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129 サンタさん、叔父家族を招く

 次の休日、私はカーレイル叔父さん家族を昼食に招いた。

 叔父家族は一般地区の北側に住んでいて、借りているアパートが老朽化で建て替えるから、今年中に新居を決めなきゃいけないそうだ。


「はじめましてだねサンタナリア。いやご当主様だから、ファイトアロ男爵様と呼ぶべきだね。

 姉さんから中流地区に家を買ったと聞いた時は、とても信じられなかったけど、本当に立派な家を買ったんだね」


 叔父さんはそう言って、庭先で家を眺めながら羨ましいなぁって笑った。

 エイミー叔母さんも、従弟で高位職を授かったヒアル君7歳も、一般職・料理を授かった従妹のエリザちゃん4歳も、素敵なお家ねって言いながら笑顔だ。


 交流があった母様や兄さまは、私が男爵になったことやトレジャーハンターをしていること、ガリア教会大学に勉強しに行ったことくらいしか伝えていなかった。

 叔父家族が信用できないからじゃなく、私やアレス君の面倒事に巻き込まないようにするため、多くの情報を教えていなかったんだよね。


 家の中をさらりと案内して、お土産に貰ったミートパイもテーブルに並べたところで、アレス君を同居人であり学友だと紹介した。

 当然、アローという名を聞いて叔父夫妻は絶句したけど、アレス君は自分のことをサンタさんの弟子だと自己紹介し、これからもよろしくと笑顔で握手を求めていた。



「実は先日、アレス君と一緒に【中位・魔術師】の資格を取り、アロー公爵様から子爵に陞爵されました」


 食後のデザートが運ばれてきたので、私は今日お招きした目的を話していく。


「なんだって!」と叔父が驚いて、本当に?って問う視線を母様に向ける。


「ええ、そうなの。ほら、今王宮で話題になっている魔術師協会幹部の不祥事と子供の天才魔術師の話・・・あれ、アレス君とサンタなの」


 ちょっと困った顔をした母様が、最近話題の人物が私たちなのだと教える。

 叔父は王宮警備隊で小隊長として働いているから、王宮内の噂話も耳に入る。


 ……王子が凄い噂になってるよって言ってたけど、本当だったんだ・・・


「子爵・・・8歳で子爵とは・・・父さんは知ってるのか?」


 叔父さんはこれ以上驚けないって顔をして、母様に質問する。


「ええ、先日ゲートルの町でサンタが直接会って教えたわ。でもねぇ、全ては教えられなかったみたい」


 母様はフーゥと息を吐き、困った顔をする。


「叔父様、今日お招きしたのは、お願いしたいことがあったからなんです。

 私の職業は高位職の【過去・輪廻】で、仕事内容は【大賢者】であるとガリア教会本部で認定されたの。

 それでね、王様が私をこの国に留めるため、上流地区の離宮をくれたんだよね。離宮だよ?・・・どうすりゃいいのよーって感じ。


 でも、ご覧の通り我が家には、執事も警備隊長も侍女もいないから、大至急で探さなきゃいけなくて、でも、信頼できる人の心当たりもない。

 それで、心からのお願いなんだけど、離宮の警備隊長を引き受けてもらえないかなぁ?

 叔母様には、是非事務職もこなす侍女として働いて欲しいの」


 遠回しに言うより、最初からぶっちゃけた方がいいと思った私は、ちょっとだけ丁寧な言い方でお願いした。


「だ、大賢者?・・・離宮で警備隊長?」って、叔父は再び固まった。


「離宮? 私が離宮で侍女を?」って、叔母は立ち上がって呆然としているけど、子爵家の長女として育ち、王立高学園も卒業しているからきっと大丈夫。


「あっゴメン、離宮での私の身分は、王様に叙爵された名誉侯爵なの。だから、2人が務めるのは侯爵家になるかな」


 叔父夫妻が再起動するまで、私は可愛い従弟妹たちに、葡萄を空中で回す魔法を披露することにした。アレス君は、水玉を作って回している。



 今離宮で働いている者は継続して働いてくれるから、屋敷の警備は2人でやるとか、叔母は1人いる事務職員の手伝いや、奥向きの手配をして欲しいのだと、母様が分かり易く説明してくれる。

 正直、野生児のようにトレジャーハンターをしていた私じゃ、屋敷の管理なんてできないし、何が必要かも分からないもんね。

 母様は仕事を続けたいみたいだから、留守を守る執事と侍女が必要なのよ。


「それとね、この屋敷が空くから4人で暮らしていいよ。家賃は今の所と同じでいいから。あっ、大事なことを忘れてた。お給金は叔父様が金貨4枚で、叔母様は金貨2枚でいいかなぁ?」


 そう言ったら叔母様がダーッと涙を流して、「まさかの一戸建て。まさかの侯爵家勤務。ああ、これって夢じゃないわよね?」って、自分の頬をつねりながら母様を見て確認する。


「いや、金貨4枚は多い・・・」


「ありがとうございます。喜んで働かせていただきます。お給金もそれでいいです。あぁ、これでヒアルに家庭教師をつけられるわ」


 叔父の言葉を遮って、叔母はキラキラの瞳でありがとうと私の手を握ってお礼を言った。

 どうやら、私たちが思っていたより生活が苦しかったみたい。

 高位職を授かったヒアル君の家庭教師は、シロクマッテ先生を紹介しよう。執事の仕事を快く受けてくれたから、時間がある時に教えてくれると思う。


「それと大事なことを言っておくね。

 我が家には、度々王子様が遊びに来るし、王女様も時々来るの。

 一緒にご飯も食べるし、離宮に住んだら泊まったりもすると思う。

 王立能力学園でも、私たち3人と王子様はいつも一緒だから。しかも兄さまは、エルドラ王子の側近候補なんだよ」


 再び固まった叔父夫婦だけど、私と兄さまとアレス君が王立能力学園に合格したことと、兄さまが側近候補になったことを凄く喜んでくれた。

 興奮していた2人は、メリーさんが淹れてくれたお茶を飲んで落ち着いた。


 メリーさんは、もちろん離宮についてくるよ。メリーさんは私専属のメイド兼、料理長の手伝いをしてくれることになっている。

 現在アロー公爵家から派遣されている護衛兼御者のポートさんは、離宮に移った時から私の専属護衛として、我が家に仕えてくれることになっている。



 叔父家族と楽しく過ごした翌日の昼休み、学食に向かう途中で女子学生数人に取り囲まれた。


「貴女、兄が側近候補だからと、王子様やアンタレス様に擦り寄らないで!」 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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