第四十話
アルージェは完成した短剣を手に持ち素振りをする。
やはり触れていない時間が長かったので少し腕が鈍っていた。
完璧とは言えない出来だったが、店主が近づいてきて
「見せてもらえないだろうか」そういうのでアルージェは短剣を店主に渡す。
店主は短剣をさまざまな角度から見て「こ、これは、あぁ、なんて品だ、こんなものどうしたらいいんだ」等と嘆きが聞こえた。
やっぱり本職の鍛治師には完璧じゃないってバレるかぁ、そんなふうに、考えていたが
「これを売ってくれ!頼む!」と頭を下げられた。
「いや、あの、ちょっと待ってください」というと店主は焦った様子で、
「頼む!言い値で買おう!いくら出せば譲ってくれるんだ!」と食い下がる。
「店主さん落ち着いてください!」
尚も店主はアルージェから離れようとしない
「初めに言ってたじゃないですか、売り物になるなら譲りますって、だから離れてくださいって!」
アルージェは逃げようとするが、ガッチリとホールドされていた。
「本当に譲ってくれるのか!?いくらだ!?いくらで譲ってくれるんだ!?」
「タダでいいです!タダでいいですから!離してくださいって!」
「タダだって!?そんなわけあるか!これほどの傑作がタダなんてそれはありえない!俺を騙そうってんだな?そうはいかないぞ!」
アルージェにはもう何がどうなっているのか訳がわからなかった。
「あっ、なら、僕冒険者始めたんですけど、武器の修理とかできるところがなくて、ここの工房空いてる時に使わせてもらえないですか?」
「そんなことでいいのか!?当たり前だ!もういっそ、いつでも使ってくれ!」
「いや、それは仕事にならないでしょ、ハハハ」
乾いた笑いが出る。
「おぉそうだ、坊主聞きてぇことがあるんだがいいか?」
急に人が変わるじゃないかと思ったが口に出さずに
「なんですか?」
「いや、グレンデっていう鍛治師を知らないかと思ったんだが、知ってる訳ないよな??」
「あぁ、人違いかもしれないですが、僕の師匠と同じ名前ですね」
その言葉を聞いて、店主は足の力が抜けそうになったがなんとか持ち堪えて
「そうか」とだけ答えた。
世間ではグレンデは死んだとされていた。
消息不明になって早十年以上が経過していた、この十年の間一度も名前が出てこなかったからだ。
いまだにグレンデが作成した武器に熱狂的なファンがおり、オークションに出るとかなり高額で取引されている。
多分この事実を公表すれば、グレンデを探し出そうと躍起になるものも出るだろう、
だが、店主は何も聞かなかったことにしようと決めた。
「あっ、もう外が暗くなり始めてるや、そろそろ帰らないと! ありがとうございました! 久々に武器作れて楽しかったです!んじゃ作ったものは置いていきますね!また修理とかの時来ますね!」
そう言うと、カウンターの上に作った短剣を置いてルーネに声をかけて鍛冶屋を後にする。
「ルーネ!待たせて悪かったってばー!」
背中に乗せてくれているが、ルーネはお腹が空いて不機嫌だった。
「こんなにかかると思わなかったんだよー」
宿屋の近くについたが、ルーネがこちらを全く見てくれないかなり不機嫌なようだ。
「あっ!ルーネ!あれ食べたいって言ってなかった!?今日ならあれ買ってあげるよ!」
生クリームのたっぷり入ったパン俗に言うシュークリームである。
今のアルージェたちの生活にはかなり高級品といえるがルーネの機嫌を損ねるのは遠慮したい。
それなら食べたいと言っていたもので釣るのが一番である。
「ガウ!?」
「食べたいって言ってたでしょ?記念すべき初依頼終えたし機嫌直してくれたら買ってあげれるけどなー?」
目をキラキラさせて首を縦に高速で振るルーネ。
「なら、あれ買ってあげるよ!」
嬉しさのあまり、尻尾が高速で回っていた。
「もう、尻尾振るってレベルじゃねぇな!」
「すいませーん、これくださーい」
「らっしゃい!いくつにする?」
「えーと、」ルーネの方を見るといっぱい!いっぱい!と脳内に響く
「あー、ならこれで買えるだけください」
今日の依頼でもらったお金を全て出す。
「おぉ!にいちゃん!ありがとな!もう今日は店閉める予定だったしおまけしとくよ!」
「ありがとうございます!」
「容器はおまけだ!また来てくれよ!!」
そういってかなりの量のシュークリームが入ったバスケットを渡される。
「ルーネ、ほらかえろ?」
「バウ!」
宿屋に戻って、受付で一人前の食事を部屋に持ってきてほしいと頼んで、部屋に戻る。
ルーネはシュークリームを食べて満足したのか床をゴロゴロと転がっていた。
アルージェはカティさんが持ってきてくれたご飯を転がっているルーネを見ながら食べていた。
「機嫌治ってよかったぁ・・・・・」
懐の寒いアイテムボックスをちらりと覗き、「明日も頑張って働かないとな・・・・・いっそ専属の運び屋もありか・・・?いやきっと懐が寒いのは今だけだ」
今後ルーネがお腹空かして不機嫌にならないようにしようと心に決めたアルージェだった。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!
ぜひよろしくお願いします!




