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召喚士の休日  作者: ittpg(三崎 まき)
第9話 任務
106/228

4.荒野の作戦 (2) ☆


 ※


「ガハハハハ、もう一声言ってくれよ」

「それでは八十万ソリタで」


 煌々とランプの炊かれた屋内では、野盗と商人たちが取引していた。床にずらりと並ぶのは、剣や鎧などの装備品、貴金属や壺、水差しと言った調度品。追いはぎや強盗で集めた物だろう。

 野盗たちの中央に胡坐(あぐら)をかくのは首領格か。岩のような体にプレートメイルをまとっている。左右と後ろに手下たち。首領の正面では、四人の商人が這いつくばって品定めしている。



「ん……?」

 首領の男が不意に真顔になった。

 ガタガタとガラスが鳴る。彼は目を上げる。そして正面に並ぶ窓を凝視する。どのガラスにも、映るのは夜の闇だけ。だがボスのただならぬ様子に緊張が走る。静まる室内。全ての者が聴覚を研ぎ澄ます。野盗たちと違い、警戒心の薄い商人たちは、何事かと締まらない顔で視線をさまよわせる。


 ザーッと壁が鳴った。風に煽られた砂粒が壁を叩く音にも聞こえた。

「砂嵐、か……?」

「風ですかね?見てきやしょう」

 ボスの機嫌取りに、側の男が立ち上がった。彼は戸口に歩み寄り、かんぬきを外した。そして扉を外に押し開いた。その瞬間。


 ガシャガシャガシャァァァン!!


「!?……」


 商人も野盗たちも、起こったことを理解できなかった。

 けたたましい金属音と共に、眼前を何か大きなものが横切った。床に並んでいた盗品が飛び散った。咄嗟に顔を覆う。そして腕を降ろした時……布敷の上には、男が横たわっていた。先ほど様子を見に行った者だ。仰向けで、両脚をそろえて戸口に向けていた。顔は地獄でも覗いたかのように歪み、白目をむいて動かない。喉が潰れ、口からは血を吐いている。


「ひいいっ!」

 商人たちが悲鳴を上げる。

「何だ!?」

 首領は恐る恐る首を回す。


「お前は……誰だ?」

「……………」


挿絵(By みてみん)


 戸口に立っていたのは、ひとりの少女。

 濃紺の軍服に身を包んだ黒髪の人影は、左腕でロッドを突き出していた。先端の禍々しい金属塊は、ちょうど今、吹き飛んで来た男の喉の高さにあった。


「こんばんわ。お邪魔するわ」


「何奴ーーーーーーーッ!」

 小馬鹿にしたような少女の目に、ひとりの大男が激昂する。立ち上がりざまに曲刀を抜き、少女に挑み掛かる。しかし少女に動じる様子はない。事もなげに、ロッドを左右に一閃する。


「グエェェッ!」


 鋼の塊が胴を打つ。体が壁まで吹き飛ぶ。手を離れた曲刀が勢いで前に飛び、扉の横に突き刺さる。


「ひいいいっ!」

 屈強な荒くれ者が一撃で倒されるさまに、腰を抜かした商人たちは四つん這いで逃げ始めた。金貨の入った麻袋を引っつかみ、裏口からの脱出を試みる。だがその行く手は、闇夜に整列する濃紺の軍団に阻まれる。


「ヒッ!」

「腹ばいになって地に伏せろ!」

「あ、あ……」

「腹ばいになって地に伏せろと言っている!!」

 商人たちを、幾本もの長剣が取り囲む。半月の光が切っ先から手元に走る。

「お、お助けを!」

 商人たちは麻袋を放り出し、荒野に這いつくばった。



 ※


「おのれぇぇぇっ!」

 仲間を倒され、ひとりでは敵わないと思ったか。四人の男が一斉に立ち上がった。彼らは剣やダガーを手に少女に襲い掛かった。だが再びロッドが一閃。全員をまとめて壁に叩き付けた。先端の直撃を受けた男の腹は裂け、はらわたを噴いた。


「クソッ!」

 薙がれた男たちの後ろからナイフが飛ぶ。投げナイフを得手とする者か。両手で二本ずつ、計四本。だが少女はひるまない。すぐさまロッドを一回転。全てをはたき落とす。

「なっ!」

 驚愕する男に、少女はニヤリと笑って足を踏み出す。


「ば、バケモノだァ!!」

「お頭ぁぁッ!」


「貴様アアアアアアアーーーーーッ!!」


 首領が腰を上げた。戦斧を手にした巨躯が少女の行く手を阻む。

「うおおおおおおおおおおッ!!」

 彼は横に振りかぶった。上段に構えては曲刀の男の二の舞になると思ったのだろう。襲い掛かる凶刃を少女は身を伏せかわす。ロッドを置き、腰の剣を抜く。そしてすぐさま横にひと払い。両足首を切断する。闘技大会でオーク男相手に繰り出したものと同じ戦法だ。

「イギイイイイイイッ!!グオアアアアアアッ!イガアアアアッ!!」

 激痛に絶叫し、崩れ落ちる巨体。勝負あったか。部下たちは背を向け、裏口に殺到した。

「ヒエエエエッ!」

「に、逃げろォォッ!」

「逃がすもんですか!」


挿絵(By みてみん)


 少女は身を起こす。首領の首に剣を突き立てとどめを刺すと、左腕をひと振り。その剣を投げつけた。回転する長剣は、逃げる下っ端たちを次々と斬り裂く。

「グワアアアッ!」

「ヒギイイッ!」

「グエエエエッ!」

 胴を裂かれ、血しぶきを上げて崩れ落ちる男たち。少女は再びロッドを取り、血と死体のカーペットを踏み進む。残っているのは腰を抜かし、逃げることすらできずへたり込む数名のみ。

「い、命だけはお助けを……」

「ふん!」


 グシャッ、ズチャッ、デュシュッ……

 肉と骨を打つ音が響き、やがてアジトは沈黙した。

 ……………


??「もう全部あいつ(リリィ)一人でいいんじゃないかな……」

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