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精霊の加護042 フィアの第二形態

精霊の加護

Zu-Y


№42 フィアの第二形態


 翌日、俺は精霊たちを連れ、リーゼさんと魔法学院に行った。リーゼさんは攻撃魔法の修行だ。魔法学院は攻撃魔法と、デバフ系支援魔法を学ぶことができる。

 ジュヌさんとカルメンさんは教会に残った。教会は回復系魔法とバフ系支援魔法を学べるので、ジュヌさんは回復魔法、カルメンさんは支援魔法の修行だ。

 ベスさんとビーチェさんは、スノウを連れて騎士団へ行った。スノウを馬場で走らせるのと、自分たちの攻撃スキルの訓練だ。騎士団では、戦闘系のスキルを学べる。


 俺は魔法学院ではリーゼさんとは別行動で、ルードビッヒ教授の研究室で、第二形態に進化したツリとクレの、精霊魔法の威力の増加分の測定、フィアとチルとワラの精霊魔法の確認であった。精霊たちはガンガン精霊魔法をぶっ放しては、俺の所で魔力を補給した。

 結局俺はと言うと、今日は精霊たちとべろちゅーを繰り返していただけのような気がする。


 こんな日が5日程続き、公爵様からは、明後日に東府を発つとのお達しが来た。

 ちなみにこの5日間の特訓で、リーゼさんは中級攻撃魔法の一部、ジュヌさんは中級回復魔法の一部、カルメンさんは中級支援魔法の一部、ベスさんは中級盾スキルの一部、ビーチェさんは中級体術スキルの一部を取得していた。

 俺は魔力放出ができないから、魔法もスキルも取得はできない。泣


 ここ2~3日、あれ?と思っていたのだが、今日は明らかにフィアの様子がおかしい。魔力要求が眼に見えて頻繁になって来たのだ。これはひょっとすると第二形態へ移行するのかもしれん。


 魔法学院から戻り、精霊たちといつものようなシャワーを浴びに行くと、他の4人は平気だが、フィアだけがはぁはぁと息遣いが荒い。やっぱり、ツリやクレが第二形態に進化したときと状況が似ている。精霊を洗うときに、フィアだけ特に入念に洗ってやると、もはやその感じまくる様子から、第二形態への進化の前兆と確信した。


 シャワーから出て、夕餉までの間にベッドで大の字になると、フィアだけが貫頭衣を脱ぎ捨てて潜り込んで来た。そのまま濃厚なキスをして来たが、シャワーのときから何度も魔力補給しているから、満タンのフィアの体はすぐに光り出した。


 おそらくこの後、跨って来る。との予想通り、フィアは俺の顔の上に跨って来た。やはりぐしょぐしょだ。幼女なのに。フィアの要求通り、俺は丹念に舐めまわしてやると、体の輝きが一層増して、人型から球形に戻った。ひと抱えの大きさだった光の球体は、抱えられない大きさにまで膨れ上って、さらに眩く輝いた。その後、球体になっていたフィアは、少女体型の人型を取って現れた。第二形態に進化したのだ。そして光は収まった。


 そのまま抱き付いて来てキスを貪られたが、されるがままにしつつ、俺は矢の矢尻で指先に傷をつけ、血を滲ませてフィアに舐めさせた。ぺろぺろと滲んだ血を舐めたフィアの体は輝き出し、満面の笑みで『満腹ー。』と、満足気に言ったのだった。


 この進化で、フィアによる魔力量上限の加算は、第一形態の1万から第二形態の2万となり、進化時の体液舐めで+5000。俺の魔力量の上限は1万5000上昇して、19万5000となったはずだ。


 ここでいつものひと悶着。

 少女体型になったフィアの貫頭衣は股すれすれになったため、簡易スカートと簡易パンツを作って穿かせた。

『やー、これ、やー。きつーい!』

「でもこれを穿かないと見えちゃうだろ?」

『フィア、平気ー。』

「俺が困るんだよ!」

『ぶー。』このむくれ顔、かわいいなぁ。苦笑


 その晩の夕餉の席では、第二形態に進化したフィアに、大司教様もお姉様方も驚いていた。翌日のルードビッヒ教授の驚き方に比べたら、かわいいものだったが。笑


 翌日、フィアを見たルードビッヒ教授の驚きと悔しがり方は尋常ではなかった。

「ではゲオルク、君は形態進化の前兆を認識していたのだな?」

「はぁ。確信は持てなかったのですが、ツリとクレのときと何となく似てるなぁとは、漠然と思ってました。」

「なぜ言わなかったのだ!」

「すみません、何分あやふやだったもので。違ったら教授に申し訳ないですし。」

「そんなことで遠慮してはいかん。それよりも、私が見逃したことの方を申し訳ないと思いたまえ。そうだ!次はチルか?」

「多分そうだと思います。」


「明日発つのだったな。ぜひとも今晩、進化させてくれたまえ。」おいおい、観察しに来る気かよ!

