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22 魔法使い降臨

 俺は銀級パーティー【最速踏破者】のサブリーダーをしているヤバノキ33歳。

 3歳の【職業選別】で専門職のトレジャーハンターを授かった変わり者だ。

 専門職の中でもトレジャーハンターは、他の職業と違い完全実力主義の厳しい仕事だが、成功すれば富も名声も得ることができる。


 ……まあ、命懸けだがな。


 専門職・トレジャーハンターなら養成所に1年間は無料で入学できるし、銀級になればミドルネームのロルツも貰えると両親は喜んだ。

 うちはゲートルの町でパン屋を細々とやっていて、ばあちゃんは70歳を超えても噴水前広場に屋台を出してパンを売っている。

 パン屋の息子がトレジャーハンター・・・なんで?って思ったが、この町はトレジャーハンターで栄えているから、別に嫌じゃなかった。


 10歳で養成学校に入学し、2年のカリキュラムを1年で卒業した。

 2年目は有料だから、金のない平民は2年目の授業料を協会に借金し、働いて返済しなきゃいけない。

 パン屋も建て替えなきゃいけないらしいから、借金なんてしてられない。

 因みにパン屋は、【一般職・料理】を授かった妹が継いでいる。


 11歳で鉄級トレジャーハンターになった俺は、15歳で銅級に昇格した。

 異例の速さだと同期の奴等に褒められたが、次の銀級になったのは30歳になってからだ。銅級と銀級の実力差は大きかった。

 それでも29歳の時、今のリーダーに誘われ一緒に【最速踏破者】というパーティーを作り銀級に昇格できた。


 まあまあ順調に大ケガもなくやってこれたから、俺としては満足だ。

 でも、同時期に銅級になったヤツが、今では金級になって自分のパーティーを作って活躍している姿を見ると、ちょっとイラっとくる。

 そいつは銀級になって直ぐ、【職業選別】で【専門職・下位・魔術師】を授かった平民2人に目を付け、魔術師学校の授業料を全額支払うという契約をして、卒業後に自分のパーティーメンバーにした。


 魔術師がトレジャーハンターとして加わった後、そいつのパーティーはあっという間に実績を上げた。

 今ではゲートルの町最強と言われる【金級パーティー・選ばれし勇者】のリーダーだ。

 魔術師がトレジャーハンターになることは稀で、【下位・魔術師】でもトレジャーハンター協会本部なら、魔術師として登録できる。


 ……まあ魔術師協会に登録できるのは、【中位・魔術師】以上だから、下位でも魔術師として活躍できるのはハンター協会と軍くらいだ。


 うちのパーティーにも魔術師が居たらと何度も思ったが、【選ばれし勇者】のやった魔術師引き抜きを真似て、他の銀級・金級パーティーが先に手をまわし始めた。しかも好条件高待遇でだ。

 そもそも金級パーティーを率いているような奴は、全員が貴族の出身だ。

 俺の同期だった奴も伯爵家の3男で、実家の援助で魔術師を引き抜いた。


 仕方ないので、【最速踏破者】が魔術具や新しいロードを発見した時は、依頼料を払って本部から魔術師を派遣してもらう。

 今回の新ロード発見も、高額の依頼料を払って本部から中位・魔術師を呼んでもらった。

 今回の新しいロードには、きっとお宝があると期待しての依頼だった。



 やって来た魔術師は、教官もしているベテラン魔術師のファーズさんだった。ファーズさんは炎の攻撃ができることでも有名だ。

 それだけチーフも協会も、今回のロード発見に期待してくれてるってことだ。

 あの巨大トカゲと再び遭遇することを考えると、魔術師は絶対に必要だ。


 おまけに、信じられない幸運が降って来て、ファイト子爵様とホッパー商会がパトロンに名乗り出てくれた。

 こんな幸運が続くなんて、逆に不安になるよなってリーダーが言うから、俺も不安になったが口には出さなかった。


 そしてパトロンとの顔合わせで、俺たちは魔法使いだという幼児を紹介された。

 パトロンには金銭面や防具等を期待していたんだが、信じられないことに今回の支援は魔法使いの幼児だと真顔で言われた。


 幼児の名前はサンタさん。


 ……はあ? 何の冗談だ? えっ、一緒に新ロードへ行く?

 ……3歳なのに銅級トレジャーハンター? いや、訳が分からない。

 ……魔術師じゃなくて魔法使い? いやいや何だそれ、聞いたこともないぞ。



 そこからはもう驚きの連続だった。


 入場ゲートでは古代語が読めると発覚し、俺だけじゃなく全員が驚いた。

 古代語は、高位職の学者や賢人クラスが学ぶ学問だ。古代遺跡攻略に必要な知識なのに、トレジャーハンターには学ぶ機会さえない。

 古代文字が読める者に協力して欲しいと、協会は国に何度も要請している。

 だから、こんな逸材、絶対に他のパーティーには渡したくない。


 天才の名前はサンタさん。


 サンタさんの隣には、常に超古代文明紀の魔法使いが居るらしく、妙な知識や大人顔負けの話しも、その師匠の影響のようだった。

 まさか、地底生物の気配を察知したり、地底生物を地上生物かもしれないなんて考え方をするとは思わなかったが、サンタさんが話すと、本当にそうかもと思えてしまうから不思議だ。


 戦士の名前はサンタさん。


 あの巨大トカゲを見ても逃げることなく、サブチーフに鞄の素材にしたいと言う余裕?まであったらしい。

 戦闘は厳しく、サブチーフと魔術師ファーズさんも応援に入ったが、もう逃げるしかないと判断仕掛けた時、サンタさんが・・・信じられない魔法の技を使って、僅か1分で巨大トカゲを倒してしまった。


 天才戦士の名前は魔法使いサンタさん。


 その鮮やかで華麗な戦闘シーンは、俺の脳裏に一生刻まれると思う。

 あれは、神の御業か奇跡の技か・・・魔法使いは魔術師よりも凄かった。


 魔法使いサンタさんは、巨大トカゲを倒した直後、唖然、呆然、何が起ったんだー!って、声も出せなかった俺たちに、可愛い声で「リーダー、尻尾もらっていい?」と訊いた。

 満面の笑顔で、きっちり分け前を主張する姿は、絶対に幼児とは思えない。

 

 銅級・魔法使い・サンタさん。


 この瞬間から、俺たち【最速踏破者】は、この地に降臨した天才魔法使いの仲間になった。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

次話から新章スタートします。

ストックがなくなったので、次の章から隔日更新になります。

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