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117 2つの受験(2)

 6月20日、いろいろあった魔術師学校の卒業式が行われた。

 校長と副校長以外は教官が総入れ替えされており、その原因となった私たちは特別席に座っている。

 事件後アレス君は公爵家の子息、私は男爵だと周知されたので、教官も学生も誰も私たちに近付こうとしない。


 それでも今年は、6月12日に行われた【下位・魔術師】試験に全員が合格するという快挙を成し遂げ、学生たちの顔は晴れやかだ。

 あれだけ態度の悪かった上位クラスの5人の内3人は、今年から新設される【中位・魔術師】2年コース(全額自費)に進級するらしい。

 既に社会に出ている【下位・魔術師】も再入学できるので、【中位・魔術師】コース入学希望者は10人位いるそうだ。

 

 


 6月末、アロー公爵は重い腰を上げ、ツルリ子爵の爵位を剥奪し死罪に処した。

 家族の命は助ける約束で、ツルリ元子爵は2回に渡る殺人の依頼人を自供した。

 アレス君のお母さんが殺された5年前は、ヒバド伯爵とクソババア3号が依頼人で、今回はクソババア3号と息子のレイノルド、そして亡くなったヒバド伯爵の次男ナックルが依頼人だった。


 知らなかったけど、ヒバド伯爵はお亡くなりになってた。

 家を継いだのは、親や弟の悪行を知らなかった無害の長男だったけど、ナックルの罪で伯爵家は子爵家に降格され、領地は半分になった。

 王宮魔術師団所属のナックルは、公爵殺人未遂も含めて処刑されたみたい。


 ……魔術師学校のデスタート教官と、ヒバド伯爵を含む王宮魔術師団の腐敗を問題視した王様は、組織の解体を考えているとか・・・たぶん、王宮騎士団と軍に組み込まれるんだろうな。



 クソババア3号と息子のレイノルドだけど、クソババア3号は既に離縁され平民になり、息子のレイノルドは8月に学園を卒業すると同時に廃嫡され、処刑されたツルリ子爵が治めていた領地の子爵になるらしい。

 その時にクソババア3号も、一緒に屋敷を出ていくんだとか・・・


 ……あの派手好きなクソババア3号は、2度と貴族の社交界に顔は出せないとコーシヒクさんが言ってた。まあ平民だし。


 何をグズグズしているのかと思ったら、レイノルドの卒業を待っていたようで、アロー公爵家の対面を守りたかったのか、息子に情けを掛けたのか、まあ、2度も殺されかけたアレス君を思うと、あまりに軽い処罰だと思う。

 でも母様曰く、私が大賢者じゃなかったら、犯罪者から巨額の罰金を取るか、爵位を下げるだけの処罰にする可能性もあったはずと聞き、もう考えるのを止めた。

 



 7月、私たちは王立能力学園の受験申し込みをした。

 私の名前は、王様とアロー公爵の切なる希望で、アロー公爵家の子爵サンタナリア・ハーシテ・ファイトアロになっている。

 不本意だけど、一連の関係者の処罰が確定したので了承した。

 因みに、領地持ちの子爵はミドルネームがハーシルで、領地なしがハーシテだ。


 一応、王様から名誉侯爵という爵位も貰ったけど、私が大賢者として表舞台に立つまでは、子爵の名を名乗ることになる。

 名誉侯爵の名前は、サンタナリア・ギウステ・ガイアスラーだ。

 ミドルネームのギウスが侯爵で、テは領地なしを意味し、超古代語でガイアスが賢者、ラーが偉大なとか大きいを意味している。

 家名はサーク爺が考えたんだけど、他の守護霊も勧めるから決めた。


 受験日は8月3日と4日で、初日が学力試験で、2日目が実技試験だ。

 実技試験は魔術師学部・国務学部の騎士学科・鑑定士学部のみで行われる。

 実技の成績が良ければ、学力試験の点が悪くても合格することもある。

 私が受験する工学部・発明学科も、申請すれば作品を提出できるので、何か作って提出しよう。




 私とアレス君には、王立能力学園受験の前に【中位・魔術師】の試験が待っている。

 8月1日、会場は魔術師協会王都支部。

 今年の試験官の中に、魔術師協会のデモンズが入っていると、最近仲良くなった魔術師学校のナバロ校長が教えてくれた。

 校長はずっとデモンズの部下を装い、出された命令などをリークしてくれてた。



 いよいよ今日から8月、本日は待ちに待った【中位・魔術師】試験の日だ。

 魔術師協会本部は上流地区に在るけど、王都支部は一般地区の南側に在り、試験会場に相応しい演習場もあるし、研究施設もある。

 受験者を見回すと、王立能力学園の制服姿の者が10人いて、他には軍や王宮魔術師団の制服を着ている者が数人いた。


「なんか場違いって目で見られてるね」


「そうだねサンタさん。学園の先輩方は3年生が多いみたい。

 4年生から【高位・魔術師】コースに進級するには、3年で【中位・魔術師】の合格が必須らしいから。

 まあ卒業までに【中位・魔術師】を取れば、魔術師協会には就職できるけどね」


「へ~っ、そうなんだ」



 今回アレス君はアロー公爵家の名で受験するから、名前を呼ばれたら誰も文句を言ったりガンを飛ばしたりできなくなるだろう。

 まあ問題は私。最近仲良くなった魔術師学校の校長が言うには、これまで8歳で中位・魔術師試験を受験した者なんか記録に無いらしいから、奇異の目か怒りの表情で見られてる。


「なんの冗談だよ」とか「魔術師をバカにしてるのか」とか「夢を見るのは自由だわ」とか、まあ好きに言われてるけど気にしない。

 だって、今年の受験要項には、よーく見ると魔術または魔法を使って課題をクリアすることって書いてあるもん。


 これはアロー公爵とエバル教授のゴリ押しで改訂されたんだけど、来年の受験者から魔法を覚えた者が資格試験を受けるから、当然の措置だとエバル教授は言ってた。

 先月、絶対に魔術師学部を受験してくれと頼みに来たんだけど、丁寧にお断りして、兄さまと同じ空間拡張ウエストポーチをプレゼントして黙らせた。


 さあ、いよいよ試験開始だ。

 試験は年齢が高い順に行われ、合格判定が出たら即日資格証が発行される。

 まあ若い程、合格が難しいというのが定説らしく、優秀な方から先に試験を行い、合格したら帰ってもいいんだって。


 ……フッフッフ、どうせ最後だから派手にいこう! 待っていろ3倍返し!

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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