「いえ、教授。チルはまだ魔力要求の頻度が上がってませんから、まだ進化しません。」

「ならば私も同行する!すぐさま公爵様に、同行を掛け合って来る。」

「いつになるか分かりませんよ。チルに兆候が見られていれば同行するのもいいかもしれませんが…。」

「ううむ。」


「形態進化の詳細は今お話しした通りですし、チルのときもワラのときもしっかり記録を取りますから。」

 幼女相手でまったく欲情していないとは言え、まるで秘め事のようなものを見られるこっちの身にもなって欲しい。絶対にのらりくらりと躱し続けてやる!俺はそう誓ったのだった。


 翌朝、俺たちスピリタスは、出発前に公爵様に呼ばれた。

「公爵様。お召と伺い、参上致しました。」

「おお、よく参った。お前のスピリタスは、ナイスバディの美形揃いと言うではないか。メンバーを紹介せよ。」

「はぁ。」俺は順に紹介した。

「何と、これは聞きしに勝る…。ゲオルク、そなた、隅に置けんのう。

 はて、そなたとそなたは見覚えがあるが、どこぞで会うたかな?」


「私は東府ギルドで受付主席を務めておりました。ギルドマスターのお供で数回お会いしたことがございます。」

「おう、そうであったな。ギルマスの奴め、一番有能な受付を引き抜かれたと嘆いておったが、ゲオルクが犯人であったかよ。」

「滅相もございません。」


「私は北部公爵様が与力、バース伯爵の次女でございます。東部公爵様におかれましては、当家に湯治保養に参られた折にお会いしてございます。」

「おお、バース伯爵の二の姫か。なるほど、バースの湯は格別であったがあの折に会うておったのだな。はて、バース伯爵の二の姫といえば、北府騎士団で名を馳せていたと思うたが、思い違いであったか?」

「いえ、北府騎士団では副長まで拝命しましたが、今は冒険者をしております。」

「何と、ゲオルクよ。そなた、北府騎士団からも引き抜いておったのか?」

「いえ、それは違います。」

「他の者たちはどこから引き抜いたぞ?」おいっ、スルーかい!


「わたくしは、王都ギルドで受付主席を務めておりました。」

「あたしは、西府ギルドで受付主席を務めてました。」

「僕は、南府の宿屋兼レストランで看板娘をやってました。」

「ゲオルクよ、そなた、罪な男よな。この者たちの前の職場に痛手を負わせただけでなく、王都とすべての首府に嘆く男たちを作っておったとはの。」

「それぞれいろいろ事情があるのですが…。でもまぁ、結果的に俺が引き抜いたってことになりますかね。」

「うむ。スピリタスは、余が身のまわりを持ち場とせよ。」このひと言で、公爵様の馬車の護衛となってしまった。


 東部公爵様のお供をして、王都に向けて東府を発った。ちなみにフィアが第二形態になったので、移動時に手を繋ぐのが、ツリ、クレ、フィアで交代、余ったひとりは俺の服の裾を摘まんでいる。両肩はチルとワラになり、帽子はなくなった。笑


 東部公爵様の一行は、総勢300名の大所帯だったが、途中の宿場町には本陣と呼ばれる大きな御用宿があって、すんなり収容していた。

 総勢300名の半分以上は、東府騎士団と東府近衛兵からなる護衛で、これだけ正規軍がいるのに、なぜ冒険者の俺たちまで護衛を仰せつかったのかは、まったくもって不明だ。しかも都府間を結ぶ街道は、常に冒険者が魔物を駆除しているので、非常に安全だ。一行の残りは文官や召使である。


 王都到着の前日の宿場町で、俺は東部公爵様のスイートルームに呼び出された。

「公爵様、お呼びですか?」

「おう、ゲオルク、護衛の任、ご苦労であった。明日、王都で任を解くゆえ、すぐに精霊を探しに旅立て。まずは風の精霊か?」

「はい。リシッチャ島へ風の精霊を探しに行きます。」


「なぜかな?」

「はい。最初に南部の水の精霊が狙われましたので、敵は南部に入る(つて)がある可能性があります。」

「うむ。よく見た。余も同じ考えだ。それとな、王宮からの呼び出しがあるそうだが、それには応えて行くつもりか?」


「いえ、王宮からと言っても侍従長からの呼び出しですので、無視します。公爵様のお抱えとなりましたので、王族のどなたか、あるいは、最低でも宰相様からの呼び出しでないと、応じるべきではないと思っています。」

