表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/144

24 迷える人々

◇◇ ファイト子爵 ◇◇


 サンタナリアの才覚は、職業【過去・輪廻】という奇怪な仕事を授かったこともあるが、あの子自身の才能と魔法のセンス、そして努力あってこそなのだと今回の新ロード探索で確信した。

 3歳であの突出した才能だ。間違いなく高位の職業ランクまで行けるだろう。

 祖父としては、世界中に自慢したいくらいだが、飛び抜けた才能は毒になる。


 もしも屋敷に連れて帰れば、サンタナリアの才能を伸ばすことができず、母親や兄と一緒に王都へ行けば、どこぞの高位貴族に目を付けられるだろう。

 そう考えれば、このままゲートルの町で過ごし、アンタレス君と一緒に家庭教師から勉強を教わる方が安全なのだろう。


 ……じゃが、トレジャーハンターをやる気満々なのは心配じゃ。いくら強くても、サンタナリアは3歳の幼児であり、守られるべき弱者のはず・・・ 


 ……恐れ知らずでも、度胸があるのとも違う。サンタナリアのあれは、好奇心に妙な責任感がプラスした挑戦だ。自分ができるかどうかを試しとる。


 もしも魔法の師匠と直接話すことができるなら、無茶をしないよう頼みたいところじゃが、寧ろ師匠がやれと言っている気もする。


 明日は屋敷に帰らねばならない。

 母親のルクナも兄のバルトラも心配しておるじゃろう。

 頭が痛いのは嫁のシンシアじゃが、あれにはサンタナリアは発見したが、商売でも覚えさせる方がいいと考え、商家に預けたと話すしかあるまい。

 

 ……再び命を狙わんとも限らんからな。


 だが、幼い姪を置き去りにするという所業を、決して許す気はない。

 あれの娘のナリスティアには、本当に援助はしない。中位・技術を授かったアルシスにも家を継がす気はなくなった。

 我が家の跡取りは、次男カーレイルの所に産まれたエリザを含め、全ての孫が18歳になった時点で、最も優秀な者に継がせると断言する。


 ……3歳のサンタナリアが、祖父の金を当てにせず懸命に頑張っているのに、将来どうなるか分からない中位職のアルシスを、特別扱いする必要はない。


 一番の気掛かりは、ホッパー商会が預かっているアロー公爵の孫・・・いや、養子に入ったので公爵の息子アンタレス君だ。

 これからサンタナリアは、嫌でもアロー公爵家の問題に巻き込まれるだろう。

 あの正義感と責任感の強い孫が、黙ってやられるとは思えんが・・・ふ~っ。




 ◇◇ トレジャーハンター協会ゲートル チーフ ◇◇


 おいおいおい、どうすんだよこれ、いや、この幼女。

 昨日魔術師資格を取ったばかりなのに、今日はほぼ単独で巨大トカゲを討伐してきたじゃないかー。

 あり得ない。

 あり得ないだろうー! 


【最速踏破者】が誇らし気に持って帰った巨大トカゲを見た時は、やはり新ロードには上位種の地底生物がいたんだと、己の予想が大当たりしたことを喜んだのに、まさかの単独? 他の者は手も足も出せなかった?


 なのに、あの巨大トカゲを、大勢のハンターたちに見られてしまった。

 今頃は町中で、新しいロードには金になる地底生物がいるって噂になってるはずだ。

【最速踏破者】に討伐できたんだから、俺たちだって討伐できるだろうってハンターたちが思うじゃないか。ああぁぁ~!


 勘違いするな! あんな化け物がいるロードに入ったら、お前ら死ぬぞ!

 ないないない。サブチーフの話しじゃ、サブチーフと魔術師のファーズさんまで加勢したけどダメで、撤退しよとしてたんだぞ!


 サンタさーん、何やってくれてんの? 俺、泣いちゃうよ。

 いや、悪い。ハンターが地底生物を討伐するのは当たり前だった。

 よくやったと褒めるのが、チーフである俺の仕事だ。

 だけどさぁ、誰も幼児が倒したなんて信じないぞ。そうだろう?

 3歳だぞ? 女の子だぞ? ああぁぁ~!


 もしも真実が知られたら、家が伯爵家とか子爵家とかの息子がリーダーをやってる金級や銀級パーティーが、絶対に争奪戦をする。


 いや待て、その前に本部に連絡したら、本部が囲い込むんじゃないか?

 そして、ゲートルの町のゲートじゃなく、もっと大きなゲートがある町に連れていかれて、無理矢理に働かされる可能性もある。

 

 違う、違う、これはもう、バックに公爵とか侯爵がつくレベルだ。

 こんなちっちゃな幼児が、高位貴族のお抱えにされる未来の方が強い。

 ダメだ。そんなことになったら、ファイト子爵に会わせる顔がない。

 いっそのこと、王宮に・・・は~っ、いかん、チーフの俺がパニクってる場合じゃない。


 よし、落ち着け。サンタさんは男の子、サンタさんは仮メンバー、うんうん、いいぞぉ、サンタさんは3日に1回だけ、サンタさんは魔術師じゃない! 

 サンタさんが地底生物を倒すのはピンチになった時だけ・・・いや、いっそ連れて行かなきゃ問題ないんじゃないか? 


 ああぁぁ~! ダメだ、あれは絶対にじっとしてない。目を離すと飛び出して、金を稼ごうとする。




 ◇◇ 最速踏破者リーダー カーリン ◇◇


 はあ? ファイト子爵様の孫?

 確かに顔は可愛いけど、髪の毛短いし、ズボン履いてるし、ハンターランクは銅級だぞ? なのに女の子?

 貴族令嬢なのに、家族のために家を買いたい? 

 こんな健気で親孝行な幼女なのに、家に帰ったら意地悪ババアに殺される?

 なんだと! 許すまじクソババア!  


 しばらく新ロードは調査のみ? 

 それじゃあ、サンタさんが言っていたロマンは? 深い谷に道が通じていて、巨大トカゲの墓場には魔核がって話はどうなるんだよ。

 えっ? 魔術師のファーズさんが魔法を習いながら魔法陣を教える? だから1週間はファーズさんも潜れない? 


 いや、確かにブラックワームだけでも大儲けだったよ。

 巨大トカゲの胴体は、信じられない高値で売れそうだから1か月は働かなくても大丈夫だけど・・・


 仕方ない。サンタさん(天使)に【最速踏破者】の正式メンバーになってもらうためにも、今は我慢だ。

 あっ、忘れてた。今回の魔核はサンタさんにプレゼントするんだった。

 魔核があれば、ファーズさんみたいに魔術・・・じゃなく魔法で色々なことができる可能性がある。  

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