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召喚されたら猫だった?

作者: 比呂真

初の短編です。

 はぁー。何で俺なんだ。


 よくある召喚物って奴だろうと思っている。学校帰りに突然、地面に穴が開いた。

 はぁ? って思うだろう。そう、俺も思ったさ、思ったけど、思ったときには落ちていた。


 考えてもみろよ。歩いている最中に突然、道路に穴が開いたら避けるか?

 俺の運動神経は普通だ。アニメの主人公じゃあないんだ。突然ジャンプできないからな。


 穴の中は真っ暗だ。で、今落ちているところって思っているんだが、一体いつまで落ちるんだ? 物理的に風があたるとか、空気の抵抗がってのは無い。

 それもおかしな話だが、ただただ浮遊感のようなものががあるんだ。


 いい加減、飽きてきた。最初はビビったさ。落ちている距離から考えると、とんでも無い力で叩きつけられることになるよな。

 しかし、一向に底にたどり着かない。まぁ、底が目視できるのか、それとも真っ暗の中、突然叩きつけられて終わるのかわからんが。

 人間、どんな状況でも、ある程度時間が経過すると慣れるもんなんだな。

 そう、俺は慣れて、飽きてきたというわけだ。


 俺は、落ちた時の恰好のまま、足を下にして落ちているつもりだ。

 手を動かしたり、首を回したりはしたが、基本、体制はそのままのはずだ。

 なにぶん真っ暗で何も見えないから、たぶんそうだろうと思っているだけだが。

 ちょっと体制を変えてみるか?


 なんとなく座ってみる……

 いや、何も変わらんな。


 では、腹ばいになってみる……

 何も変わらん、と言うかやはり空気抵抗は無いだろうな。難なく腹ばいになれる。

 空気抵抗が無いってことは、腹ばいで手や足を動かしても方向転換も軌道修正も出来ていなんだろうな。見えんからわからんけど。


 はぁ、本当にどうしろって言うんだ。いや、ひょっとして、俺は既に死んでいるのかも、幽霊とかになった事が無いからわからんが、まさかこの状態がソレなのか?

 話では、自殺した者は永遠に死の瞬間を繰り返しているって聞いたことがあるが、俺は何かの穴に落ちて死んだのか? 自殺では無いが、その落ちた瞬間を繰り返しているとか?


 それは理不尽だ。百歩譲って事故で死んでしまったのなら仕方が無いが、いや、譲っていいのか俺? ま、まぁ事故死ってことでもだ、なんでこんな罰のような目に合わなきゃならないんだ。


 ……はぁ、飽きたな。

 ん? そういえば落ちて行く先を気にしていたから下ばっかり見ていたが、上を見ていないな。よいしょっと、寝返りを打ってみるか……

 あれ、うまく出来ない。

 そう、抵抗が無いからできないんだ。床も無いし手や足をばたつかせても引っ掛かる物も無ければ何もない。


 ……あぁーー詰んだな。


 ん? そうだ、もう一度座ってから仰向けに寝れば出来るんじゃないか!?

 よいしょっと、で、ここから、よ、良し! 出来たぞ。


 あ!!


 やわらかい真っ白な光に包まれ、今度は急激に持ち上がっていくような感覚がする。そう、さっきとは逆の動きに感じるのだ。まぁ感覚だけなんだがな。


 っ!!!


 焼き尽くすような、強い光と熱が……


 ――――


 ん? ここは何処だ?


 んな!! で、でっかな花が目の前にある。何だこれは、見たことも無い花だ。

 しかも俺の顔ぐらいはあるぞ。ってよく見ると……なぜかすべてが大きく見えるんだが!?


 そう、大きいのは、目の前の花だけではない。その葉も、その茎も、そして周りに見える物すべてが大きく見える。

 うぉっと。虫? 虫か?? でっかなアリのような化け物が歩いている。

 多分、全てが大きな世界だ。マジか。俺、小動物や虫にも負けそうなんだが。


 周りを素早く見渡す。どこかの森か? 花が多いようだが、草原なのか?

 なんせ自分が小さくなっているから、見渡せる範囲が……今、気が付いたんだが、俺の手が毛むくじゃらなんだが!?


 な! 何だこりゃ!! 手も足も体も毛むくじゃらだ。

 おっと、しっぽ。尻尾があるぞ。あ、動かせる。初めての感覚だが、なんとなく動かし方が分かったぞ。おお、すごい!


 って感動している場合ではない。

 何がどうなって、こうなっているんだ?? 俺は動物になったようだぞ。

 死んで転生したのか??


 それで、動物の種類はわからん。手には肉球があって、尻尾がある。そして全身毛だらけだが、これでは全くわからん。尻尾の形からネズミやウサギでは無いな。と、とにかく動かないと、始まらんな。


 しかし、この体の大きさだと、たぶん敵は多そうな気がする。気を付けて行動しないと、一発でアウトってなりそうだな。

 周りを警戒しながら大きな草の間を進んでいく。たまに見かける巨大な虫にビビりながらも。そうそう、俺もファンタジー小説ぐらい読んだことはある、こういうパターンって上だよな。だいたい上から巨大な鳥が襲ってくるってことが多い気がするよ。


 って事で上を見ると……遅かったです!

