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精霊の加護040 帰還報告

精霊の加護

Zu-Y


№40 帰還報告


 定期馬車で王都を出て数日、俺たちは東府に着いた。

 取り敢えず東府教会に行き、大司教様と会うことにする。当然のことだが、スピリタスの5人と、精霊5人も一緒だ。スノウも付いて来る。


 東府教会に行き、大司教様に面会を求めると、門前払いを食いそうになったのだが、東府教会大司教直属助祭の身分証を提示したら、取次を頼んだ教会の司祭は掌を返した。まったく下っ端とは言え仮にも教会の司祭がこれでいいのだろうか?大司教様にはしっかりご意見申し上げよう。


 間もなく大司教様が現れた。

「大司教様、ただいま戻りました。」

「おかえり、ゲオルク。おや、精霊が増えてるね。それとふたりは第二形態に進化したか。いろいろご苦労だったね。」

 俺はまず、大司教様に仲間と精霊を紹介した。それから取次の対応について切り出した。

「大司教様、俺は門前払いを食うとこでした。」

「それはすまなかったね。ところでゲオルク、最初に身分証を出さなかったのではないかな?」

「まぁそうですが…。」

「何でもかんでも私に会わせろと言う輩が多いのでね。取次の者にしてみればそう言う対応になってしまうのだよ。最初に身分証を提示しなかったゲオルクにも落ち度があったのではないかな。次からは最初に身分証を提示しなさい。まさかとは思うが、顔パスなどとは思ってないだろうね?」

 そう言われると返す言葉もない。

「すみませんでした。」

「分かればよい。そのつもりのないままに天狗になってはいかんぞ。」

 うん、確かに天狗になってたかもしれん。自重しよう。それにしても流石、大司教様。ご意見するつもりが、逆に戒められてしまった。冷汗

「はい。肝に銘じます。」


「さて、この間の報告を聞くのに、ルードビッヒ教授を呼びに行かせよう。お仲間も含めて部屋を用意するから、教授が着くまで部屋でゆっくりしているといい。此度の逗留は長くなるかな?」

「やっかいな懸案事項があります。それと長引くかは教授次第ですね。」

「はっはっは。確かにそうだな。

 この方たちは私の賓客です。しばらく教会に逗留しますので部屋を用意して下さい。」

 大司教様の指示に、取り巻きの司祭たちがさっと反応した。

「大司教様、ありがとうございます。」

「ゲオルク、分かっているとは思うがここは教会だ。お仲間と羽目を外してくれるなよ。」

「もちろんです。」汗

 一瞬真に受けたが、大司教様のニタニタした顔が、悪戯であったことを物語っている。とは言え、教会内で不謹慎なことはできん。


 俺はひとり部屋、お姉様たちと精霊たちはそれぞれ6人部屋をあてがわれたが、精霊たちの部屋など必要ない。どうせ俺の所に来るのだからな。

 精霊たちは俺と一緒の部屋でいいと精霊部屋を断ると、俺が精霊にあてがわれた6人部屋に回された。ひとり部屋でもよかったんだけどな。まぁ、広いからいいか。


 結局、精霊部屋が俺の部屋となり、そこに皆が集まった。

「ゲオっち、大司教様と知り合いって凄くない?」

「俺の村の神父さんが、大司教様のお師匠さんで、その伝で10歳のときからよくしてもらってるんだよ。」

「うーん、あたしゃ、教会は好きだけどね、しばらく泊まるとなるとちょっと窮屈かな。畏まっちゃうよ。」

「あら、そんなことありませんわ。普通にされてればいいのですのよ。」

「そりゃ、ジュヌは教会育ちだからそうだろうけどさ。」

「そうね、私も宿屋の方がいいかな。いくつか贔屓にしてるところもあるし。」

「うむ。流石、リーゼは地元よな。ちなみに私はどちらでもよいぞ。」

「まぁ、せっかくだから何日か泊めてもらって、それから宿屋に移るってのでもいいんじゃない?」

 そう言うことになった。


 小一時間程して、大司教様の執務室に呼ばれた。ルードビッヒ主任教授が着いたのだ。

「教授、ただいま帰りました。」

「待ちかねたぞ、ゲオルク。ツリとクレは第二形態になったか。それに精霊3体と新たに契約したのだな。この3ヶ月で素晴らしい成果だ。早速だが精霊たちを紹介してくれたまえ。」

「はい。まず、火の精霊フィア、北部火山エリアのリバプのある火の精山で契約しました。次に冷気の精霊チル、北部雪山エリアのセアリュー近くの高原で契約しました。最後に水の精霊ワラ、南部湾の南府沖で契約しました。」

