125 サンタさん、ハンター生活を楽しむ
1か月間の休みの前半は、主に魔術具採掘をして、2つの未発見魔術具と、1つの簡易空間魔術具、そして金属加工に必要な魔術具を2つ発見できた。
まああれだ・・・シリスが魔術具の魔核から放出される微弱な魔力を感知して、ここ掘れって指示を出してくれたからこそ採掘できたんだけど。
今回採掘した魔術具は、全部私が所有しても構わないと最速踏破者の全員が許可してくれたので、トレジャーハンター協会に採掘登録はしたけど売らず、競売にも出品しないで学園に持ち込むことにした。
生活日用品的な魔術具は、最速踏破者がハンター協会に売った。
休みの後半にはお爺様もやって来て、今のファイト子爵家の様子を聞いたり、子爵になったことを報告したりした。
従姉のナリスティア12歳は、先日王立高学院の芸術学部に合格し、クソババア2号と一緒に寮に入るための準備を王都でしているらしい。
お爺様はナリスティアには一切の援助をしていないので、寮生活になったとか。
オバサンは、伯父アイガーから私が準男爵になったことは聞いているけど、その後男爵になったことは聞いていないようだ。
伯父は私が本当に子爵になれるとは思っていないらしいけど、今後私たちに関わったら長男のアルシスにも援助しないと、お爺様は長男夫婦を脅しているそうだ。
オバサンは、長男のアルシス10歳が2年後に王立能力学園に合格したら、自分も中流地区に屋敷を借りて生活すると、今から張り切っているんだとか。
私たち親子は、一般地区の借家で貧乏生活をしていると思い込んでいるらしく、頼られても絶対に相手をしないとお爺様に宣言したんだって。
「じゃからわしも言ってやったわ。お前たち親子も、決してルクナ親子に迷惑を掛けたり頼ったりするなとな」
お爺様は私の8歳の誕生会にやって来た時、私と兄さまが王子や王女の友人になっていたと知り、今度こそ真摯に私たち親子を守ろうと決心したそうだ。
既に王様から名誉侯爵に叙爵されているけど、それは言わない方がいいだろうと判断し今回は報告していない。
……もしも上流地区の離宮を貰ったと知ったら、あのオバサンは図々しく押し掛けてくる気がするもん。
お爺様は自分の発明した魔術具の収入を、これまで6割子爵家に入れていたけど、1年前から3割しか入れていないそうで、その3割は子爵家の維持費で全て消費されている。
アイガー伯父さん親子は、自領の初級学校の校長としての給料と、領地経営補佐としてお爺様から貰う給料で生活しているけど、結構な高給取りらしい。
……お爺様は、次男のカーレイル叔父さんの家購入の援助をしたいみたい。今度カーレイル叔父さんに会ってみよう。
ああそうそう、チーフにはちゃんとお礼の空間拡張ウエストポーチをプレゼントしたよ。凄~く喜んでくれた。
サブチーフには、ガリア教会の調査で潜った古王国シャングラ遺跡で倒した地底生物で作った、頑丈だけどよくしなる鞭をプレゼントした。
愛用していた鞭がボロボロだったから、泣いて喜んでくれた。
ハンター生活の残り3日間、兄さまにはホッパー商会で勉強してもらって、アレス君とシリスと最速踏破者で、側道から地上へと出てみた。
7月以降、銀級・金級ともに危険すぎて誰も地上には出ていないらしい。
私たちは危険察知能力が高い光猫のシリスが居るから挑戦できたんだけど、3日間で白金貨6枚分を稼いだ。
巨大なトカゲも久々に2頭討伐したし、ブラックウルフも4頭討伐した。
1番の高額査定は、7色に輝く鱗を持つ2メートルを超える巨大魚だった。
1枚の鱗の大きさは5センチくらいあり、宝石の如く輝き、おまけに8センチの魔核まで取れた。
ゲートル支部始まって以来の高額査定だと、鑑定士でもあるチーフが興奮しながら言ってた。
私とアレス君が白金貨1枚ずつ貰って、残りの4枚は最速踏破者で分けることにした。
貰い過ぎだと皆が言うから、7色に輝く魔核は売らず、私とアレス君からエルドラ王子にプレゼントすることにした。
王都に帰る前日、特室の宿泊料金を払おうとしたら、1人金貨1枚、3人で金貨3枚でいいと言われた。
巨大魚を競売に掛けたら結構な利益になるだろうからと、半額にしてくれた。
「1人金貨1枚は安いけど、サンタさんがプレゼントしたウエストポーチは、買えば金貨5枚以上だし、サブチーフの鞭だって金貨8枚はするよ。
しかも今回、僕とサンタさんが助けたハンターは数えきれない。今では僕まで天使様と呼ばれている。貢献度も考慮した値段だよ」
アレス君は、はははと苦笑しながら当然の配慮だと言う。
「ホッパーさん曰く、もしも最速踏破者が、ブラックウルフと7色の巨大魚を競売に掛けていたら、協会の手数料を引いても白金貨10枚以上にはなったはずだって。
アレス君がプレゼントした鱗を見て、絶対に競売に参加して10枚以上ゲットするって張り切ってたよ。宝飾品として加工すれば貴族に白金貨1枚で売れるって」
どうせ誰も利用しない部屋なんだから、タダでもおかしくないとホッパーさんが怒っていたと、兄さまはちょっと不機嫌そうに付け加えた。
……鱗1枚が、白金貨1枚で売れる? それじゃあ、競売価格は1枚金貨3枚くらいの値が付くってこと? 鱗って何枚くらいあったんだろう・・・
私も鱗を2枚抜いておいたから、母様と王女様用にポッパー商会で宝飾品として加工してもらって、私と兄さまからのお土産としてプレゼントしよう。
翌朝、私はゲートル支部が預かってくれていた、イオナロードの権利収入の白金貨6枚と今回の白金貨1枚を受け取り、これで子爵らしい支度ができると安堵した。
私も兄さまも成長期だから、毎年服や靴を新調する必要があるし、新しい護衛や執事も雇わなきゃいけない。は~っ・・・
あとは、今回採掘した魔術具を学園に売ってお金を稼ごう。
王立能力学園工学部は、毎年数点ハンター協会から魔術具を買っているので、未知の魔術具は絶対に購入すると思う。
出発の時がきて、ゲートル支部のハンターたちに、直ぐに戻ってきてと泣きつかれ、最速踏破者の皆も寂しそうだった。
私も寂しいけど、また冬期休暇に戻るねと笑顔で手を振った。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
いよいよ次話から学園生活が始まります。