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21 怒濤のデビュー戦(5)

 なんだろう、この振動と音は?

 何か大きなモノが、近付いてきてる感じ?


「みんな下がれ、これは、あの巨大トカゲだと思う。サンタさんたちは急いで攻撃範囲から外れてくれ!」


 リーダーのカーリンさんが、怖い顔を更に怖くして指示を出す。

 場は一気に緊張感に包まれ、お爺様とホッパーさん、ポーターさんは急いで後方に下がっていく。

 リーダーのカーリンさんは剣を抜き、サバンヤさんが槍を構える。

 私はサブチーフのがっしりした腕に抱っこされたまま、【最速踏破者】の皆より少しだけ後方に下がる。


 ドシンドシンと音が響いて、振動がサブチーフの腕からでも伝わってくる。

 魔術師のファーズさんは魔核付きの杖を高く上げ、辺りを明るく照らし出す。

 私も目を凝らして、音のする側道入り口を凝視する。


「うわ、黒と深緑色のトカゲだ。あれは・・・カバンの素材にピッタリだね。

 あの色・・・深い森の中では、きっと目につかないと思う」


 姿を現した巨大トカゲを見て、私は思ったことを素直に口にした。

 初めての地底生物との対戦だというのに、何故かあまり緊張してない。そんな自分にちょっと驚きだ。

 そんな私に、サブチーフが若干呆れた視線を向け、眉間に皺を寄せてるけど気にしない。

 ちゃんと小声で言ったから、皆には聞こえてないと思うもん。


「なあサンタさん、あれを見て怖くないのか?」


 視線を前に向けたままで、サブチーフが質問する。


「あれは獲物。そして私はトレジャーハンター」

「・・・・」

「言ってみたかった台詞のひとつ」


 サブチーフがガクッってなったところで、遂に戦闘が始まった。

 私は魔法使いだけど、本日は後衛担当だから勝手に攻撃はできない。


「サブチーフ、念のために降ろして」


 抱っこされたままじゃあ、いざという時に攻撃態勢がとれないから降りる。

 サブチーフは自分の後ろに居るならと私を地面に降ろし、背中に背負ってた長い鞭を手に持ち構える。



「今だ回れ!」

「尾に気を付けろ!」


 敵は思っていたよりも素早く、前衛の2人は苦戦しているみたいだ。

 横から攻撃しようとすると長い尾がビュンと飛んできて、もしも当たれば吹っ飛ばされてしまう。

 ナイフ投げが得意なサブリーダーが、巨大トカゲの喉元目掛けてビュッとナイフを投げるけど、予想以上に外皮が固くて弾かれてしまう。


 ……これは結構苦戦しそうだな。



「サンタさん、もう少し下がっていろ!」


 サブチーフは危険を感じて、私を守るために命令する。

 そして、グルガルと喉を鳴らすトカゲに向かって駆け出し、素早く鞭を振った。

 バシンと鞭はトカゲの顔に当たり、トカゲはギュィーと鳴いて顔を左右に振るけど、大きな傷がつく程の打撃にはなっていない。


『サンタや、アヤツの目を狙え。そして命中したら飛んで頭部を砕け』


『サーク爺、そんな簡単に言わないで! 飛んで頭を砕くには、アイツの頭に手を付かなきゃいけないのよ! 絶対に振り落とされるって』


 巨大トカゲから目を離さず、サーク爺と会話して打開策を考える。

 サーク爺は時々、私が3歳の幼児ってことを忘れてる時がある。

 どんな無茶振りよー!って文句を言うけど、サーク爺の言う通りにできれば、だいたいのことは解決するから余計に腹立たしい。


 文句は言ったけど目の前の現状は厳しく、ツルハシを突き立てようとした最年少のヨケンヤラさんが、尾で弾き飛ばされていく。

 リーダーの剣は所々に傷を付けてはいるけど、致命傷には程遠い。

 サブチーフの鞭も同様で、首に巻き付けたはいいけど、首を大きく振られてサブチーフの方が引き摺られてしまう。


 魔術師のファーズさんは、ロードを照らしながら片手でトカゲの顔に向かって拳大の火の玉を放つ。

 でも灯りの杖に魔力を流しているからか、放った火の玉はなかなか当たらない。

 次第に皆は少しずつ後退し、巨大トカゲから距離をとっていく。


 ……このままじゃ、本当にジリ貧だ。



『やる前から諦めるのか? 飛ぶのが無理なら、尖った石を最大出力で飛ばすしかあるまい』


「分かってるよ、分かってるけどさあ、もう!」


 緊張した戦場に、私の大きな声が、もう、もう、もぅ・・・ってエコー付きで響き渡っていく。 

 あちゃ~、声に出ちゃった。なんでこんなに反響するのよー!


 私同様に後衛で待機していた力持ちのカンパーニさんが私の声を聞き、まさか、飛び込まないよな? って驚愕の表情で私を見る。

 そして、やめとけーっ!て心の中で叫び、顔を歪めて首を左右に何度も振る。


 ……でも、ここで行かなきゃ魔法使いの名が廃る。


 私は戦闘の邪魔になるポンチョを素早く脱いで、ベストのポケットから用意しておいた石礫を2個取り出し、両手でギュッと握って駆けだした。


「サンタ、行きます! みんな下がって!」と、私は大声で指示を出す。


 私の声を聞いた皆が、ギョッとした顔で私に視線を向けるけど、巨大トカゲから視線を離すこともできない。


「サンタさんの指示に従え! 全員下がれ!」と大声で命じるのは魔術師のファーズさんだ。


「行け! ウインドシュート!」


 先の尖った拳大の固い石が、巨大トカゲの両目を目掛けて勢いよく飛んでいく。

 巨大トカゲは私の声を聞き、おあつらえ向きにこちらをギロリと睨み付けた。


 シューッ ズサッ と僅かに音がして、直後にグギー、グギャーと巨大トカゲの耳を塞ぎたくなるような悲鳴が響く。


 よし、命中した! 


 命中を確認すると直ぐに、私はサーク爺の指示に従い駆け出し、下を向いて刺さった石を振り払おうと首を振ってる巨大トカゲの、頭上目掛けてジャンプする。


「エアーアタック!」と詠唱し、ヤツの頭上に飛び上がると、狙いを定めて後ろ頭辺りに着地し、直ぐに「念破!砕けろ!」と次の詠唱をしながら、両手を後ろ頭につき意識を集中し魔力を一気に流し込む。


 ドゴッ ガキッ と変な音がして、巨大トカゲは口から大量の血を吐きながらドーン! と倒れた。


「や、やったー! リーダー、尻尾、しっぽ貰ってもいい?」


 シュタッと着地した私は、満面の笑顔でお願いする。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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