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26 勉強と魔核

 魔術と魔法の練習は順調に進み、5日目からは午前が勉強で、午後から荒れ地に行って魔法の練習をすることになった。

 魔術の方は、正しい詠唱文を覚えれば発動するので、魔法陣についてだけ学べばいいだろうってファーズさんが言うから、私が6歳になったら改めてファーズさんから教えてもらうことになった。


 本部で魔術師の教官もして忙しいファーズさんだけど、月のうち最低でも3日はゲートルの町にやって来て、私から魔法攻撃を学ぶって張り切っている。

 私はその時に、魔核を使う方法を教えてもらう約束だ。

【最速踏破者】のリーダーが、サンタさんが倒した巨大トカゲの魔核だから、サンタさんの戦利品だと言ってくれたから、私も杖を作ってみたい。


 サーク爺の時代にも魔核はあったらしく、魔法使いの多くは魔核付きの杖を使って足りない魔力を補っていたそうだ。

 私は足らない魔力を補うのではなく、ロードを照らす灯りにしたり、新しい攻撃魔法を放つために使いたいと思っている。

 


 今日から私とアレス君は、家庭教師による勉強が始まる。

 教師の名前はシロクマッテさん19歳で、アロー公爵家が管理している飛び地のモエナ伯爵家の三男で、昨年、王立高学園の教育学部を卒業していた。

 こげ茶の長い髪を後ろで束ね、茶色い瞳は少し吊り気味だけど、優しくて優秀らしい。


 もちろん、公爵家の乗っ取りを企んでいる公爵の弟ヒバド伯爵派ではないって、ホッパーさんが笑いながら教えてくれた。

 どうしてホッパーさんは、そんなにアロー公爵家の秘密を知っていたり、深く関わっているのかって質問したら、ホッパーさんのお母さんと、アロー公爵のお母さんは姉妹だったらしい。


『いわゆる、母方の従兄弟というやつじゃな』


『うん、びっくり。ホッパーさんのお母さんは伯爵令嬢だったけど、商売が好きで格下の男爵家に嫁入りしたらしい。男爵家の3男だったよホッパーさん』


『まあ確かに、この時代は母方ではなく、父方の親族との繋がりを重要視するようじゃし、準貴族のホッパーは、気位の高いアロー公爵家の親族には、目を付けられ難いのかもしれんのう』 


 


「はじめまして、今日から君たちを教えることになったシロクマッテだ。

 まず最初に、2人の学力を調べるために、簡単なテストを受けてもらうよ」


 先生は優しく微笑みながら、アレス君には5歳から通う初級学校の1年生と2年生の問題を書いた試験用紙を配り、私には文字配列表と数字が書かれた紙を配って、名前が書けるなら書いてみてねと言った。


 ……う~ん、普通の3歳児とか4歳児は、文字を習うレベルなんだ・・・


 アレス君の暗殺されたお母さんは、王立中級学校の教師だったらしく、5歳から入学し3年間学ぶ初級学校のカリキュラムを、ほぼ教え終わっていた。

 だからシロクマッテ先生は解答内容を見て、優秀なアレス君に凄く驚いた。


 ……うんうん、私の2人目のにいには、優秀なんだよ。



 次に私の前に来た先生は、白紙のままの用紙を見て、「難しかったかな?」って訊いたから、私はにっこり笑って、最近読み始めた【古代魔術具発見の歴史】という本を先生に見せて、これが今の愛読書ですと言った。

 私の学力を知りたいってことだから、隠す必要もないよね。


 ……そもそも私は、初級学校とか中級学校のレベルが分からない。教科書なんて見たことないから。


 はい?って首を捻っているシロクマッテ先生に、私の語学力を分かってもらうため、本を開いて3ページくらい読んでみせた。


「サンタさん、その本の内容というか意味が分かるの?」


「はい先生、私は祖父の書斎にあった魔術具関係の本は何冊か読んだし、分からないことは祖父に直接訊いたりしていたので、私なりに理解しているつもりです。

 もちろん、字を読んだり書いたりするのは問題ないと思います」


 シロクマッテ先生は驚愕の表情で私を見て、差し出された本をめくり、う~んと呟いてから、「少し質問するね」と言った。


「魔術具について知っていることを、僕に話してくれるかなサンタさん」


「はい、魔術具の多くは古代都市ロルツから採掘されたもので、市場に出回っているモノは、古代都市で発見された魔術具を、複製または改良したモノになります。

 その本には、魔術具を起動させるためには、魔術師の存在や魔核が必要なのだと書いてあり、そのことを発見した人の苦労話が書いてあります」


 私は早く古代都市に潜りたいな~って思いながら、本の内容を少しだけ先生に話してみた。


「市場・・・複製、改良・・・え~っと、サンタさんは、もしかして職業選別で【高位職】の【学者・経済】とかを授かったのかな?」


 はははと力なく笑って、シロクマッテ先生は変な質問をしてきた。


「いいえ、私が授かったのは中位職の【過去】です。奇怪な職業ですが、大昔の知識なら誰にも負けない気がします」


「なんだって【過去】? いや私の友人も、珍しい【過去・体術】だったが、彼は専門職だった。そして彼の仕事は体術だったから、警備隊に就職した。

 そういえば【過去】は稀に【記憶】という仕事を授かる者がいると、図書館の本で読んだことがある。

 しかし【記憶】を授かった者は、歴史の教師になると書いてあった」


 ……へ~っ、そうなんだ。確かに過去の知識を与えられるんだから、その時代の歴史は誰よりも詳しかもね。



「先生、サンタさんは私に魔法や魔術を教える師匠なんです。私より遥かに賢いと思います。  

 なので、サンタさんを3歳だと思うのは止めた方がいいですよ。

 ホッパーさんなんて、サンタさんを18歳だと思うことにしてるみたいです。

 職業【過去】だけど、既に魔術は中位レベルですから」


「はい? 魔術師? 中位レベルって・・・でも【過去】だよね。あれ?」


 なんだかアレス君が、先生に憐みの視線を向けているような気がするんだけど、私の気のせいかな? 


 ……あぁ、先生の思考が停止しちゃった。

 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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