 ルードビッヒ主任教授は、精霊たちには大いに興味を示したが、その後に紹介したお姉様方にはほとんど興味を示さなかった。相変わらず、教授はブレない人だ。苦笑


「新たな3人の精霊魔法が見たい。頼めるか?」

「チルはこの部屋を冷やせばいいとして、フィアとワラは室内ではちょっと。流石にここで火を使ったり、大司教様の執務室を水浸しにする訳にはいかないですよ。」

「では、まずチルの魔法を見せてくれ。そのあと庭に出よう。」

「チル、抑えてな。」俺は室内を冷やすイメージを送った。

『うん。』チルの発する冷気で室内が急速に冷やされた。ちょっとやり過ぎだ。

「うお、真冬の野外のようだ。これはたまらん。」ルードビッヒ主任教授も大司教様もぶるぶる震え出して、コートを着込んだ。

 換気のために部屋の窓とドアを全開にして、俺たちはいったん庭に出た。


「フィア、抑えてな。」俺は火球を打ち上げるイメージを送った。

『うん。』キュルキュルー、ポン。バース伯爵邸でやらかした大花火にはならず、駆け付けて来たバースの衛兵隊に見せた程度の軽いやつだ。

「「おおー。」」教授と大司教様がハモった。

「ワラ、抑えてな。」俺は水流のイメージを送った。

『うん。』ワラが辺りを水浸しにした。

「確かにこれを室内でやられては、片付けが大変だったね。」そう言いつつも、大司教様は微笑んでいた。教授は興奮しつつメモを取っている。ブレない。笑


 部屋に戻るとまだ冷気が少し残っていたが、話を続けた。

「ゲオルク、ツリとワラの第二形態への進化の様子はどうだったのだ?」

「前兆として、頻繁に魔力補給を求めて来るようになります。進化直前には、満タンになってもひたすら補給を求めるようになり、発光したまま発情したようになります。そして濡れた秘部を舐めるように要求し、舐めてやると人型から球体に戻って、その球体が倍ぐらいに大きくなります。第一形態のときの球体はひと抱ですが、第二形態では抱えきれない大きさです。その後、人型に戻るのですが、そのときは幼女ではなく少女でした。」

「なんと!」教授はメモを取りまくっている。


「今後も同じように行くのでしたら、下世話な話ですが、これまで契約した精霊たちが皆、女の子でよかったです。男の子だったら、俺にはそう言う特殊な嗜好はないので、辛いとこでしたね。」

『『『『『それはない。』』』』』

「え?どう言うこと?」

『ゲオルクが男だから、ツリたちは女の子。』

『クレたちは、契約者に合わせた性別になる。』

「じゃあ俺が女だったら?」

『フィアたちは、男の子。』

『チルたち、決まった性別、ない。』

「どっちにもなれるのか?」

『『『『『うん。』』』』』

『ワラたち、男の子にも、なれる。変わろうか?』

「いや、変わらなくていい!ってか、絶対に変わらないで。」

『『『『『うふふ。』』』』』


「精霊に決まった性別がないとは驚きだ。しかも契約者に合わせて変えるとは。新発見だ。素晴らしい。実に素晴らしい。

 ん、まてよ。もしゲオルクがゲイだったら、精霊は男の子なのだろうか?ゲオルク、聞いてみてくれ。」

 それを聞くのはなんかやだな…。

「俺がゲイだったら皆は男の子だった訳?」

『『『『『うん。』』』』』

「なるほどな。魔力の補給が体液を介してだから、契約者が望む性別を取る方が体液の獲得には都合がいい訳だ。実に合理的だ。」教授、メモメモ。ブレない。笑


「そう言えば、新たに3人と契約した訳だから、ゲオルクの魔力量は15万になったのかな?」

「大司教様、最近は測ってませんが、18万のはずです。確認します。

 皆、俺の魔力量っていくつ?」

 精霊たちがふわふわ漂って俺のまわりをクルクルまわった。

『『『『『18万~。』』』』』やはりな。

「ツリとクレが第二形態になったので、加算分がそれぞれ2万です。それからふたりが第二形態に進化するときに、ふたりの体液を舐めてますから、第一形態での加算分の半分である5000がそれぞれ加算されてます。」

「なるほどな。と言うことはだ、第五形態まで行くと、第五形態で+5万、それまでの進化時に、5000、1万、15000、2万で計5万が加算され、総トータル10万が加算されるのだな。」

「そう言うことです、教授。」

「素晴らしい。加算の法則が分かっただけでもまたまた大発見だ。ゲオルクは5人と契約してるから、最終的には+50万で、初期の10万と合わせて60万の魔力量になる訳か。」

