表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚士の休日  作者: ittpg(三崎 まき)
第8話 王都の黄昏
100/228

11.息子さんと働くぜ ☆

 復路の馬車は、往路とは逆、城門から見て右手の坂路を登った。円城壁を出、スロープを下ると、にぎやかな街の東のエリアを走った。

 人々は、朝とは逆向きに流れていた。馬車は目抜き通りから路地に入り、ほどなく止まった。酒場の前だった。酒場と言っても、場末感はない。ザヅツのチョイスか、それともケスランとかいう男の趣味か。それなりの店構えだ。


「ここから先は私ひとりでいいわ。あなたたちは部屋に戻ってて頂戴」

 石畳にロッドを突いたリリィは、ハルとシールにそう告げた。リリィは御者に下宿の場所を伝え、出発させた。



 ※


挿絵(By みてみん)


「あら、お帰り。まじない師ちゃんは一緒じゃないのかい?」

 ハルとシールが下宿に戻った時、エレナはカウンターの奥で針仕事をしていた。シーツを繕っているようだった。「あいつはまだ仕事だ」、ハルはそう言ってカウンターにもたれかかった。エレナを見下ろす顔は、秘密を知った子供のようにニヤニヤしていた。早く口を開きたくてたまらないと言った(てい)だ。


「息子さんに会ったぜ。下で働くことになった」

 エレナは驚き顔だ。だが、こちらも負けてはいない。すぐに口元を吊り上げた。

「そうかい。お城で給仕でもするのかい?」

「はははは」

 エレナの口調は冗談に聞こえなかった。彼女は息子の仕事内容を知らないのだろう。だとすれば、ここは合わせておいた方がいい……そう考えながらハルが「エレナさんは城に行ったことないのか?」と聞くと、婦人は右手を振った。

「お城どころか、生まれてこの方、エンベロペの中にも入ったことないね」

「えっ、マジ?」

 息子が城勤めなのに……あの城壁は、それほどまでに厳然としたものなのか。ハルは痛感した。


 エレナが針山に針を刺した。そして縫っていたシーツを畳んだ。

「あんたたち、夕食がまだなら作ってやってもいいよ」

 ここに来た日に彼女が説明したとおり、食事を頼むなら本来は事前予約が必要で、当然有料だ。ただ彼女は、リリィたちに何かと便宜を図っていた。彼女がリリィたちから食事代を取ったこともなかった。

「おお、出かけるのも面倒だし助かるぜ!腹が減ってたんだ」

「出来たら呼んでやるよ。部屋で休んでな」

「わりぃな」

 目くばせし、ハルはカウンターから離れた。そして階段を上がろうとしたその時。背中がエレナの声を聞いた。先ほどとは違う、低く抑えた声だ。


「……危ない橋は渡るんじゃないよ。困ったことがあったら息子に相談するんだよ」

「……………」


(やっぱり……知ってたんだな)


 彼女は振り返らず、弓を持った左手を上げて了解を示した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