表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚士の休日  作者: ittpg(三崎 まき)
第9話 任務
112/228

9.引っ越し ☆

 暑さが収まり、秋になると、シールの体調も回復した。ただリリィは、当面彼女を任務には参加させないことにした。


 王国のおふれに記された期限である()の月が終わり、(とお)の月になった。

 少数ながら、頑強に抵抗を続けるならず者集団は残っていた。残党壊滅に前のめりになった王国は、ザヅツに指示し、それらにリリィ中隊を差し向けた。そして徹底的に叩きのめした。秋が深まるころには、王都周辺から南部にわたる地域の悪党はほぼ壊滅した。

 リリィの功績に、王国は褒美を取らせることにした。望む品をザヅツに聞かれた彼女は、王立図書館へ立ち入る自由を要求した。

「そんなもので良いのか?蔵書には写本が王城外で読めるものも多いぞ」

 ザヅツは念を押したが、彼女は「構わないわ」と意に介さなかった。

 また彼女は、乗馬を練習できる環境を求めた。ザヅツがかけ合い、調練所内の馬場と馬を使えるようになった。馬の世話は調練所がしてくれるため、手ぶらで訪れても練習できる手軽さにリリィは喜んだ。暇を持て余していたケスランが手ほどきをしてくれた。



 ※


「忘れ物はないかい?」

 下宿の階段を下りてきたリリィとシールにエレナが声をかけた。リリィは「大丈夫よ」と答え、そのまま外に出た。彼女は西方の民族衣装姿だった。カムジャンでの作戦で汚れたため、また買い直していた。


 荷物を迎えの馬車に積み、ハルが振り向いた。リリィとシールが下宿から出てきたところだった。ふたりに続き、エレナも通りに顔を出した。日が低くなり、向かいの建物の影が、古びた三階建てのメゾネットにもたれかかっていた。


「世話になったな」

 ハルは矢籠を背に掛け、弓を手にしていた。エレナは寂しそうな眼を見せたが、すぐに豪快な笑いで掻き消した。

「なあに、居場所がなくなったらいつでも戻ってきな!満室でも一部屋ぐらい叩き出して空けてやるよ」

 ははは、とハルは声を立てた。

「道場の帰りにはちょくちょく寄らせてもらうぜ」

「ああ、そうしな。夕食を食べていってもいいよ」


 身の安全も考えたザヅツの計らいで、三人は居をエンベロペ内に移すことになった。

 農閑期になり、エレナの下宿は出稼ぎの者で埋まるようになった。以前のような静かな環境ではなくなりつつあったため、リリィは喜んだが、ハルは名残惜しそうだった。


挿絵(By みてみん)


 御者の合図に、二頭立ての馬車が土を蹴った。ハルとシールは、エレナの姿が見えなくなるまで幌の中から手を振っていた。


 新居は王城の北西、エンベロペのすぐ手前だった。二階建てで、城に勤める役人たちの宿舎だった。ナカの道場は遠くなったが、馬車による送迎付きとなった。ずいぶんな身分だが、エンベロペの外に出るには事前の届け出が必要になり、ハルは窮屈そうだった。円城内での行動は自由だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