 きょ、巨人だ!! アレだ。たぶん塀の外から走って来る奴だよ。日本でのアニメで見た事がある奴だよ。

 逃げなきゃ! はぁーー俺は四つ足って奴に慣れていなかったよ。

 慌てて逃げようとしたら、つまずいて転がってしまった。で、あっけなく巨人に捕まってしまった。


 死んで転生したかと思ったら巨人の餌かよ。つまらん人生だったな。


「か、かわいい!! ナビア、この仔を見て。どこから来たのかな!?」


 か・わ・い・い、だと? 俺の事か? 俺も小さい頃は可愛いって言われたこともあったが、今では大学生だぞ。自分で言うのも何だが、可愛いって言われる感じでは無いぞ。


「あら、シルビアーナ様。駄目ですよ野生の動物に触れては、変な病気でも持っていたら大変ですわ。さぁ、離してあげてください」


「えぇ、いやよ。この仔をお家に連れて行くの! お父さまに見せて飼っても良いか聞いてみるの!」


 お、おぅ。振り回さないで頂けると助かります。はい。

 で、この巨人はシビアーナと言うらしいな。うーーんアップ過ぎてわからんが西洋風の顔立ちと服装。年のころは15か16歳ぐらいか?


 ナビアと言う方は20歳前後だな。言葉からしてシルビアーナの侍女ってところか……あれ? 俺、言葉が理解できているぞ。

 この巨人と言うか、おそらく俺が縮まっただけで、普通の人間なんだろうけどそれにしても動物の俺は、彼女たちの言葉が分かるのか。それにどう見ても日本人ではない。だから日本語とも違うはずだ。でも、理解できる。まさか、俺喋れるんじゃないか?


「ん、にゃー?」


 あ、駄目だったわ。そして猫っぽいぞ。

 はぁー。そうか、自分の姿はわからんが、鳴き声からして猫だよな。

 なんで、猫になったか知らんが仕方がない。いや、むしろ良い方では無いか。

 害獣で駆除される側とか、家畜で食われるよりは遥かに良い。


 おっと、ナビアは連れていくことを反対しているようだが、お嬢様の力で押し通したようだ。

 おお、でかい。外国っぽいイメージに当てはまるような洋館だ。

 と言うことは、先ほどいたのは庭ってことだな。


 シルビアーナは鼻歌を歌いながら、俺を抱っこして連れていくが、何か嫌な感じがするんだがな。


「おい、シルビ。何を持っているんだ。ん? なんだその小汚い物は、そんな物を持ちむんじゃない」


「お、お義兄さま、汚くないですわ。ちゃんと洗ってあげれば綺麗になります」


 あぁ、兄弟なのか? 全く似ていないように思えるが、シルビアーナは金髪で軽くカーブが入ったくせ毛、エメラルド色の瞳だったが、目の前の男は茶髪のストレート、目も茶色だな。うーーん顔つきも男の方は、どこかしら、とがった感じがするが、シルビアーナは曲線的な感じだ。歳は、俺と同じぐらいに見えるから20代前半だな。


 なんだか、形勢不利って感じだな。


「えぇ。お父さまは、いらっしゃらないのですか?」


「あぁ、先ほど王城へ向かった。急な呼び出しとか言ってな。さぁ、その汚い物を捨てて来なさい」


「いやよ。お父様に『まぁ、シルビアーナ、はしたない、淑女が大きな声で何ですか!』」


 あ、これはさらに面倒くさそうな女が出てきた。絶対にシルビアーナの味方にならないタイプだわ。


「お、お義母さま」


「お母様、見てくださいよ。シルビがこんな汚い物を我がハンプシャー家に持ち込んで来たんですよ。まったく、これだから下位貴族の娘は困るよ」


「本当ね。シルビアーナ! あなたは、こんな汚い物を持ち込んでどうするのです。あなたの母と同じで、本当に貴族なのかと疑ってしまうわ。さぁすぐに、捨てて来なさい。ナビア、あなたが付いていながら何をやっているんですか! 早く行きなさいノミでも付いているかもしれないじゃない、汚い!」


「はい、すみませんナルジェ様。さぁ、お嬢様、行きしょう」


「…………」


 ふん。結局、俺は外に追い出されるのか。ちょっと、この屋敷の中で安全に暮らせるかと思ったが、そんなに甘くは無いか。しかし、何だあいつらは、これではシルビが可哀そうだ。何とかしてあげたいが猫の身ではな。


 そういえば、あの男はシルビの事を下位貴族の娘って言っていたし、あの女はあなたの母って言い方をしていたな。その言い方からして奴らとは血がつながっていないのか。まぁ、納得だな。あの女は継母なんだろうな。そしてあの男はその女の連れ子ってところか、それともシルビのお父様の隠し子ってことになる。


