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精霊の加護051 精霊魔法の披露

精霊の加護

Zu-Y


№51 精霊魔法の披露


 翌日、再び東部公爵様からお召しが掛かったので、すぐに王宮に出向き、王宮の控室で待っていると、ふたりを引き連れた偉そうな人がやって来た。


「そなたがゲオルクだな。わが文を袖にするとはいい度胸だ。」おっといきなり喧嘩腰?わが文を袖にしたってことは侍従長とやらか。

「いきなりご挨拶だな。俺はあんたなんか知らねぇよ。」

「無礼な!」「侍従長に何たる物言い。」取り巻きがいきり立つ。

「この間抜け面が侍従長か?王家も意外と人がいないなぁ。」

「なんだと?」


「侍従長、あんたの文と言うのは王宮まで顔を出せと言って来たやつだな?俺が東部公爵様お抱えと知ってのことか?あの文は東部公爵様に差し出したが、公爵様は引き抜きに不快感を示しておられたぞ。」

「それは真か?べ、別に引き抜きなどを画策した訳ではないのだ。」

「裏で宰相様が糸を引いてたそうだな。」

「え?…いや、あれはわしの一存で…、その…なんだ。宰相様は、…関係ないのだ。」侍従長がキョドってる。笑

「ふーん、そうなのか。しかしなぁ、その点について東部公爵様は、すでに宰相様に苦情を入れたぞ。」

「なんだと?」

「あんたが言う通り宰相様は『知らぬ。』の一点張りだったそうだ。あんた、宰相様から切り捨てられたんじゃないのか?」

「まさか。」


「東部公爵様は、宰相様に釘を刺して終わらせるつもりだったようだが、あんたがこうして蒸し返して来たんじゃぁ、俺も東部公爵様にご報告せねばなるまいな。面倒なことだ。」

「待て、待ってくれ。」

「宰相様とは関係ないんだろ?そう言ったよな?」

「くっ…。そうなのだが。しかし…。」

「あんた、実にいいタイミングで来てくれたよ。」

「なんだと?」


「東部公爵様と宰相様は、帝国と教国の工作についての対応の方針で、今、対立してるんだよ。東部公爵様には他の公爵様方も皆、同意されていてな、宰相様は孤立無援なんだ。そんな微妙なときに、あんたが宰相様の意を受けて俺を引き抜きに来た。これが東部公爵様に知れたらどうなると思う?」

「え?…どうなるのだ?」

「東部公爵様は、宰相様を追い詰める口実を得る訳だよ。それで公爵様が宰相様に詰め寄るだろ?当然宰相様は知らぬ存ぜぬだよな。すると公爵様は、あんたが独断で俺を引き抜こうとしたと言うことで、あんたを侍従長から更迭するだろうな。もしかすると王宮からの追放も要求されるかもしれないぞ。」

「そんな。」


 絶句する侍従長に腰巾着2名がトドメを刺した。

「侍従長、殿下からお召しの刻限が迫っておりますれば、これにて失礼します。」

「私もそのお手伝いがありますので失礼します。」

 侍従長について来た金魚の糞が退散した。機を見るに敏な奴らだ。笑

「あ~あ、腰巾着にも見捨てられたか。可哀想に。」

「その、なんだ、東部公へのご報告は待ってくれんか?」

「やだよ。あんたを庇う義理はないし、そもそもあんたの俺に対する物言いも見下してるようで気に入らない。」

「…申し訳ありませんでした。この通りです。」侍従長は深々と頭を下げた。


「今更やめてくれ。それに報告しないと俺が東部公爵様を裏切ったことになる。引き抜きを仕掛けて来たあんたを庇ったのがバレたら、俺が公爵様に見限られてしまうじゃないか。」

「引き抜きを仕掛けたのは宰相様の命で、私の一存ではないのだ。」

「じゃぁそれを東部公爵様に申し上げるんだな。」

「え、それは…。」

「そうだな、宰相様から東部公爵様へ寝返ることになる。しかしお前はもう、東部公爵様か宰相様かのどちらかを選ばにゃならん。」

「そんな。」


「なぁ、よく考えろよ。宰相様は、東部公爵様に対して知らぬ存ぜぬで、お前のことを切り捨てたんだぜ。それに宰相様は任期が切れたら終わりだが、東部公爵様は家督をご嫡男に譲るまでずっと公爵様だ。身分も公爵様は宰相様の上。」

「しかし東部公爵様は王都に常駐されないではないか。」

「帝国と教国への対応があるから、当分の間は王都におられることになるぜ。」


「ゲオルクどの、東部公爵様がお召しです。」近衛兵が呼びに来た。

「出迎えありがとう。侍従長も同道するが、いいよな?」

「侍従長がですか?部屋の前までは構いませんが、中に入る許可が下りるかは分かりませんよ。」

「侍従長は急な用件でアポなしだから、ダメならダメで出直すだろうよ。

 な、侍従長。」

「…はい。」侍従長は観念したようだ。


 案内された部屋の間で、近衛兵が侍従長も同道した旨を取り次ぐと、侍従長はそこで待てとのお返事で、俺と精霊たちだけが部屋の中に通された。

 昨日の面々に、若い男がひとりいる。

「ゲオルク、侍従長はまた例の件で来たのだな。」

「お見通しで。」流石に東部公爵様だ。

 東部公爵様はちらっと宰相の方を見る。なるほどね、宰相がいるのでは侍従長も白状しにくいわな。苦笑


「殿下、これなるが精霊魔術師のゲオルクです。」は?殿下?しかも東部公爵様が敬語?殿下って公爵様より身分が上…と言うことは…。

 頭の中が真っ白になる。


「そなたがゲオルクか。今日は微行(しのび)ゆえ畏まらんでよいぞ。」

 俺は面食らって東部公爵様を見る。東部公爵様はにやにやと笑って、

「ゲオルク、殿下は直答を許すとの仰せだ。お答えせよ。」直答を許すって言ってないじゃん!畏まらんでいいってそう言う意味なの?

