中層部と底層部の地層の違いを調べて、底層部の古代都市を発見したり、もっと下にも都市が埋まっているかどうかを調査するのがメインの仕事だったらしく、最下層の都市の一部を発見したらしい。

 他にも、火山活動を調査したり、鉱物資源の調査もしていたのだという。


 そこからトキニさんは、自分の記憶と輪廻の輪で出会った様々な時代の魂から学んだ知識を教えてくれた。


 トキニさんの話をトレジャーハンター的に纏めると、1万年前の高度文明紀の遺跡は、私たちが底層部だと思っている部分よりも更に下にあるようだ。

 この星は、約9千6百年前に大規模な地殻変動が起こり、その後も3回の大噴火を経験し、幾つかの文明や多くの国が滅んでいるらしい。


 最後の噴火は約1千2百年前で、現在私たちが生きているのは、その時に起きた噴火で積もった地層の上にあるらしい。

 う~ん、これはトレジャーハンター協会に教えた方がいい知識よね。

 いや待って、国とか教会とかにも教えるべき知識だわ。

 でも、幼児の私が言っても信憑性が低くて、誰も聞いてくれないかも・・・


【輪廻の輪でトキニさんが得た知識】


① 超古代文明紀 1万5千年前 (サーク爺が生きていた時)


② 高度文明紀〖最下層〗 約1万年前頃 ⇒ 9千6百年前に大地殻変動で大陸の全ての都市が地中に埋まる。


③ 星の再生紀〖底層部〗 9千5百年前~約7千年前 ⇒ 6千8百年前に大規模噴火で再び大陸が地中に埋まる。


④ 王国紀〖中層部〗 6千7百年前~約3千年前 ⇒ 2千8百年前に大規模噴火で大陸の半分が地中に埋まる。(トキニさんが生きていたのは王国紀)


⑤ 戦乱紀〖上層部〗 2千7百年前~約2千年前 ⇒ 千9百年前に小規模多発噴火で大陸のあちらこちらが地中に埋まる。


⑥ 文明紀〖地表面〗 千8百年前 ⇒ 探索記 ⇒ 現代 


 なんか不思議だけど、地殻変動や大噴火が起こった年代はかなり正確みたい。

 大噴火の後は、百年くらい文明の立て直しに時間が掛ったってことか。


『それじゃあ、底層部で発見される魔術具って、星の再生紀に作られたの?』


『いや、違うで、それらは全て高度文明紀の遺跡から採掘されたもんや、高度文明紀から守り続けて使われていた魔術具やで。

 高度文明紀以降は、大地殻変動によって文明も高度な技術も全てが後退したんや。魔法使いが激減し、技術者も少ししか生き残れなかったらしいわ』


 ……ほうほう、なんとか人類が生き残れたってくらい、凄い天変地異だったってことね。


「あれ? サーク爺が生きてた超古代文明紀の遺跡って、どうなったの?」


『それが記憶にないんじゃ。輪廻の輪の中で目覚めたのは恐らく8千年前くらいじゃ。その間の出来事は覚えとらん。

 最下層の遺跡を見たら、自分の生きていた時代の延長線上の文明なのか、全く違う文明なのか分かるかもしれんがな。

 あの時代は魔法が盛んじゃったから、魔術具という物は殆ど無かったと思うぞ』


「へ~っ、だったら、もしかしたら最下層のまだ下があるかもしれないってことかぁ」


『いやサンタさん、それは掘ること自体が不可能やで』


 せっかく新たなロマン、冒険の夢を描いていたのに、トキニさんったら現実的な意見で夢をくじくなんて・・・がっかりだよ。もうもう。

 ん? でも10歳までに1万年前の高度文明紀に生きた守護霊が来る可能性もあるってことよね?


 それに中層部の時代に生きてたトキニさんが居るってことは、中層部の情報がバッチリ分かるってことだ。そして底層部に関する知識も少しある。

 トレジャーハンターじゃなくて開拓者だけど、私たちより魔術具や高度文明紀の情報をたくさん持ってるってことだ。


 ……キャーッ! これって凄い誕生日プレゼントじゃない? うん。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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