 おそらくシルビの本当の母親は既に亡くなったのか離縁されていなくなり、その後にナルジェという女があの息子を連れてやって来たのだろう。


 ふう、ついに元居た場所に連れてこられてしまったな。

 これで、お別れかな。しかしここで良かったのか? ナルジェの言っていたのは敷地の外に追い出せって意味だと思うが。


 まぁ、せっかくだから、別れの挨拶ぐらいはしておくか。


「にゃ、にゅあーにゃ」


 じゃあな、って言ったつもりだが通じんよな。仕方がない。どこか安全な場所を探しに行くか。


「にゃ!」


 っと、突然抱き上げないでほしいんだが、めちゃくちゃびっくりするんだぞ。


「やっぱり、駄目。ナビア、こっそり部屋に連れて帰れないかしら」


「はい、そうなると思っていました。では、庭師のバマスのところに行きましょう。あそこで麻袋を借りて、お嬢様の育てているお野菜と一緒に持ち帰りましょう」


「さすがナビア。素晴らしいわ。さっそくバマスさんのところに行って麻袋を借りましょう」


 あぁそうかい。シルビは諦めていなかったんだね。そしてナビアって侍女はちゃんとシルビの味方だったんだ。良かった。誰も味方がいないんじゃないかと心配したぞ。

 それにしても、このお嬢様は野菜を育てるのが趣味なのか? 貴族としては珍しいのでは?


 良し。俺もこの子を助けてあげよう。何か出来ることがあるかもしれない。まずは屋敷内に潜入だな。バマスさんとやら、味方だよな? 頼むぞ!


 庭の隅に小さな小屋があった。まあ、小さいと言っても俺からみたら十分、大きいが、家族向けの住宅では無いな。ほう、ここにバマスさんは住んでいるのかな?


「バマス。バマス、居ないのですか?」


「おや、これはお嬢様、今日の水やりは終わったのでは?」


「うん。そうなんだけど、この仔を見て」


「おやおや、これは仔猫ですね。え、庭にいたのですか? 今日、見回った時は気が付きませんでしたよ。……ほう、この仔猫を屋敷にですか!? 良いですとも、麻袋はこれでいけますかな」


 おう。しっかりと麻袋に入れられて、頭から何かの葉っぱを掛けられた。仕方が無いとは言え、普通の猫だったら嫌がると思うけどな。ええ、ちゃんと大人しくしていましたとも、一言も鳴かずに動かずに。


「お嬢様、この猫とても賢いようですね。普通は嫌がって暴れますけどね」


 おい。分かっていたんなら、何か他の手を考えてくれよ。


 はぁ、他の野菜と一緒に麻袋に入った俺もバマスさんとナビアによって運ばれていく。なんだか出荷されるようで嫌な感じだが仕方がない。よう、ジャガイモ君、君は何処に行くんだい。ほう、厨房か良いね。俺かい? 俺は何処に連れていかれるんだろうね?


「シルビ、ちゃんと汚い奴は捨てたんだろうな。ん? なんだその袋は、ちょっと見せてみろ。……っけなんだこれは。ああ? 野菜だと伯爵令嬢が野菜を運んで居るのか? まあお前には向いていそうだな。はっはは」


 あ、あぶなーい。本当に中身を確認してきたぞ、あのクソ息子。

 バマスさんの機転で野菜を被せられてけど助かったよ。そのまま入っていたらバレていたもんな。


 そして何と、ジャガイモ君と一緒に厨房に到着です。まさか食べないよな?

 そして、ついに麻袋を卒業です!


 ……布の袋に入れらましたよ。


 よう。タオルさん、君はどちらまで? おう、お嬢様の部屋かい、奇遇だね俺も同じだよ。ってことでようやくタオルと一緒にお嬢様のクローゼットまで来ました。


「ふう、なんとか来れたわ。さぁーって、ここがあなたのお部屋よ」


「お嬢様、その仔に名前を付けてあげた方が良いのでは?」


「うん、そうね。ん? あなた女の子、それとも男の子? えっと、男の子ね!」


「お、お嬢様。はしたいですよ」


 はっはは。まぁ猫の体だから恥ずかしさも無いから良いんだけどね。


「じゃあ、あなたの名前はポテトよ。可愛いでしょう」


 ニコニコと笑顔のシルビ。はぁ? ポテト? ナビアさんマジ? 何か言ってあげてよ。ジャガイモ君と一緒に運ばれたポテトって何だ!いや、ナビアさん、うんうん、じゃあなくってさ!


