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召喚士の休日  作者: ittpg(三崎 まき)
第6話 一条の水
69/228

4.ロッドがいい! ☆

「おっ、久しぶりの民家だな」

 手綱を引いていたハルがシールに声を掛けた。前方、眼下の森のそばに、一軒の石造りの家が見える。ハルは『民家』と表現したが、単なる住居にしては立派な造りだ。



挿絵(By みてみん)


 坂を下り切ると、掲げられている看板が目に入った。二重の円の上、交差する剣と槍の意匠(デザイン)

「武器屋だな。リリィ、ちょっと寄っていっていいか?弓や矢尻でいいものがあったら物色してぇ。金もあるしな」

 ニヤけながらハルは腰の巾着を叩く。「いいわよ」とリリィも答えた。

「シールにも護身用の短剣ぐらい持たせたいわね。ナイフじゃ心もとないから」

「あたしはリリィみたいなロッドがいい!」

 ロバの上から幼い魔導士が反論した。魔法を操る者の端くれとして、「らしい」得物を手にしたいのだろう。それを聞いたハルは、リリィのロッドを指してハハハと笑った。

「シール、こいつのやつは魔法関係ねーって。こいつは『殴り魔導師』だから」

 『殴り魔導師』とは、魔導の者であるにもかかわらず、それを駆使せず腕力にモノを言わせる手合いを指す言葉だ。揶揄にも使えるし、本職以外の技能(スキル)に長けた者に対するちょっとした敬意(リスペクト)を込めて使われることもある。リリィは内心自分を嗤った。ハルには『ロッド使い』やら『殴り魔導師』やら、好きなように言われている。当たらずとも遠からず。抗弁する気も起きない。


 そしてこのロッド―――

 思えばこれは、初めての任務成功報酬としてマクベスから下賜されたものだった。彼は「ロッドを賜ろう」と勿体つけたが、正直何の魔力もない。ハルが言ったとおり、ただの金属の(スティック)だ。それをリリィが改造した。打撃力が増すよう、先端に(はがね)の塊を付けた。もう一方の端は槍として使うため、穂を差した。握る手が滑らないよう中心付近には皮を巻き、運搬時に肩に担げるようベルトを渡した。


 そのロッドに羨望の眼差しを向けるシールを彼女はなだめた。

「四精使いはロッドを使わない。胸のペンダント、それが武器のようなものよ」

「そ、そうなんだ……」

 彼女は胸に手を当てた。少し母のことを思い出したか。

「さ、入ろうぜ」

 ハルがロバを店の前に繋いだ。そして鞍の上のシールを降ろした。


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