1.剣を求める者 ☆
■物語の舞台
風使いの少女・シールを仲間に加えたリリィは、アーチャーのハルと三人でザカヴァを発ちます。王都に向かう船に乗るため、彼女たちは港町・クラナックを目指します。その道中、一軒の武器屋を見つけます。
■登場人物
・リリィ
召喚士の少女。死霊を宿していた右腕と共に召喚能力を失うが、ロッドと剣の腕前は健在。失った『力』を取り戻すため、王都を目指す。
・ハル
アーチャーの少女。三本の矢を同時に放つ曲芸撃ちの名手。リリィのしもべとして、リリィの旅の伴侶となる。
・シール
たおやかな銀髪をもつ風使いの幼い少女。マクベス国の将軍の娘。リリィ、ハルと行動を共にするようになる。
・ロリアン
街道沿いの武器屋の若旦那。
・ニーナ
ロリアンの妻。夫と共に店を切り盛りする。
・グスタフ=カッシニ
史上最も偉大と言われた刀鍛冶。リリィの腰の物、『スティグナ=ディ=アクエリア』を鍛えた。
■その他
・1ルート(複数形『ルーテ』)
距離の単位。約1.8メートル
・1カロルーテ
距離の単位。1カロルーテ=1,000ルーテ≒1.8キロメートル
・1ソータ(複数形『ソリタ』)
通貨の単位。約0.5円。ただし食料や日用品は、我々の世界より概して安価。
丸まった背中は、火鉢に入れた炭で暖を採っていた。
ちぢれた黒髪。その下、襟元にファーをあしらった革製の上着。二の腕の袖ははち切れんばかりに膨らんでいる。肩幅もたっぷりで、男の頑強な体躯を想像させる。
深閑とした初冬の夜。時を止めた静寂に沈む小屋。釣り下げられたたったひとつのランプ。その光が照らす屋内は狭い。人ひとりが寝泊まりするのがやっとか。ただでさえ狭いのに、入り口の土間は不釣り合いに広い。
その土間に映る、ぼやけた男の影。岩のような体を不格好に膨張させたその黒い染みを、サンダルの足が踏む。薄汚れたローブの裾から覗く短い指。長らくむき出しのまま過ごしているのか。爪は傷付き、摺ったガラスのようだ。その爪先の前に、ロッドの先端が突き立つ。
「ついに来おったか」
「注文はいいかしら」
男の背に聞こえるのは、およそこのような場所にはふさわしくない、幼い少女の声。
「……聞こう」
「剣を造ってほしいの」
「どのような?」
「そうね……最高の。かつて世に在らざる、最高の剣よ」
「それだけか?」
「注文はそれだけね。不十分かしら?」
男はくっ、くっと二度肩を震わせた。そして哄笑した。
「ぐははははは!……面白い!高くつくぞ、お嬢ちゃん!」