 ……あー、どうもポテトです。

 もう、なんでも良いや。というか、さっきの野菜をジャガイモって聞き取れたからポテトというものは全く別の意味かもな。俺の感覚の芋とは違うのかもしれん。


 ナビアさんは動物を飼ったことがあるのか、飲み水の容器と寝床、トイレを素早く用意してくれた。まぁトイレと言っても木箱に砂を入れただけだけだし、寝床はバスケットにタオルを入れただけだから、たいした物では無いが、無いよりは良いよ。


 ただ、何と言うか想像していた部屋とは違うな。あの息子は伯爵令嬢と言いていたな。俺も詳しくな無いが伯爵は上位貴族だ。そのご令嬢が、この部屋か? 小さなベッドと小さな机、椅子、クローゼット。小さな本棚。これですべてだ。日本のビジネスホテルの方が豪華に見えるほど質素な家具だ。


 俺の居場所に文句は無いが、シルビの部屋としては気に入らないがな。

 ん? んーーん。まさかとは思うが、この猫の体に引きずられているのか、腹が立っているのに、無性に眠い。まずい意識が落ちそうだ。


 迂闊なとこで寝てしまって、奴らに見つかると駄目だ。いっそう、シルビ達がいるときに寝た方が安全だろう。って言い訳をしながら俺はバスケットの中に潜り込んだ。


 ――――


 寝たはずの俺は、何者かに起こされた。はぁ、これはアレだ。神様のような奴が出てきて、何か言い訳を言いながらスキルをくれる奴だろう?


「すまんな。ワンパターンで」


「あ、心の声、聞こえていました?」


「一応、神様のような奴だからな」


 はっははは。心の中でも笑ってごまかしてみた。


「ところで、お前は何故仰向けに倒れなかったんだ。おかげでなかなか時間を掛けてしまったぞ」


「えっと、あの真っ暗な穴の中ですよね。あれは下に何かあるのかと思っていたので上は見ませんでした」


「まったく、お前が顔を向けないから、術が成立せずに時間が経ちすぎて召喚先がずれてしまったようだぞ。迷惑な奴だな」


 迷惑って言われても、知らんがな。


「っでだな。言い訳は無いぞ。これは私のせいでは無い。お前を呼んだのは、この国の国王だ。国王が聖獣を召喚しようとしたようだが、お前が引っ張られた」


「へ? 何で聖獣を呼び出して俺なんですか? と言うか聖獣って呼び出すものですか? 物語的には、その世界に住んでいる生き物かと思っていましたが?」


「あぁ、そうだな。聖獣は呼び出すものでは無い。勝手に、そこに存在しているだけだ。だから、あの世界にも居ることはいるが、聖獣が人のために協力などせんよ」


「じゃあ、やっぱり俺と関係ないってことですね?」


「ああ、関係無いな。そして聖獣も関係が無い。そして私も関係が無いんだよ。しかし、そうはいっても私の管理している世界に無理やり連れてこられたんだ。全く知らんというのも薄情だから、こうして出てきてやったんだ」


「ちょっと待ってください。国王たちが、どうやって俺を連れて来たのですか? 何か異世界から人を連れて来る方法があるってことですよね?」


「んぁ、えぇっとだ……」


 何やらぶつぶつ言いだしたぞ、この神様。何か胡散臭くないか?


「うぅ。実は、昔々にこの世界は異世界から人を召喚と言う形で連れて来て、良いスキルを与えて魔物討伐や、一番強い魔物を魔王と言うことにして討伐させておったんだ」


「スキルを与えるのは、国王では無いですよね。それこそ神様じゃないですか?」


「そ、それが、私のスキル付与が、この世界の住民には合っていなくって、外から連れて来たものにしか与えることが出来なかったんだ。だから召喚した者に与えて、この世界の人間では勝てない魔物を退治してもらっていたんだ」



 その後も、延々と聞き出したさ。そして分かったことは、この神様、無関係では無い。どうやって国王たちは俺を呼び出すことが出来たのか、それを聞き出した結果、今回、確かに呼び出したのは国王だが、大昔、その技術を教えたのは、この神様だ。そして現国王たちは、古い文献から召喚魔法と言うものを見つけ出し、それで聖獣を呼べると勘違いしたというのだ。この魔法を使えなくすることは神様なら出来たが、もう使われないだろうと、封印を怠っていたのだ。


「では、改めて聞きます。召喚魔法が今でも使えたのは貴方の所為ですね?」


「はい。すみませんでした」


「で、俺は帰れるのか?」


「帰れません。あなたの居た世界の人が召喚魔法を使ってあなたを指定して呼び出さない限り、こちらから送り込むことは出来ないのです」


 はぁぁ、俺の居た日本で召喚魔法は伝わって居ないよ。ってことは帰れる望みは無いってことだよな。


「では、今、この世界は魔物の脅威に脅かされているんで、俺を呼んだってことだよね? 俺には戦うスキルが必要ってことか?」


「いえ、必要ではありません。魔物も強い者はおらず、この世界の者でも十分戦えます。こ、国王は、その、王太子の護衛かペットにしたかったようで」


「はぁ?? そんな理由で俺を連れて来たのか! なんで俺が、知らない王太子のペットにならんといかんのじゃ! 更になんで守らなきゃあならないんだ!」


「す、すみません。とにかくスキルは渡しますが、実はもう良いスキルは無くって」


 で、残り物のスキルってのが、『収納』、『シールド』、『認識阻害』だった。

 しかも、どれも、これも中途半端な物だった。


 まずは収納。日本のゲームや物語にあったがマジックボックスの事だ。しかし問題は、その大きさだよ。段ボール箱一個分って、何に使えるんだ? 人間にとっては手で持った方が早いレベルだよな。まぁ、猫の俺にとっては大きいが。


