表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚士の休日  作者: ittpg(三崎 まき)
第5話 清算
54/228

1.まほうのれんしゅう (2) ☆


 ※


 まばらな森を奥に進むと、石造りの立派な家屋が現れた。この地方でこんな家に住むのは、それなりの地位身分の者だ。ハルが目を見張った。


「すげぇ家に住んでんな!」

「入って入って!」

 少女が指さす扉は板張りで、金具で補強されていた。表面は丁寧に加工され、ニスが塗られていた。「ピカピカじゃねぇか!」、ハルが物珍しそうに表面を撫でた。おねぇちゃん、あけられないよ、おお、悪ぃ悪ぃ、そんなやり取りをしながら、リリィとハルは中へ促された。



 ※


 少女はふたりを客間に通した。

 割ると流紋が現れる、ラダンダイトと呼ばれる石材で作られた華美なテーブル。毛皮に綿を詰めたふかふかのソファ。窓枠には、庶民の家にはほぼ見られない窓ガラスがはめられている。


「おっ、弓掛けもあるじゃねぇか!借りるぜ!」

 壁に組み上げられたそれをハルが目ざとく見つけた。加工された木材ではなく、木の幹や枝を自然のまま組み合わせている。装飾性も兼ねた造りだ。

「おとうさんがつくったの!おとうさんは軍人だったんだよ」

 自慢げに両腕を広げる少女。だがリリィは、『軍人()()()』という過去形が気になった。屋内に少女以外の人気(ひとけ)がないのも引っ掛かる。

「軍人だった?」

 リリィが聞くと、少女は声を落とした。

「きょねんたたかいで死んじゃったけどね」

「お母さんは?」

「まちに出て帰ってこない。あ、おてがみはちゃんとくれるよ!食べものもおくってくれるし」

 別に自分を捨てたわけではないと母を庇う少女。名はウラーヌと言うらしい。リリィは悟った。寂しいんだろうな……だから自分たちを家に招いた。


 少女は家の中を案内した。屋内は客間以外は質素で、軍人だったらしい、彼女の父の人柄が偲ばれた。

「おねえちゃんたち、おなかすいてない?ごはん作ってあげるよ」

「お、おう、わりぃな」

「手伝うわ」

 リリィが言うと、少女は肩の前で手を左右に振った。

「いいよ、おねえちゃんは手が()()()()でしょ?」

「あたいが手伝うぜ」

「悪いわね」



挿絵(By みてみん)


 調理は少女とハルのふたりですることになった。

「おねえちゃん!やさいはもっとこまかく切って!あっ、それまだにえてない!」

 ハルの雑な仕事ぶりを叱る少女の声が厨房にこだまする。だがその声もどこか楽しげだ。賑やかな食事の準備は久々なのか。手持無沙汰に食材を見ていたリリィが尋ねた。

「このあたりの森で採れるものも多いわね。自分で探してるの?」

「うん!日もちしないものは自分でとってきてるよ」

 野山に自生する食用の植物に関する知識はそれなりにあるとリリィは推察した。

()()()()の人もときどき食べものをもってきてくれたり、おせわしにきてくれる。おかあさんにたのまれてるんだって」

 だから召使いもいないのか。料理するふたりを見ながらリリィは自己紹介する。

「言い遅れたけど、私はリリィ。そっちはハル」

「あたしはエルシール。()()()()はコーリンベル。シールってよんで」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