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13 サンタさん、魔法を披露する(2)

 翌朝、私はちょっと早起きをして侍女頭さんからハサミを借りた。

 そしてジョキジョキと、自分の濃紺に金色が混じる髪の毛を切った。


 ……あたしは有言実行の女、いや有言実行の幼女なのよ。はっはっは。


 あとはお爺様にズボンと上着を買ってもらわねば。

 今日から私はサンタさん。サンタナリアという名は封印よ。


 で、朝食のためにダイニングに行ったら、お爺様は「なんてことを~!」とショックを受け、ホッパーさんは顔を手で覆った。

 アンタレス君は短い髪も可愛いよって、今朝も貴公子スマイルで笑ってくれる。

 私の髪を見た侍女頭さんが、ざんばら髪を食後に切り揃えてくれた。

 肩より少し短くなったけど、野生児がちょっとまともになった。


 これでズボンを履いて青や麻色の服を着たら、きっと男の子に見えると思う。

 ホッパーさんの店にも、トレジャーハンター用の服や装備が揃っているけど、幼児用の服はない。

 だから半泣きしているお爺様に、中古服屋に連れて行ってとお願いした。


「貴族令嬢が短髪・・・何故か中古服・・・そんなにお爺ちゃんの家では貧乏してたのか? 新品の可愛い花柄の服を買おう。遠慮するな」 


「ううん、可愛い服は要らないよ。だって毎日荒野で魔法の練習だし、もう直ぐ古代都市に潜るんだよ? 可愛い服じゃ汚れちゃうし動きが悪いもん」


 私の要望を渋々聞いてくれたお爺様は、町で一番大きな子供服店で中古服や新しい服をいろいろ買ってくれた。

 必要ないと言ったのに、何故かフリフリした高級そうな可愛いワンピースも交じっていた。

 

「あ、ありがとうお爺様。たくさん買ってくれて嬉しいよ。わーい」


 ……ああ、うん、ここは笑顔で喜ぶ場面だよね。ちょっと棒読みになったけど、とっても感謝してるよ。




 お昼ご飯は外食で、高級そうなレストランじゃなくて、トレジャーハンターに人気の定食屋さんに行った。

 お爺様はガッカリしてたけど、情報収集は大事だもん。

 子供だけで来るのは難しいけど、ホッパーさんもお爺様も、トレジャーハンターにとって取引先でありお得意様だから、絡まれることはない。


「銀級の【最速踏破者】の奴等、昨日新しい横穴を中層部で発見したらしい。

 奥がどこまで続いてるのかは不明らしいが、久し振りのロード発見の可能性が高いってさ」


「ということは、発見されたロードに入れるのは、銀級パーティーの【最速踏破者】が粗方採掘した後になるな。奴等が許可を出したら、通行料を払えば採掘できるんだよな」


「ああ、10日もすれば潜れるかもしれないぞ。上層部も中層部も、手前はもう掘り尽くしたし、新しいロードでも見付からないと稼げないからな」


 トレジャーハンターさんたちが、わいわい騒ぎながら情報共有している。

 隣の席は10人くらいが座れる大テーブルで、情報提供者は仲間からお酒を奢ってもらってる。


 ……ほうほう、新しいロードが見付かった可能性が高いのね。それなら皆さん10日もすれば中層部に向かうわよね。よし、上層部はガラガラだ。


「サンタや、なんか悪そうな顔をして笑っとるぞ」


 あらやだ、顔に出てた? お爺様ったら表情を読むのが上手なんだから。


『そうじゃなかろう。サンタがあまりにも分かり易いんじゃ。もう少し無表情を心掛けろ。アンタレスを見よ。少々のことでは顔に出さんぞ』


『え~っ、無理だよう。こうやってサーク爺と話している時だって百面相してるもん』



「良い情報を得ましたなホッパー殿。協会から新しい情報なり、新種の遺物などが採掘されたら、ぜひ知らせて欲しいものです。サンタの顔も見たいしな」


 どうやらお爺様にとっても有益な情報だったらしく、ホッパーさんに情報提供を頼んでいる。

 月に1度はゲートルの町に来るみたいだから、私も寂しくなくて嬉しい。




 さあさあ、やって来ましたトレジャーハンター協会。わくわく。

 お爺様も協会の会員だったみたいで、ポッパーさんとお爺様の顔を見た受付のお兄さんが、私たちを会員専用部屋へと案内してくれる。


「トレジャーハンター協会の会員にもランクがあって、出資金の多い者から順にゴールド会員、シルバー会員、ブロンズ会員じゃ。

 ホッパー商会はゴールドで、うちはシルバーだぞサンタ」


 そう言いながら、お爺様が会員証を見せてくれる。

 カードの色もシルバーで、一目で会員ランクが分かるようになっている。


「でも、うちの会員証を使えるのはお爺様だけだよね?」

「そうじゃな。もう少し出資すれば2枚貰えるが、幼児では無理だぞ」


 協会の職員さんがお茶とジュースを持って来てくれたので、私とアンタレス君は遠慮なく飲みながら、トレジャーハンター入門という冊子を見る。



 5分くらい経過した頃、ドアをノックして協会の偉い人?が入ってきた。


「お2人がお揃いとは珍しいですね。本日は何か質問があるとか?」


 年齢は40歳くらいかな、事務の人というよりハンターさんって感じのマッチョ体型の人が、私とアンタレス君をじろじろと不思議そうに見ながら質問する。


「ああ、実はなサブチーフ、この子が将来トレジャーハンター・・・じゃなくて、魔術師として古代都市に潜りたいというので、トレジャーハンター協会の魔術師試験のレベルと、実際に行われる実技なんかを訊こうと思ってな」


「えっ、この小さな幼女?・・・いや、男児がですかファイト子爵?

 国の魔術師認定試験ではなく、()()()試験を受けるおつもりですか? はあ?」


 なるほど、こんな幼児が協会に来ること自体ないから、もしかして協会の魔術師試験を舐めてます?って思われちゃうんだ。

 軽く私を睨んできたけど、私は余裕で笑顔をお返しするわ。


「できれば試験会場の見学とか、魔術レベルが知りたいです。それと、筆記試験もありますか?」


「ぼくぅ、トレジャーハンター協会は遊びに来る所じゃないし、古代都市に潜りたいなんて我儘はよくないな」


 ちょっと声が低くなって、マッチョなサブチーフは幼児の私を威圧する。


 ……ほっほっほ、威圧くらいじゃビビらないわよ。クソババアの方が怖いし。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

先日、ローファンタジーの日間ランキングを覗いてみたら、なんと51位になってました。

なんて有難いことでしょう。感謝感謝でございます(涙)

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