 次、シールド、こっちも名前だけ見ると良さそうなんだが、これもその大きさだよ。50センチ程度って何だよ。人間なら盾持った方が早いぞ。

 ま、まぁ、猫の俺にとっては十分だがな。


 最後に認識阻害、これは相手から見えにくくなるらしいが、これも問題は大きさだよ。たった30センチって何だよ。人間なら頭を隠すだけで全身見えてるぞ。

 ま、まぁ、猫の俺にとっては、丸くなれば収まるがな。


「王太子を守るかどうかは、お任せします。私もこだわりはないので。このスキルをお詫びとして受け取ってもらえると助かります」


 はぁぁ。腹が立つが、ここでこの神とやらにあたっても仕方がない。召喚魔法を封印しなかったのは駄目だが、強い魔物がいなくなった、この世界で、使われることを想定していなかったようだ。


「で、では。私はこの辺で失礼させいただきます」


 何だか、最初に出たときに比べて随分と腰が低くなった。仕方がないよな!


「ん? 待て。そう言えば、なんで俺は猫なんだ。今まで人間で召喚出来ていたんじゃ無かったのか? まだ何か隠しているだろう!?」


「そ、それは聖獣の抜け毛を媒体に使ったようで、聖獣としての特性が組み込まれたのかと思います」


 このクソ神が、やっぱり隠してやがった。隠すってことは良い内容では無いよな!


「早よ、続きを言えや」


「も、申し訳ございません。そのですね。聖獣は不老不死でして、あなた様は永遠に今の姿のまま仔猫です。死んで元の世界の輪廻に戻ることも出来ません! では失礼しまーす!!」


 あ、逃げやがった!!

 だぁーー俺はずっと仔猫かよ。せめて大人の猫にしてくれ! すぐに寝るし、なんだか動きもヨチヨチしていて俊敏性はないし。


 白い靄が広がってきた。時間切れのようだ。クッソあの野郎最後に爆弾落としやがって!


 ――――


「にゃー」


 おっと思わず声を出してしまった。大丈夫か?

 ……どうやら俺はシルビのベッドの下にいるようだ。辺りは暗いから夜になってしまったのか? 辺りを警戒しつつ、音を立てないようにソッとベッドの下から抜け出す。誰も居ないか…いや、誰かが部屋に近づいてきている。二人だ。あ、シルビとナビアの匂いだ。


 暫く待っていると二人が部屋に入っていた。


「にゃ、にゃー!?」


「ポテト起きたんだね。これご飯だよ。食べるかな?」


 おう、何やらわからんが、茹でた小さな肉と、ちぎったパンかな。どうやら俺は聖獣のようだから、食べなくても死なないし、逆に何を食べても問題無いぞ。だが、せっかくシルビが用意してくれたんだ、喜んで食べるぞ。


 俺は用意してくれたご飯を食べながら、二人の会話を聞いていた。どうやらナビアは、あの継母どもが、領地の運営資金を着服しているのではないかと疑っているようだ。筆頭執事も奴らのグルなのか帳簿も辻褄があっているらしいが、どう見ても生活が派手なんだとさ。しかし、証拠が無い。ナビアが掃除のときなどに探ってはいるようだが何も出てこないようだ。


 ふーーん。これは俺の出番のようだな。


「に、にゅあ、にゃー!」


 いや、通じんか。とにかく、俺は二人の前で認識阻害を見せてみた。方法は簡単頭の中で認識阻害を思い浮かべて、なるべく尻尾を体に沿わせておけば30センチでも十分収まったよ。あぁ、やっぱり仔猫なんだな。


「ポテト? ポテトどこいったの??」


「にゃー」


「ここにいるの?」


 ふっふふ。シルビの手を舐めてやった。二人とも、かなりびっくりしていたが、俺の意図は通じたようだな。認識阻害を解除して、お次は収納だ。俺は目の前に置かれた空の皿を見る。ちょこっと手を触れただけで、目の前から消えた。そう、収納したのだ。そのまま、トコトコと移動して、別の場所でお皿を取り出して見せる。


「す、すごい。ポテトすごいよ。ね、ナビア」


「いや、お嬢様。すごいってレベルでは無くってですね。ポテトは本当に猫ですかね?それに私たちの会話を理解していますよね。それ以前にポテトってトイレを使っていないようなのですが、本当に普通の生き物ですかね?」


