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19 怒濤のデビュー戦(3)

 古代都市の重厚な扉の前で、お爺様とホッパーさんがちょっと疲れた顔をして、王立能力学園へ入学した方がいいって勧めてくる。

 そこは確か、中位や高位の職業を授かった者が通う学校よね。

 しかも学生の殆どが高位貴族で、子爵家の娘だった母様も通った学校だ。


「う~ん、アンタレス君が行くなら、一緒に入学してもいいかな。でも、母様に家を買う方が先。だから、今日から頑張って稼ぐぞー!」


 誓いを胸に、ガッツリ稼ぐぞと私は自分に気合を入れる。


「サンタさんって、本当に3歳? なんで古代語が読めるんだ? ガッツリ稼ぐって・・・採掘もするのか?」


「当然だよリーダー。私は王都に家を買う予定だから」


「リーダー、深く考えたら負けですぜ、超古代の魔法が使えて、古代語まで読める。それって、凄いお宝を発見したくらいにラッキーじゃないですか。

 もしも古代文字が読めるって他のパーティーが知ったら、そりゃもう大騒ぎでサンタさんの争奪戦になるレベルだから」


 サブリーダーのヤバノキさんが、口を半開きにして私を見ているリーダーに言い聞かせながら、しっかりしろとお尻を叩く。


『さすがサブリーダーじゃな。腕の良いリーダーに頭の回るサブリーダーの組み合わせは悪くないぞサンタ』


『うん、そうだね。何かあったらサブリーダーに相談するよ』



 そして私たちは、古代都市の中をどんどん進んでいく。

 思っていたよりメインロードは広く、余裕で馬車が通れると思う。

 所々、古代文字が刻まれた巨大な柱があり、空間の高さも5メートルを軽く超えている。

 ロードの横には階段が現れたり、20畳くらいの空部屋が左右に幾つかある。中には何も残されてはいないけど、閉まったままの扉も見える。


 閉まったままの扉の先には、過去に凶暴な地底生物が出てきた側道があるらしく、魔術師によって閉じられたとのこと。

 古代都市が発見されて既に500年以上が過ぎているけど、あまりに広大なので、発掘・採掘されている広さは10分の1にも満たないとか。

 もっとトレジャーハンターが必要だと、サブチーフがしみじみと溢す。

 

 古代都市の中は、地中ということもあり風がないから冬でも然程寒くない。

 夏ならひんやりして快適だぞって、私を抱っこしてくれた協会のサブチーフがいろいろと教えてくれる。

 私の異質さにも慣れたのか、とてもフレンドリーに接してくれる。

 


「上層部のメインロードには魔導ランプが設置されているから、いつ潜っても明るいぞ。

 脇道に入る時は携帯用ランプを使うが、安全が確認されたメインロードは、中層部も含めて魔導ランプが等間隔に設置されている。

 まあ、これから行く未発見のロードは、当然明りなど無いがな」


「じゃあ、暗くて地底生物がよく見えないのサブチーフ?」


「そこは大丈夫だぞサンタさん。私の得意な魔術はライト系と動力系だ。

 この杖の先に取り付けられているのは魔核と呼ばれているもので、特殊な木でできている杖に魔力を流すと、魔核が明るく光り輝くんだよ。

 魔核というのは、古代都市や地底生物の体の中から発見される石で、強い力を持つものほど透明に近く、とても高価で希少なんじゃ」


 今度は魔術師のファーズさんが、ライト系の魔術や魔核について教えてくれる。

 お爺様の工房にも小さな魔核があったけど、あれって古代都市や地底生物から取れるんだ。

 そう言えば、あの薄紫色の小さな石で、馬車が買えるって言ってた気がする。


「すごーい! もしも新種の地底生物を倒したら、魔核がとれるかなぁ?」


「それは何とも・・・これまで魔核が取れた地底生物は、どれもSランクだったからな。Sランクとは、金級パーティーでも倒せるかどうかという強さだ。

 銀級パーティーなら、2つのパーティーが合同でも倒せるかどうかだな」


 今度はサブチーフが、Sランクの地底生物の強さについて教えてくれる。


「いろいろ勉強になる。ありがとう」と、私は2人に笑顔でお礼を言う。

 すると抱っこしてくれてるサブチーフが、よしよしと優しく頭を撫でる。

 ファーズさんも、早くライト魔術を教えてやろうなと言って、頭を撫でてくれた。えへへ、ちょっと照れるぜ。




『サンタや、右の横道から何か来るぞ!』


 どんどん坂を下りながら中層部に入った所で、サーク爺が何か来ると緊張した声で告げた。


「右の側道から何か来る!」と、私は皆に聞こえるよう大きな声で注意する。


 皆は「はあ?」とか「えっ?」って言いながらも一応戦闘態勢をとって、ホッパーさんやお爺様を下がらせる。

 すると10秒もしないうちに、大人くらいの大きさのミミズみたいな生物が、側道からズズズと体をくねらせ2匹現れた。


「ブラックワームだ!」とリーダーが叫んで、槍使いのサバンヤさんが前に出る。


「コイツは旨いんだ。絶対に持って帰ろう」


 緊張感漂う中、サブリーダーが嬉しそうに言うと、他のメンバーも「オォーッ!」ってサブリーダーに応えた。


「食べるの? アレを?」


「ああ、あれは本当に旨いんだ。【最速踏破者】が売るなら喜んで協会でも買い取るぞ。焼いても煮ても旨い。逃がすなよ!」


 なんだか皆、瞳をギラギラ輝かせ、私を抱っこしているサブチーフの腕にも力が入る。


『サンタや、お主が先日行った食堂で食べていた煮込み料理は、メニュー表に3食限定ブラックワームのうま煮と書いてあったぞ。

 他のメニューの3倍の値段じゃったから、よく覚えていたんじゃ』


「ええぇーっ! あの美味しかった煮込みが、ブラックワームなの!」


 心の中で叫んだはずなのに、声に出ていたみたいで皆に爆笑された。

 ブラックワームは滅多と現れない希少な食材で、強くもないからハンターたちに大人気らしい。


 私も倒すー!って思ったのに、サバンヤさんがサクッと槍で退治していた。


 ……うう、残念。次に出てきたら絶対に倒す!


 退治したブラックワームは、所有権を表す札を貼って、【最速踏破者】が借りている空き部屋に入れておく。


 さあ、いよいよ新しいロードへとつながる側道に突入だ。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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