プロローグ1
「自分がもう1人いたらなぁ」とか思ったこと、ありませんか?
ある日、朝起きたら、目の前に自分が居た。
何を言っているのか分からないかもしれないが、文字通り、自分が目の前にいたのだ。もちろん僕は双子などではないので、真っ先に考えられる可能性はそっくりさんが偶然目の前に寝ていただけ、というものになる。しかし、昨日の夜はただ家で一人酒していただけなはずである。自分の他に家に人がいるわけがないのだ。
ということは二日酔いで幻覚でも見ているのか?そう思いながら目の前の僕に触れるとしっかりと実体があるではないか。いや、もしかしたらやはり幻覚で、クッションか何かを触っているだけなのかもしれない。そんなことを考えていると、目の前で寝ていた僕が起きた。
「…あれ?僕1号と一緒じゃなくて単体で寝てたんだ。」
目の前の僕はそう言った。1号?何のことだ?それに単体ってどういうことだ?隣に寝ていたんだから一緒には寝ていたよな…?全く状況がつかめないでいると、目の前の僕が続けて口を開く。
「ねえ、1号の中に戻っていい?」
本当に訳が分からない。頭に大量の疑問符を浮かべていると、目の前の僕が突然溶けるかのように形を崩し、ドロドロになってしまった。その様はまるで、スライムのようであった。
あまりにも状況がつかめず、僕はフリーズしてしまった。いや、うん…。さすがに幻覚だよな…?目の前の状況があまりにも非現実的すぎて、脳の処理が追い付かない。そんな中、目の前にいるスライム化した僕は僕に近づいてくる。そして僕の体に触れると、そのまま僕に吸い込まれるようにして消えたのであった。
この一連の出来事を僕は奇妙に感じた。いや、こんなことが起きて何も思わない人なんていないだろう。しかし、やはり現実的な出来事ではないので、これは夢、または幻覚だったということにしてその日1日を過ごしたのであった。
いざ自分が目の前にもう1人いたらびっくりするよね。