「初めまして。ゲオルクです。」

「ゲオルク、昨日の切れがないの。」北部公爵様が茶化して来て、公爵様たちが一斉に笑う。

「申し訳ありません。」そりゃ無理ってもんだろ。予め教えといてくれよなー。って言いたい!


「そのお子たちが精霊たちか?」精霊たちは皆、俺の陰に隠れたが、6人もいっぺんに隠れられる訳がない。

「はい。人見知りでして、申し訳ありません。」ツリがまたごにょごにょと耳元で囁いた。

「精霊は今、そなたに何と申したぞ?」殿下が聞いて来た。

「されば、『今日はおっさんたちの中に若いのがいる。』と申しております。」

「わはははは。諸公に宰相よ、精霊たちに言わせると、そなたらはおっさんだそうだ。」王太子殿下が快活に笑った。4人の公爵様たちと宰相様は苦笑いするしかない。


「ゲオルク、今日はな、王太子殿下が内々に精霊魔法をご検分なさりたいとの仰せだ。よいな。」

「はぁ。構いませんがどこで行いますか?流石に室内と言う訳には行きませんので。」

「それなら安心せよ。当然、宮廷魔術師の訓練場を押さえている。」王太子殿下がなぜかドヤ顔で言って来て、俺たちは訓練場に移動した。


 廊下に出ると侍従長はいなかったので、案内してくれた近衛兵に聞いてみると、流石に廊下に放置はできないので別室に案内したとのことだった。だったら一旦戻って出直せばいいのに。侍従長の仕事って暇なのかな?


 宮廷魔術師の訓練場着くと、そこには数人の宮廷魔術師がいたので、殿下の命で魔法比べとなってしまった。俺は6種類の精霊魔法を披露したが、かなり抑えたにも拘わらず、威力は精霊たちの精霊魔法の方が、宮廷魔術師の魔法よりも格段に上だった。

 そりゃそうだ。魔術師の魔法と精霊魔法では、ハナから比べる方が無茶なのだ。そもそもこの威力の違いのせいでリーゼさんは修業をやり直すと言い出してしまったのだから。


 度肝を抜かれたのは、相手をした宮廷魔術師だけではない。王太子殿下も4人の公爵様も宰相様も一緒で、しきりに感心していた。もっとも精霊魔法を放った後、精霊たちが魔力を補給に来たときは、事情を話している東部公爵様以外の皆様は、唖然としておられたのだが。苦笑


 部屋に戻ってひと息つくと、東部公爵様が切り出した。

「殿下、いかがでしたか?」

「東部公、感謝する。素晴らしいものを見せてもらった。

 ゲオルクも大儀であった。」

「殿下、ゲオルクとその一行、スピリタスを殿下の側近に推挙致したいのですがお受け下さいますか?」

「なんと、このような手練れを東部公は手放すと申すか?」

「はい。われら4公爵家は協力し合って王家を支えるが務め。当家のみが突出した力を持てば4公爵家のバランスは崩れ、協力体制に齟齬が生じるやもしれません。よって、精霊魔法は当家のみで占有するのではなく、王家に献上し、王家より等しく4公爵家に精霊魔法の恩恵を受けるが最善と愚考致します。」

「うむ。東部公の言い分、小気味よし。天晴ぞ。」と殿下が褒め、

「東部公、よき分別よの。」「東部公、感服致した。」「流石だな、東部公。」

 他の公爵様たちが口々に東部公を称える。宰相は黙って聞いていた。以前に聞いた東部公爵様の目論見通りになったな。流石だ。


「ついてはひとつお願いがございます。」

「東部公、何なりと申せ。」

 東部公爵様は、俺たちの待遇について、原則行動は自由で拘束せず、定期的に支援を行うが、緊急時には手伝いに駈け付けると言う条件で召し抱えていたことを殿下に告げ、その待遇を継続して欲しいと願い出てくれた。


「なるほど、それでわが南部の危機に、最優先で駈け付けてくれた訳か。」南部公爵様がしきりに感心している。

「うむ、相分かった。東部公よ、その願い、聞き届けようぞ。」殿下もすんなり承諾してくれた。

「さすれば、ゲオルクは、これより金属の精霊を探しに北部に発ちます。」

「何と、それはまた急だな。」殿下が俺に話を振って来たのでお答えした。

「ええ。一刻も早く、金属の精霊に会いたいのです。」


 部屋を辞すときに、東部公爵様に侍従長の経緯をざっとお話して、そのまま東部公爵様に侍従長のことをお願いした。


 昼過ぎに北府行の定期馬車に乗り込んで王都を発つ。王都から数日掛けて北府に着いた。

 道中、チルが魔力補給に来る回数が増え出したので、第二形態への兆しかもしれない。今夜は北府に宿を取るか。


設定を更新しました。R4/4/17


更新は火木土の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2002hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


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