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17 怒濤のデビュー戦(1)

 結局私は、魔術師ではなく魔法が使える銅級トレジャーハンターとして、正式に登録された。

 チーフが機転を利かせて、魔術師登録させろとごねるファーズさんを黙らせる裏技として、サンタさんは魔術師ではなく魔法使いですからと、強引に押し切ってくれた。


 私の攻撃に驚いて階段まで逃げ出したチーフだけど、実は職業が【高位・鑑定士】という、国内でも5本の指に入る優秀な鑑定士で、トレジャーハンター協会の職員の中でも、かなり権限のある偉い人だった。

 だから【中位・魔術師】のファーズさんでも、チーフの決定を渋々受け入れるしかなかった。


 ……まあ、当事者である私が、魔術師じゃなくてトレジャーハンターになることを望んでいたからね。


 ただしファーズ魔術師には、暫く私の魔法の練習風景を見せたり、可能なら教えるという条件を付けられた。

 少し前からアンタレス君に魔法を教えているし、別に手間じゃないから了承したけど、私とアンタレス君に魔法陣を教えることを、私からの条件とした。


「ここは当然、持ちつ持たれつでしょう?」って微笑んだら、何故か皆にドン引きされた。


「サンタさん、魔法で幼児に変装してるんでしょう?」とチーフに言われ、元金級ハンターだったマッチョなサブチーフには「末恐ろしい・・・」と恐れられた。

 お爺様にまで「いったい誰に似たんじゃ?」って言われる始末。


 ……全くもって納得できない。ちょっとサーク爺、大笑いしないで!




 翌日午前、私とお爺様とホッパーさんは、トレジャーハンター協会に行って銀級パーティー【最速踏破者】のメンバーと顔合わせをした。

【最速踏破者】の皆さんは、攻撃魔法を使える優秀な魔法使いと、ホッパー商会の商会長とファイト子爵が同行すると聞いていたようで、大歓迎してくれた。


 ホッパーさんとお爺様が同行するということは、今回の新ロード採掘にパトロンができたことと同義らしい。

 パトロンは、武器や装備の支援をしたり金銭的な援助をすることで、採掘した遺物を優先的に買い取る権利を得ることができるんだって。私は知らなかったけど。


「今回、私たちが行う最大の援助は、戦闘可能な魔法使いを仮メンバーとして同行させることです。

 しかしその魔法使いは、初めて古代遺跡に潜るので、緊急事態や生命の危機が迫ったと判断された場合にのみ、魔法を使って地底生物を攻撃します」


「ちょっと待ってくれホッパー商会さん、戦闘可能な魔術師じゃなくて、魔法使いと聞こえたんだが、聞き間違いだろうか?」


 リーダーのカーリンさんが、首を捻りながらホッパーさんとサブチーフに視線を向け質問する。

 カーリンさん38歳は、茶髪の超短髪で、茶色の右目の横には大きなケガの痕がある。ぱっと見だと幼児は怖くて泣くと思う。


 私はがっしりと引き締まった体躯を見て、強そうだなとニヤニヤしてしまう。

 他のメンバーもみんなガチ筋肉自慢ばかりで、これならずっと抱っこしてもらっても大丈夫だと安心した。

 幼児が大人と同じ歩幅や速度で歩けるはずがないし、視界を確保するためにも抱っこは絶対に必要。うん、腕が私の胴体くらいあるから大丈夫。


「ああ、魔術師じゃなくて魔法使いだ。

 岩を砕くのにも魔法陣を使わないという驚きの技だ。口で言っても信じられんだろうから、地下の魔術師試験場に行ってみろ。

 昨日、魔法を使って岩を砕き、的を吹き飛ばした残骸が残ってる」


 腕を組んでニヤニヤ笑っているサブチーフは、いきなり私を紹介するのではなく、魔法の腕を納得させるために地下へ向かわせた。


「私が魔法使いだって言ったら、きっと驚くというより怒るよね?」


「まあ当然じゃろうなサンタ。でも、わしの自慢の孫は、そんなことくらい笑って捻じ伏せるじゃろう?」


「お爺様、私は可愛い幼児です。体も小さいし体力もない。捻じ伏せるだなんて、どんな剛腕ハンターなのよ! 人聞きの悪いことを言わないで」


 私はプンプン怒ってお爺様に文句を言うけど、ホッパーさんも魔術師のファーズさんも、何故か笑ってお爺様に同意している。・・・なんでよー!


『サンタや、間違っても火魔法は使うでないぞ。もしも狭いロードや小部屋だと酸素がなくなり息ができなくなるぞ』


『うん、分かってる。地下生物、いや地底生物だっけ? とにかく危険なヤツに襲われてピンチになっても、風魔法で頑張るよ。

 早く他の魔法も覚えたいなぁ。それと、早く大きくなりたい。幼児だと武器を使うことができないもん』



 いつものように一人百面相をしていると、【最速踏破者】のメンバー6人が戻ってきた。

 1人はケガをしているから、今日は古代都市には潜れないらしい。


「サブチーフ、あれ、あの大きな岩を魔法陣無しでどうやって砕いたんだ?」


 リーダーのカーリンさんは、サブチーフに眉を寄せながら訊く。

 カーリンさんは、サブチーフが金級パーティー【王の宝剣】のリーダーをしていた時のパーティーメンバーで、今でも仲良しらしい。


「まあ、それはいずれ分かる。紹介しよう、協会の魔術師試験に見事合格し、魔法で大岩と的を撃破したサンタさんだ」


 サブチーフは、お爺様の側で出番を待っていた私を紹介してくれる。

 当然の如く「はあ?」とか「ええぇーっ?」と皆さんは驚き、困惑した表情でサブチーフを見る。


「はじめまして、サンタ3歳です。6月には4歳になります。

 私の職業は【魔術師】ではなく【過去・輪廻】で、私の魔法の技術は、超古代文明紀に生きていた天才魔法使いから伝授され、それを具現化したものです」


 私はスラスラと自己紹介し、にっこりと満面の笑顔を向ける。


「職業【過去】? 伝授?」と、リーダーのカーリンさんが首を捻る。

「いつの古代文明紀だって?」と、サブリーダーのヤバノキさんも首を捻る。

「ぐ、具現化?」と、最年少のヨケンヤラさん18歳も同じように首を捻る。


 ……もしかして皆さん、脳筋?

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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