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召喚士の休日  作者: ittpg(三崎 まき)
第5話 清算
53/228

1.まほうのれんしゅう (1) ☆

■物語の舞台

挿絵(By みてみん)

アーチャーの少女・ハルを道連れに加えたリリィは、東方諸候領の中心都市・ザカヴァを目指します。その途中で、魔法の練習をしている幼い少女と出逢います。


■登場人物

・リリィ

 召喚士の少女。死霊を宿していた右腕と共に召喚能力を失うが、ロッドと剣の腕前は健在。


・ハル

 アーチャーの少女。三本の矢を同時に放つ曲芸撃ちの名手。リリィのしもべとして、リリィの旅の伴侶となる。


・シール

挿絵(By みてみん)

 マクベス国の将軍の娘。たおやかな銀髪をもつ幼い少女。『魔法使い』を自称する。


・マクベス

 東方諸候領を統一した王。かつて幼い日のリリィを傭兵として使役した。


・ウラーヌ

 シールの母。


■その他

・ミンナ

 炊いた穀物を丸めて固めた携行食料。我々の世界で言うところのおにぎり。


・セクタンギ

 高く真っ直ぐ伸びる種類の高木。


・1ルート(複数形『ルーテ』)

 距離の単位。約1.8メートル


・1カロルーテ

 距離の単位。1カロルーテ=1,000ルーテ≒1.8キロメートル


・1ソータ(複数形『ソリタ』)

 通貨の単位。約0.5円。ただし食料や日用品は、我々の世界より概して安価。



「フラーム!フラーム!」


 春に包まれた街道。木漏れ日が光の粒となって舞い降る中、並んで歩くリリィとハルの足を、不意に飛んでくる声が止める。


「フラーム!フラーム!」


 顔を見合わせるふたり。声は何度も聞こえる。ころころと手のひらの上を転がるような、幼い少女の声だ。

「なんだ?なんだ?」

 声は傍らの森の中からする。ハルは好奇心を抑えられない。木立のあいだを覗き込む。そしてリリィも、その言葉(ワード)が引っ掛かった。『フラーム』は古グル語。かつては自らも召喚に用いた語だ。


 ハルが道を外れ、胸の高さほどの下草を分け始める。リリィもあとを追う。草を掻く音を、次第に近くなる声が押し戻す。茂みがほどなく拓ける。



挿絵(By みてみん)


「……………」

 現れたのは、小部屋のような森の中の空間。

 その場所で、ひとりの少女が両腕を前に突き出している。歳のころは十くらいだろうか。濃緑のドレスに白の肩掛け。腰帯と大きなリボン。整った服装は、それなりの地位の者の子女に見える。

 そして何と言っても一目で見る者の息を呑ませるのは、吹き下ろす息吹のようなたおやかな銀髪。緩い曲線を描き、肩の下まで垂れる。この年代の少女にしては長い。そんな少女が、大きく息を吸い込み、おちょぼ口を開いて声を張り上げている。


「フラーム!フラーム!あっ、けむりがでた!フラーム!フラーム!あれぇ……?」

 なかなかうまくいかないようだ。



「魔法の練習?」

 リリィが声をかけた。突然の来訪者に驚く少女。だが草むらから覗くふたつの顔に気付くと、少女は相好を崩した。

「うん!シールはね、まほうつかいなの!」

 愛らしい丸顔に、利発そうな白銀の眉。『魔法使い』と称する声は誇らしげだ。だが、少女はすぐに声を落とした。

「……でもね、なかなかうまくいかないの」

 

 ハルとリリィが草むらを抜ける。ローブにロッド、現れたリリィの出で立ちに少女は目の輝きを取り戻す。

「ねえねえ、おねえちゃんももしかしてまほうつかい?まほうだせる?」

 リリィは腰の麻袋の紐を解く。そして中から黒ずんだものを取り出す。

「ひっ!」

 少女が身を引く。リリィが示したのは、自らの右腕。彼女はそれを、短くなった腕の先にあてがった。

「これがつながってたころは使えたけどね。今はできない」

 まずいことを聞いたと思ったのか。少女は申し訳なさそうに眉を下げた。

「いたくないの?」

「今は痛くないわよ」

 穏やかな表情でリリィが答えると、少女の顔に笑みが戻った。

「ねえねえ、おねえちゃんたち、うちによっていかない?」

 ハルを見るリリィ。いいんじゃね?……ハルは表情で答えた。



 ※


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