「にゃー」


 ああ、ちゃんと理解しているとも。だから余計に意地悪な継母と義兄からシルビを助けるつもりだ。それに何だと資金を使い込んでいるだと、これも嫌な予感しかしない。あいつらなら、シルビに擦り付けるかも知れんぞ。


 では二人とも、さっそく取り掛かろうか。俺はドアのとこまで移動すると、ナビアを呼んだ。

 ナビアも俺の意図が理解できたようでドアを開けてくれ廊下を案内してくれる。

 一つのドアの前で立ち止まった。


「ポテト、この部屋が、ナルジェ様の部屋です。一応執務もここでしていることになっています。そして向かいのこちらがアンジャンテ様の部屋です。一応、この一番奥が旦那様の執務室になっています。あとは、こちらがご夫妻の寝室になっています。主な部屋は以上ですので、一旦、シルビアーナ様の部屋に戻りましょう」


 俺は小さく頷いた。良し、場所は覚えたぞ。

 シルビの部屋に戻った俺たちはナビアから、これから作戦を聞いた。

 今日はナルジェを調べることになった。ナルジェは睡眠前にお茶を飲むらしいから、それを持って行く時に俺も認識阻害で付いて行って部屋に入るのだ。ただ、一発で何か重要な手掛かりが見つかるとは思えないから、何日か掛けることになるだろうな。


 などと考えながら、俺たちは夜を待った。

 ナルジェの寝る時間。ナビアがお茶を持ってナルジェの部屋に向かう。

 俺も認識阻害をかけて付いていく。ふっふん。簡単に潜入成功だ。


 ナルジェがお茶を飲み終えるとナビアを下がらせて、自分も部屋から出ていく。

 もちろん俺は、このまま居残りだ。ナルジェがしっかりとドアに鍵を掛ける音がする。

 まぁ、そうだよな。何かやましいことがあるなら、しっかりと鍵かけとかないとな。

 俺には無駄だがな。


 ふっふーん。耳を澄ませて、ナルジェが遠ざかるのを確認すると、認識阻害を解除してさっそく、ガサ入れの開始だ。戸棚を調べる。机の中も調べる。鍵がかかっていても問題ない。引き出しだけを収納して、他の場所で取り出せば、鍵がかかった形で引き出しだけが出て来る。引き出しって机に収納されているから見れないんであって、引き出しだけを床に置いたら、蓋の無いただの箱だから自由に見れるんだ。


 あーー猫の手は書類がめくりにくいな!!


 ふむ。ここにはそれら物がないな。書類棚があるが、そんなところにマズイ物をおいておくとは思えない。クンクン。犬では無いが猫だって、人間よりは数万倍は鼻が良いんだぞ。

 良く触っている場所は無いか? 一部分だけ臭いの異なる部分は無いか?

 ん? なんだ本棚の横に変な臭いがする。木の匂い以外に紙とインクの臭いだ。

 この本棚の横に臭いがあるって変だな。何かカラクリがあるんだろうけどわからんぞ。

 でも、まぁ良いか。よいしょっと。本棚の壁を収納。

 しかし、本棚の壁は大きくって収納に入らないはずが、一部分だけすっぽりと四角い穴が空いた。あーー、こんな時は小さな体が困る。届かないじゃないか。

 仕方がない、本を収納して床においてまた収容して、置いてを繰り返して本の階段を作り上げて、穴の中をのぞくと!! みいつけた! 裏帳簿のようだ。意外と几帳面なんだな。帳簿を付けていたのか。

 ふむ、立派な証拠だな。


 よし、ばれない様に全て元に戻しておいて。今日の任務は完了だな。

 後はソファーの下で寝て待てば良いかな。


 ――――


 そんな、こんなで二人の部屋の調査は意外と簡単に完了した。

 ちなみにアンジャンテの部屋は、大量のお金を隠していた。たぶん、このお金も不正なお金のようだな。


 シルビとナビアに捜査が完了したことを伝える方が大変だった。

 二人とも猫語が通じないもんな。仕方が無くペンを持って紙に書いていく。

 ペンを使って字をかける猫って、なかなか居ないよな!


 今回、見つけた証拠はシルビのお父様がいるときに暴く方が良いだろうということで暫く、奴らは放置しておくことにした。

 その間も、ちょくちょくシルビが嫌味を言われ、時として食事も抜かれる。

 何なんだ。あいつらは。ナビアと厨房のスタッフが強力してコッソリと食料を差し入れするから飢えずに済んでいるが腹は立つ。


 証拠を見つけてかれこれ一週間がたったころ、待ちに待ったお父様が戻って来た。

 シルビはお父様に面談を申し入れたが、後回しにされてしまった。

 上級貴族ってのは面倒で、親子でも気軽に話が出来ないんだな。

 というかシルビだけ扱いが悪い気がするが……この父親は味方か?


