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146 王宮からの知らせ

 結局、国務大臣と軍の指揮官は、大賢者様に対する不敬とトレジャーハンター協会に対する職権乱用、そして財務大臣の承認を得ず、勝手に軍の用品購入を実行しようとした違反行為により、王宮監察官に背任罪で捕縛された。

 

 真っ黒の魔核は、どうしてもと頼む王様に売ることになった。

 鑑定士のメーナイ教授とハンター協会鑑定士のボルロさんが、発見された国内最大級の大きさであり、ドラゴン種の魔核であることを考慮し、適正価格を白金貨10枚と鑑定してくれたので、生活費のために手放した。


 もちろん、魔核代金に悪人退治協力料として白金貨2枚を追加してねと、こっそり王様にお願いした。

 なんでバレた?って顔をしたので、私はにっこり笑って「今後、政治的なごたごたに巻き込んだら、ガリア教会大学に籍を移しますね」と王様を脅すことも忘れなかったよ。


「私、まだ8歳なんだよ? 大賢者だからって脅されたり罵倒されても平気って思ってる? 王太子様のせいで、()()()()高位貴族や大臣がすっかり嫌いになってしまったわ。

 だから大賢者だと名乗っても、高位貴族や国の要人とは接触しないし、パーティーの招待や訪問もお断り。私を政治的に利用したんだから仕方ないよね」


 王太子には、もっと分かり易く政治に利用されることを拒絶しておいた。

 凄くショックを受けましたって顔で私を見たから、「アースドラゴン素材で空間拡張ボックスが作れたら、軍の運搬用に売ってあげるね」と発明家としてお得な情報を教えてあげた。


 ダメ押しで王様と王太子に、アースドラゴン素材で空間魔法の道が開けたら、研究室にご招待してあげるねと餌をぶら下げておいた。

 魔術具大好きな王様は、国境がきな臭いから早目に頼むと言いながら、目の前のアースドラゴンをキラキラした瞳で見詰め、どのくらい収納できるだろうかと想像していた。




 王宮を出た私たちは、その足でトレジャーハンター協会王都支部へと向かった。

 学園の教授や商業連合の会長まで付いてきて、解体の様子を見学し素材を無駄にしないよう切り分けの指示を出すらしい。貴重な素材を切り刻まれては大変だし、強度や柔軟性も一緒に検証したいみたい。

 ハンター協会のトップ2人も、解体前にアースドラゴンの実物大の絵を急いで描かせて、協会本部に飾ると張り切っている。




 冬期休暇の予定はすっかり狂っちゃったけど、大トカゲと大蛇の素材は確保できたから、翌日ホッパー商会に持ち込んで皮のなめしを頼んだ。

 革にできたら、商業連合で売り出す規格の大きさのバッグやリュックの作製もホッパー商会に頼む。

 その後は、ガリア教会王都支部に寄って、頼んであったカラ魔核を購入する。


 教会が後ろ暗い貴族にカラ魔核の喜捨を頼んだら、たくさん集まったらしい。

 魔力学会に行かなかった貴族は、カラ魔核に魔力充填できることを知らないし、現金じゃなくてゴミとして捨てていたカラ魔核の喜捨でいいならと、ほくほく顔で差し出してくれたんだって。


「大賢者様、先日は教会用に空間拡張バッグを喜捨頂きましたので、今回のカラ魔核の料金は必要ありません。

 今後も大賢者様には、無料で提供いたしますので、本部用に4センチのカラ魔核で起動できる空間拡張バッグかリュックをお願いできるでしょうか?」


「勿論よ。民のために奉仕されている教会の皆さまのお役に立てるよう、最優先で作ってお届けするわ」


 私は2センチから5センチのカラ魔核30個をタダで貰い、にっこにこで約束した。


 もしも本当に戦争が始まったら、教会は避難者やケガ人の救援をしてくれる。勿論、教会は特定の国に肩入れすることなんてない。

 ただ、家を失くした者やケガ人のために炊き出しをしたり、親を亡くした子供たちを保護してくれるだけだ。

 停戦を持ち掛けることもあるようだけど、ザルツ帝国の帝王はガリア教の信者ではないらしい。



 学園が始まったら、研究室でせっせと空間拡張バッグやリュックを作る。

 発明学科と鑑定士学部に利益を分けるから、堂々と講師の仕事として作成できる。作り方を教えるのも私の仕事だから、見られても問題ない。

 そもそも、魔力属性の【空間】を持っていないと作れない。




 冬期休暇が終わって学園長と協議した結果、私が大賢者であると名乗るのは明後日にすることに決まった。

 明日は休み明けの試験で、明後日は学部対抗競技会の説明のため全校集会がある。その時に紹介されることになった。

 魔術師学部のエバル教授が、高位・魔術師と同じデザインだけど色違いの大賢者用(魔法使い用)の深紅のローブをサプライズでくれた。


 ……まさかこんなローブを前々から準備していたなんて、びっくりだけど凄く嬉しい。カッコイイから着ることにしよう。


「サンタさん、凄く似合うよ。これから魔法使いになったら深紅のローブになるんだね。僕も早くローブを貰えるよう頑張ろう」


 アレス君がにこにこしながら似合うよと褒めてくれる。

 兄さまも似合うと褒めてくれたけど、とうとう大賢者様の兄と呼ばれ、身分が侯爵の家族になってしまうと頭を抱えていた。


 予定より1年早いけど、来年度(9月)から正式に魔法学科が新設されることになった。

 私は魔法学科の教授となり、アレス君は上位・魔術師に合格したら、学生をしながら魔法学科の准教授に昇任するらしい。

 私もアレス君も、ちゃんと自分の勉強がしたいから、服装は制服のままがいいと押し切った。



 いよいよ今日は学生集会だ。

 これまでは異質な目で見られていたけど、今後は違う視線を向けられるんだろうか? 怖がられたりしないよね?


 学園長の執務室で挨拶の内容を確認していたら、火急の用件だと言って、王宮騎士副団長さんが私に面会を求めて駆け込んできた。


「大変ですサンタさん。いえ、大賢者様、王様が、王様が呪符と思われるモノによって倒れられました。

 アロー公爵家で呪符について学んだ部下の話では、王様の専用馬車に呪符が仕掛けられていたようで、王様は突然意識を失われ、呼びかけても反応がありません!」


「えっ? 馬車? 馬車に呪符があったんですか? 学園長、アレス君を呼んでください。一緒に王宮へ向かいます。大賢者の発表は後日でお願いします」 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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