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116 2つの受験(1)

 11月、肌寒い今日も教会へ行く。

 再開発地域殲滅作戦・・・いや、あの魔法練習日以降、私たちは王城にも行ってないし、アロー公爵家の誰とも会っていない。

 だって、ツルリ子爵への罰も決定しておらず、指示を出した黒幕に対しても判断を躊躇してるから。


 家令のコーシヒクさんによると、今回の件の黒幕として現在判明しているのは、ホロル様の正妻クソババア3号と息子のレイノルドらしい。

 何でも西地区の夜空を焦がした翌日の昼、疲れ果てて帰宅したホロル様は、収穫祭で学園が休みになっているレイノルドの部屋の前を通り掛かり、部屋の中の会話を聞いてしまったんだとか。


 部屋の中では、どうして2人の殺害が失敗したのかと怒鳴っているレイノルドと、ツルリ子爵が失敗したんだから仕方ないでしょうとヒステリックに叫ぶクソババア3号が喧嘩をしていたそうだ。

 まさか正妻と嫡男が殺害を依頼したなんて思ってなかったホロル様は、大層ショックを受け2日間部屋から出てこなかったと、コーシヒクさん情報で知った。


 ……甘い、甘すぎる。呪符を探した時、クソババア3号がポロリとヒバド伯爵との関係を溢してたじゃない。あの時、コーシヒクさんも警備隊長も既に疑ってたよね。


 お城からは、侯爵位を授けたいから都合のいい日を知らせて欲しいと、王様からお手紙という名の呼び出しをいただいたけど無視。

 今回の事件がきちんと裁かれ、私たちの誘拐に関わった貴族や関係機関に対する処罰が行われない限り、話すことなんか何もない。

 まあ母様の立場もあるから、アロー公爵家が犯人に対し、納得する処罰を行うまでは会う気はないと王太子様に返事はしておいた。


 


 王都民から【神罰の夜】と呼ばれているあの夜のことは、【闇烏】の悪行を知った大賢者様が、ガリア神にどうか天の裁きをと願われ、神罰が下ったのだと教会は発表した。

 大賢者様が魔法で神罰を下したと伝えると、大賢者様の危険度が上がると心配した教会長が、穏便?な内容に変更していた。


 ……まあ、大賢者探しが各方面で行われているらしいけど、こんな子供だとは誰も思わないから問題なし。


「国は大賢者様とお弟子様を買った2人の爵位を男爵に落とし、罰金として白金貨2枚を払わせ、教会内で行われた蛮行に対する謝罪だと言って、白金貨4枚を差し出しました。

 元凶となった教官は、爵位剝奪の上、全財産を没収されました。

【神罰の夜】以降、熱心な信者が増え、神罰を恐れた貴族からの寄付が増えました。全てお2人お陰です。感謝いたします」


 教会が民や各地の教会から集めた、カラになったクズ魔核に魔力充填しながら、教会長は黒く微笑みながら礼を言う。

 私とアレス君は、毎日教会長と一緒に2時間カラ魔核に魔力充填して、教会に魔力を喜捨している。


 なんと、クズ魔核なら光猫のシリスも充填できると判明し、毎日一緒に頑張っている。

 最近シリスは【教会の神獣さま】とか【金色の神獣さま】とか噂されているようで、信者の皆さんの人気者になっている。

 教会はその噂を否定しない。教会の古い資料に大型光猫は神獣であると実際に記載されているらしいから。


 ……シリスは確かに神々しい感じだもんね。もふもふワシワシ。

 


「魔術師学校の他の教官や、軍や王宮魔術師団に就職するよう強要した上官も、王太子様から厳重注意され減給の処罰を受けたようです。

 また、魔術師学校の学生の将来を勝手に決めたり強要することは、今後一切禁止すると王様が法律を改正されたとか。全てはお2人の尊い犠牲のお陰です」


 元は魔術師だったという副教会長も、一緒に魔力充填しながら大仰に私たちを持ち上げる。

 あの夜、教会の鐘を鳴らしていた副教会長は、鐘塔から再開発地域に降り注ぐ炎の矢を見ていたそうで、本当に神の御業だと思ったらしい。

 あの夜以来、教会長と副教会長は、私を大賢者様、アレス君をお弟子様と呼んでいる。




 1月、兄さまとアレス君の10歳の誕生日を我が家で祝った。

 私は張り切ってメイドのメリーさんとケーキを焼き、プレゼントを用意した。

 特別ゲストとして、エルドラ王子もやって来た。

 王子は直ぐにシリスとも仲良くなり、とうとう5センチのカラ魔核に充填できるようになったと嬉しそうに教えてくれた。


 専門職の兄さまも2センチのカラ魔核に充填できるようになったから、2センチの魔核でも使える空間拡張ウエストポーチをプレゼントした。

 収納量は1メートル四方だけど、大喜びしてくれて良かった。

 アレス君からは、空間魔法の指導をリクエストされたので、明日から本格的に練習を開始する予定だ。



 5月、私とアレス君と兄さまは、再びシロクマッテ先生に家庭教師をお願いして、王立能力学園入試の勉強を本格化させた。

 シロクマッテ先生は、呪術によって勉強が遅れていたアレス君の兄トーラスさんの家庭教師をしていて、昨年2年遅れの14歳で王立能力学園に合格させたそうだ。


 今はトーラスさんの妹でありアレス君の姉になる、ビビアさん12歳に勉強を教えているんだけど、優秀で王立能力学園の合格は間違いないから、私たちには週3日教えてくれる。

 今年は兄さまと私の兄妹と、ビビアさんとアレス君の姉弟という非常に珍しい同時受験者がいる。


 王立能力学園は、入学時年齢じゃなく学年を重視するらしいから、同期生の中で年齢差は関係ないって母様が言ってた。

 まあアレス君の場合、姉弟って感じの付き合いをしてないし、ビビアさんは【中位・文学】持ちで学部も違うから、ほぼ接点はないかな・・・



 6月、私の8歳の誕生日に、新しい守護霊のショーニスさん38歳がやって来た。

 ショーニスさんは1万年前の高度文明紀のエンジニアで、主に魔術具の改良や修理をしていたそうだ。

 先に来ていた発明家のダイトンさんも大喜びし、一緒にサンタさんを鍛えようと張り切っている。


 ……うん、遂に高度文明紀の守護霊様がキターーーー! って、私も叫んだよ。しかもエンジニアって職業だもん。


 誕生会には、お爺様もファイト子爵領から駆け付け、ゲストで来たエルドラ王子とローラスティ王女を見て固まっていた。

 明日は、約束通りドレスを買ってくれるそうで楽しみだ。  

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

新章スタートしました。

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