 ようやくお父様も加わった夕食会が行われた。もちろん俺も認識阻害をかけて、シルビの足元で待機する。しかし、シルビが自由に発言することは許されていないようだ。

 継母のナルジェか息子のアンジャンテが邪魔をしてくる。


 そして伯爵の話は、どこかで聞いたような話だった。国王と宰相が聖獣を召喚したらしいが、召喚魔法は成功したはずだが、肝心の聖獣が見当たらないらしいぞ。へーー。どこかの迷惑な奴が上を向かなかった所為でずれたらしいぞ。それで、国中を上げて探しているらしい。ふーーん、大変だな。なんでも聖獣と言うのは人の二倍ほどの大きさで、このような姿だと姿絵を皆に見せていた。うーーん、白い虎のような姿のようだな。


 まぁ、そんなくだらない話のあと、シルビ以外のメンバーはサロンへと向かった。シルビはサロンへ入ることも禁止されているようだ。


 暫くすると、なぜかお怒りモードの伯爵とナルジェが怒鳴りながらシルビの部屋にやって来た。

 はぁ、なんだか騒がしい連中だな。


「シルビ、お前はなんでそんなに金を使っているんだ。こんな多額の金を使い込んでしまって、その年で遊び惚けていて、ハンプシャー家の娘として恥ずかしいと思わんのか」


「そうよ、シルビアーナ。アンジャンテを見習いなさい。あなたは伯爵家の娘としてふさわしくありませんわ。ヨハン様、もう勘当して修道院に送りましょうよ」


 はぁ?? こいつらは何を言い出したんだ。さては、ついに金の使い込みがバレたか?

 ついでにお父様の名前はヨハンと言うのか、へー、ボンクラのようだがな。


「お、お父さま、私はお金なんて使っていません。すべてはお義母さまとお義兄さまが使って『まぁ、何を言っているんですか、あなたは自分のしたことを人に擦り付けるつもりですか、もう許しません、こっちに来なさい』」


 おうおう。強行手段だね。だが、そうはさせない。

 シルビの手を掴もうとしたナルジェの手を蹴飛ばしてやった。

 もちろん、認識阻害は発動中だ。

 猫になったばっかりは、うまく体を使いこなせなかったが、さすがに半月ほど使っているとなじんでくるんだよ。そして、庭で色々と試してみたら気が付いたんだが、この仔猫、異常に身体能力が高い、というか高いってもんじゃあ無い。おそらく十人や二十人ぐらいを相手にしても余裕で倒せると思うぞ、聖獣というのは伊達では無いのかもな。


 おっと、ナルジェを忘れていた。

 ナルジェは訳が分からん状態になりながらも、娘が何かやったと思ったらしいが、腰が引けているのが分かる。そりゃ、目に見えない力で弾かれたんだからビビるよな。


「アンジャンテ! アンジャンテ手伝いなさい。この娘を部屋に閉じ込めておきなさい!」


 ナルジェの叫び声を聞いてアンジャンテと、筆頭執事のセバスまでやって来た。

 一緒にいたってことは、お前ら、なにか悪だくみをしていたんじゃないのか?

 俺は知っているぞ。セバスも多額の金を受け取っていることをな。


 むん。迫ってきたアンジャンテの足を払って、倒れて来る奴の顔面目掛けで軽く頭突きを喰らわしてやった。楽勝だね。

 おう、ヨハン伯爵もびっくりしているな。そりゃ、息子が突然、何かに躓いたように横に倒れ、壁にぶつかるかと思いきや、急に頭を大きく後ろにそらせて、そのまま後頭部を床に叩きつけるという、とんでもなく不自然な動きをしたんだからな。


「シルビアーナ、やめなさい。あなた、何をやっているかわかっているの、アンジャンテはこの伯爵家の次期当主ですよ!! セバス、衛兵を呼びなさいこの娘をとらえるのです」


 実は、責められてるシルビが一番、訳が分かっていない。父が全く身に覚えのないことを言って怒鳴り込んできたかと思えば、今度は目の前で母と兄が変な動きをしているのだ。


 セバスが走って衛兵を呼びに行った隙に、ナビアが駆けつけてくれた。

 もう、良いんじゃないかな。


 俺は、認識阻害を解除した。


「な、なんだ、こいつは!!」


「お父さま、この仔はポテトです」


「あぁ???」


 ん、んん。シルビ、このシビアな状況で、お前の父は名前を教えてほしかったわけでは無いと思うぞ。まだ混乱しているのか? ま、まぁ、良いや。俺はナビアを見つめて頷いた。


「旦那様、ナルジェ様とアンジャンテ様の資金横領についてお見せしたいことがあります」


「な、何を言っているのです。黙りなさい。侍女の分際で家族の会話に割り込むなんて図々しい!! あなたは今ここでクビよ。出ていきなさい!!」


 うっさいな!!

 この女、俺が威嚇しただけでビビってやがる。仔猫にビビらされるってどんだけだよ。


「ナビア、資金横領とは何のことだ? お前は何を言っているんだ?」


 はぁ、やっぱり、この伯爵はボンクラだな。シルビには悪いけど、よくこれで伯爵様が務まるな!?