「それでよい。そなた、思いの外、物事が見えるようだの。」

「いえ、俺の仲間たちからの助言です。」


「なるほどな。ではさらに問おう。

 侍従長は宰相の命でそなたらに声を掛けておる。言わば宰相からの呼び出しのようなものだ。さて、どうする?」

「恐れながらそれは違うと思います。俺に声を掛けて来たのは侍従長で、呼び出しの手紙には、宰相の命を受けているとは、ひと言も書いていませんでした。」

「なるほど、筋が通っているな。しかし、物事には表もあれば裏もある。裏の裏まで考えて申してみよ。」


「本音を申さば、公爵様の、帝国と教国への強硬策を通すのに使えるかと。」

「ほう、どのように使うのだ?」

「公爵様がご提案される強硬策に、直接被害に遭った南部公は同調されましょう。西部公も強硬派ですから同調されると思われます。北部公は普段は穏健派ですが、此度のことについては王国への攻撃ゆえ、強硬策に同調されると思います。唯一、強硬策に反対し、様子見と申して決断を先延ばしにするのは宰相様。それは宰相様が、交易の利を重んずるからです。

 よって最初に公爵様が、『余の家臣を、余に断りもなく召し出そうとするとは何事ぞ。』と宰相様に先制攻撃を仕掛け、宰相様に引け目を負わせて、強硬策へ反対しにくくするのではないかと思います。」

「ゲオルク、いい読みだ。しかし、宰相は知らぬ存ぜぬ。侍従長が勝手にやったこと。と逃げような。それに、侍従長が声を掛けたのは余がそなたを召し抱える前ぞ。いかにする?」


「侍従長を追い込んで、更迭をちらつかせれば、わが身可愛さにすぐ吐きましょう?それに、俺たちを召し抱えることは、とうの昔から内々に決まってたことにしてしまえばよろしいかと。『それが分からぬ宰相でもあるまい。分かった上でのことよな。』と、こんな具合に決め付けて露骨に不快感をお示しになれば、4人の公爵様が同調された強硬策に、宰相様は異を唱えられなくなりましょう。」


 東部公爵様はニヤリと笑って頷いた。

「ゲオルク、それでよい。今ひとつ理由があるが、それも分かるか?」

 他の公爵家からの召し抱えの誘いを封じたいんだろうな。しかし全部言い当てると警戒され兼ねないから惚けるか?

「はて、まだありますか?」

「うむ。他の公爵家からの誘いを思い止まらせるためだな。宰相が裏で手を引いた侍従長の誘いに余が不快感を示したことで、他の公爵家は迂闊にそなたへ声を掛けられなくなる。」

「俺たちスピリタスが、他の公爵様から誘われますかね?」

「誘われような。」

「そうであるなら断る手間が省けますので助かります。」


「左様か。しかしな、スピリタスはいったん余が占有するが、折を見て王家に推挙し、他の公爵家も含めて王国の共有とするつもりだ。さよう心得ておくがよい。」

「はぁ。」将来共有するなら、なぜ他の公爵家に誘わせないようにするんだろ?

「なぜか分かるか?」

「えーっと…。将来共有するのに、しばらくは占有するのですよね。うーん。」マジで分からん。

「ふむ。此度はお惚けではないようだな。」え?さっき惚けたの、見抜かれてたのか?やばっ。汗

「あ、いえ、その…。」


「諸公は、今はただそなたを珍しがってるだけよ。しかしそのうち、そなたの活躍で、そなたを占有する余を、脅威に感じるようになろうな。」

「あ!そうか!…はっ。申し訳ありません。」しまった!公爵様のお言葉を遮ってしまった。

「ふふ、思い至ったか。許す、続きを申してみよ。」

「はい。その、公爵様が他の公爵様から脅威として警戒された頃を見計らって、王家に推挙する形で皆様の共有にされれば、公爵様は皆様からの信が厚くなります。」

「その通りだ。ゲオルクよ、そなた、なかなかの眼力を持っておる。ますます気に入った。王都に入ったら余も多忙になるゆえ、すぐに発つそなたとはしばらくは会えまい。ここで褒美を取らそう。

 例のものをこれへ。」

 お付きの人が何やら袋のようなものを持って来て宣言した。

「東部公爵様より、冒険者ゲオルクとその一党に、異空間収納袋を下賜されるものなり。謹んでお受けせよ。」

「ありがたき幸せ。」

「うむ。大儀であったな。下がってよい。」公爵様との面会は終わった。


 東部公爵様から下賜された異空間収納袋は、スピリタスのメンバーにひとつずつで計6個。空間魔法が付与され、かなりの量を収納できる相当高価な代物だ。

 この異空間収納袋のお陰で、旅の手荷物はぐんと減る。すべて異空間収納袋にぶち込めばいいのだから。それに狩りの獲物なんかも収容できるので、これから相当重宝するだろう。本当にありがたい。


 翌日、王都へ到着すると早々に東部公爵様のもとを辞し、南府行の定期馬車に乗り込んだ。


設定を更新しました。R4/3/27


更新は火木土の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2002hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


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