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1 バコード子爵家

新作スタートしました。

1話を2千文字から2千5百文字くらいで書く予定です。

明るく頑張るサンタさんを、応援いただけると嬉しいです。

 


 爽やかな風が気持ちいい晴天の5月、古めかしく歴史を感じさせるバコード子爵家の廊下で、私と手を繋いで歩いていた母様が、意地悪なクソババア・・・ゴホン、意地悪な伯母に呼び止められた。


「義弟のバルザックが戦死して1年半、義父様も嫡男である主人も、十分に義理を果たしたと思うのだけれど、いつまでバコード子爵家に居座るつもり?

 義母様は、サンタナリアが3歳で【職業選別】を受けるまではと仰っているけれど、家を継ぐ私の息子ニヒルは役人職、来年から領都の中級学校に進学するわ。

 ここに残るのなら、戦没者支援金を全額生活費として入れるべきでしょう?」


 伯母のロレイン(クソババア)は、【職業選別】で専門職の【被服】を授かった人で、染織の指導を領民に行っている。

 私の母様は、女性には珍しい【農業・品種】という中位職を授かり、農業が盛んなバコード子爵家のために頑張って収益を上げている。


「義姉様、戦没者支援金は、亡くなった夫が2人の子供に残してくれた唯一のものです。それに生活費なら、私が働いたお金を入れているはずです」


 常日頃から嫌味を言われたり嫌がらせを受けていた母様だけど、私たちの将来の為にずっと我慢してきた。

 だけど、父様が遺してくれたお金まで出せと言われ、珍しく反論した。


「ハーッ、アナタの息子のバルトラが授かった職業は【教育】だから、来年には初級学校でしょう? まさか居候の身で学費まで出して貰うつもり?

 そろそろ実家に帰ったら? 実家のファイト子爵家は、歴史も浅く領地もうちの半分くらいだけど、子爵の職業は【技術・発明】だからお金()()はお持ちよね?」


 随所に嫌味を入れながら出て行けという伯母は、4歳ながら利発で優秀な私の兄バルトラが邪魔で仕方ないんだよね。

 従兄ニヒル8歳の【役人】と、兄さまの【教育】は、同じ専門職なのだ。

 しかも私が3歳になって、自分の子供より良い職業を授かることを恐れているから、とにかく追い出したいらしい。


 基本的に子爵や男爵の家は、一番優秀な職業を授かった子供に家督を継がせる風習がある。だから、嫡男の息子とか次男の息子だとかは関係ない。

 祖父にとっては子爵家を存続させる職業こそが重要で、できれば中位職、それが居なければ専門職に爵位を継がせることになる。


【職業選別】で授かる職業は、高位・中位・専門・一般・助手の順に優劣がついていおり、高位職なんて一握りのエリートしか居ない。

 だからと言って、授かった能力を上手く活かせなければ、お金も稼げないし爵位も維持できない。

 一般的に貴族は専門職以上を授かり易く、平民は一般職や助手を授かるようだ。




『面倒臭いことじゃ。何故この時代は【職業選別】などにこだわる? そんなもの、個人の努力と才能で何とでもなるじゃろうに。面倒じゃ、魔法を使えサンタ』


『サーク爺、2歳児の私にそんなことを言っても仕方ないわ。もしも私が2歳児らしからぬ魔法なんて高位能力でも見せたら、きっと殺されちゃうもん』


 ……ぼんやり抜けてる幼児を頑張って演じているのに、ここで命を狙われるような愚かな行いをしろと?


 実体のない魂であるサーク爺ことサークレスさん61歳(享年)は、高度文明以前の1万5千年前に生きていた魔法使いである。

 サーク爺によると、高度文明紀(1万年前頃)までは魔法使いは千人に1人くらい居たらしい。


 サーク爺は魔法使いの中でもトップクラスだったみたいで、魔法をもっと極めたいと願い、死後も輪廻の輪の中で自分の能力を受け継げる者を探していたという。

 理想の魔力量と可能性を持った私サンタナリアが生まれるまで、長い長い時を輪廻の輪の中で過ごしていたらしい。


 ……輪廻の輪が何なのか分からないけど、凄い根性と執念の持ち主だってことは分かる。


 今はさ、魔法使いじゃなくて魔術師って呼ばれていて高位職なんだけど、1万人に1人くらいしか居ないんだって。

 早く魔法を教えたくてたまらないサーク爺だけど、超古代も現代も、魔法(魔術)は3歳にならないと使っちゃダメなんだよね。




 私はオギャーッとこの世に誕生してから、ずっとサーク爺から頭の中に話し掛けられ続けた。

 無垢な赤ん坊は訳も分からないまま、膨大な情報や知識を脳にインプットされ、その結果、覚えることが多くて、常にぼんやりして抜けてる子だと思われてきた。


 寝ている間にも、睡眠学習じゃ・・・とかなんとか言われて、情報はインプットされ続けた。


 頭がパンクするー、勘弁してーって思っていたけど、1歳になる頃には大人の話を全て理解できたし、2歳になった今では、サーク爺と念話や声に出して普通に会話ができるようになった。


 サーク爺は、姿は見えないけど意思疎通のできる守護霊みたいなもので、師匠でもある。


 でもねえ、サーク爺の知識は凄いけど古い。古いのに高度過ぎる。

 文明は後退しまくっているから、今の時代の暮らしや価値観と合ってない。

 きっと私の価値観も、大きくずれているだろう。はーっ。


 ……普通に成長したかったよ。とほほ。


 サーク爺によると、この星は1万年前の高度文明紀の後、大きな気候変動によって文明が一度滅んでいるらしい。

 500年前の探索紀と呼ばれる時代になって、地中から高度文明紀の遺跡や古代都市が発見された。

 現代では、トレジャーハンターが命懸けで古代の魔道具や便利グッズを採掘している。



「かーかー、じーじーいく」


 こんな家に長居してもいいことなんかないから、私は母様に家を出ようと言ってみる。


「嫌だわ、2歳にもなって母様さえ言えないなんて、バコード子爵家の恥ね」


 伯母は私に蔑みの視線を向け、手に持っていた扇子を広げて口元を隠し、醜く口元を歪めた。


「くちょばば」


 ……あっ、つい口が滑った・・・

お読みいただき、ありがとうございます。

苦境にもめげずに頑張るサンタさんを応援くださる方は、ブックマークをよろしくお願いいたします。

1人でもブックマークが増えると、作者は小躍りして喜びます。

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