 ナビアは皆をナルジェの部屋まで誘導して鍵を開けた。

 お、合いかぎを持って来てくれたのか助かるよ。


 俺は、先導して歩いていき、ヨハンの目の前で本棚の横の隠し扉を収納してやった。

 ヨハンは目を見開き驚いていたが、俺は顔で穴の中を見るように促した。

 ヨハンは穴から取り出した帳簿のページをめくりながら文字を目で追っていく。


「こ、これは! これは何だ! ナルジェ、なんでお前の実家に、こんな大金を渡しているんだ」


 そうなんだよ。ナルジェはハンプシャー家のお金を自分の実家に渡していた。

 ちなみにナルジェの実家も伯爵家のようだがな。


「ナルジェ、答えろ!」


 ナルジェは顔面蒼白になりながら、口もアワアワしているだけで何も言えずにいた。


「旦那様、次はアンジャンテ様の部屋にお願いします」


 ナルジェを残して俺たちは、アンジャンテの部屋の前に移動した。

 伯爵はぶつぶつ言いながらも大人しくついていく。

 ナビアがドアノブを回すが鍵がかかっているようだ。

 ナビアが合い鍵を出して、ドアを開けると、そこにはカバンに金を詰めるセバスがいた。


「くそ!」


 金の入ったカバンを持って走ってくる。走るのその手には光るものが!


 っつ! この野郎!


 全力でシールドを展開してシルビをガードした。セバスが持っていたのはナイフだった。小さなナイフなんかじゃない。ダガーと呼ばれる刃渡り15センチ程の大型ナイフだ。

 この野郎、何をとち狂ったのか、シルビを刺そうとしやがった。あぁ、アレだ。こいつただの執事じゃなさそうだぞ。素人の俺が見ても、ナイフの構えが様になっやがる。


 俺は、不老不死だから問題ないが、シルビはそうはいかない。何が何でも守る。


 セバスが執拗に斬りかかってくる。俺の体は小さいが、かなり素早い動きが出来るようになったし、力も人間の腕力ぐらいでは負ける気がしない。むしろ俺の方が殺してしまわないように手加減をしないといけないぐらいだ。


 だが、しつこい。

 このまま、シルビに何かあっては困るから、終わらせてもらおうか。


 ちょっとだけ力を入れて、猫パンチ!!

 ボキっという爽快な音。


 猫キック!!

 ベキという心地よい響き。


 腕と足を折られたセバスが喚いているので、うるさい!

 頭突きを入れたら、静かになったよ。


 ふむ。やれやれ。

 伯爵は呆然と口を開けている。はぁ、お前はなんの役にもたたんな。

 あ、横でシルビも同じように口を開けているが、シルビは可愛いから良し!


 うん。ナビア、お前だけが頼りだ。目で合図をすると素早く動き出し、衛兵を呼んで来ると言って廊下を走って行った。


 俺は、その間もシルビの傍を離れない。守るって決めたからな。


 その後、駆け付けた伯爵家の衛兵にナルジェ、アンジャンテ、セバスは捕まり、更にナルジェの実家についても調べる必要があったので、王国の憲兵に引き渡されていった。


 その後に聞いた話では、ナルジェの実家は事業に失敗し多額の借金を作ってしまっていた。このままでは伯爵家の存続も危ぶまれる事態まで来ており、ハンプシャー家からお金を盗って補完していた状態だったようだ。


 アンジャンテは、闇博打で作った借金に多額の浪費で首が回らなくなっており、その返済に金を盗っていたことが分かった。ついでに、アンジャンテには市井に隠し子までいることが発覚した。


 次にセバスだが、セバスはナルジェの実家で雇われた形で、ナルジェと一緒にハンプシャー家に来ていたが、実態はナルジェの実家がお金を借りている大商会の取り立て屋だった。


 で、最後にヨハンだ。伯爵と言う立場でありながら、領地運営をすべて丸投げし、まんまと良いように騙され、実の娘と言えども伯爵家の令嬢に、あらぬ罪を被せることに加担してしまったのだ。国も自体を重く受け止め、国王直々に引責を言い渡された。


 これで、ハンプシャー家は当主をヨハンから、シルビアーナへと代替わりすることになった。とは言っても筆頭執事も罪人で資金もあちらこちらと盗まれ、帳簿もいい加減なことしか書かれていないため、収支の全貌を見直すことから始めないといけない状態であった。


 本来、国には領地運営について監督責任は無いのだが、他の上位貴族まで絡んだ横領事件および窃盗事件であったため、特別に監査人が派遣され、徹底的に調べ上げたうえで、クリーンな状態でシルビアーナに引き継がれることになった。


 ふーー。これで俺も安心してシルビの横にいられるな。

 ヨハンには、俺のことで余計なことをしゃべらないように、()()()()()()()しておいたからきっと大丈夫だ。


 さぁって、昼寝でもするか。

 シルビの執務室に置かれたバスケットの中で、真っ白な仔猫が大きな

 あくびをしていた。



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