「教授、まだ金属の精霊と風の精霊が残ってます。それから、他国には光の精霊と闇の精霊がいるはずです。」

「ふむ、最終的には9体で+90万か。100万になるのだな。」


「ゲオルク、精霊と契約するたびに上限が増えるのであれば、今までマルチの精霊魔術師が出てないのはなぜだ?」

「大司教様、それは潜在能力の上限を超えて魔力量が増えることはないからです。」

「なるほど、過去の精霊魔術師は皆、潜在能力が低かった訳か。」低いと言っても、精霊魔術師になれる時点で、常人よりはべら棒に高いけどね。

「そうですね。おそらく、10万程度だと思われます。」

「ふむ、ゲオルクの潜在能力が突出しているのだな。

 ところで、懸念材料があると申していたと思うが?」


「そのことです。ワラを仲間にした切っ掛けは南府からの指名依頼でした。南部湾の海が荒れたままで収まらなかったので、漁師たちは漁に出られず、島々との定期船も途絶えてました。南府の冒険者ギルドは、当初ワラが暴走したものとみなして、俺にワラを鎮めて欲しいとの依頼だったのです。」

「その話はリーゼからも聞いていたが、私は精霊が荒れるなどおかしいと思っていたのだ。」

「教授、仰る通りです。真相は違いました。ワラは黒ずくめの魔術師に、魔力を吸収する羽衣を巻き付けられて、外すことができないまま魔力を奪われてしまい、魔力切れを起こして、南部湾の海中で動けなくなっていたのです。南部湾が荒れていたのは、ワラの衰弱を感じた海の魔物が、湾内に侵入して暴れていたせいでした。」

「それをゲオルクが救出したのだな?」

「はい。ビーチェさんの叔父さんが船を出してくれたお陰です。」

「その羽衣はおそらく魔具だな。ゲオルク、その羽衣は今どこにある。ぜひ調べてみたい。」

「俺も吸魔の羽衣は魔具だと思ったので、南府ギルド経由で南府魔法学院に調査をお願いしました。」

「なんと勿体ないことをしたのだ。私の所に持って来るべきではないか。私のことを忘れていたのか?」

「いえ、教授。急を要すると思ったので、時間を掛けて東府に持って来るよりは南府で調査に出しました。それに南部全体が被害を受けたのですから、南部で対処するのが筋です。」

「うー。確かにそうだな。すまなかった。魔具の研究成果については、南府魔法学院に情報公開を要請しよう。」


「で、ゲオルク、ワラはその黒ずくめの魔術師にいかにしてその魔具、吸魔の羽衣を巻き付けられたのだ?」

「はい、大司教様。ワラによると、黒ずくめの魔術師と一緒に精霊と交信できる奴もいたそうです。そいつに念話で呼び掛けられて海面に出て行ったら、魔術師にいきなり吸魔の羽衣を巻き付けられたそうです。その直後に魔物が南部湾に侵入して、海を荒れさせました。魔物はリヴァイアサンです。」

「リヴァイアサンだと?そいつはどうしたのだ?まだ南部湾にいるのか?」

「いえ、教授。ワラも含めてうちの精霊たちで追い払いました。」

「はて?ワラは魔力切れを起こして衰弱していたのではなかったかな?」

「はい、大司教様。その通りでしたが、海中より引き上げて、すぐに魔力を補給しました。それから吸魔の羽衣を剥ぎ取って、その場で俺と契約したのです。ワラは元気を取り戻し、精霊たち5人が魔力を一気に放出すると、リヴァイアサンは一目散に外洋に逃げて行きました。」

「ゲオルクが剥ぎ取ったのか?吸魔の羽衣は人間には効かないのか?」

「いえ、教授。俺は魔力を放出できないので、そのせいで俺には効かなかったんです。神官上がりの南府ギルドのギルマスは、やはり魔力が吸い取られると言ってました。」


「なるほどな。ゲオルク、よく分かった。

 しかし大司教様、ゲオルクの話の通りなら、これは由々しき事態ですぞ。」

「左様、南部が攻撃されたと言うことですな。教授、これはまさに一大事です。南部への攻撃はトレホス王国への攻撃と同じ。東部公爵様へご報告せねばなりません。」

「大司教様、至急、公爵様のもとへ参りましょうぞ。

 ゲオルクも付いて参れ。一部始終を公爵様にご報告するのだ。」

「はぁ。いきなりですか?」

 大司教様はパンパンと手を叩き、お付きの司祭を呼んだ。

「至急、公爵邸へ参上します。馬車の用意と、前触れのお使者を出して下さい。先方には『火急なる要件につき、速やかな面会を希望する。』とお伝えするのです。」

「承知しました。」司祭はすぐに部屋を出て行った。


 30分もしないうちに、俺は大司教様とルードビッヒ主任教授と一緒に、精霊たちを連れて、教会の馬車で公爵邸に向かっていた。なお、お姉様方は教会でお留守番である。貴族の出のベスさんを除き、平民出の皆はあからさまにほっとしていた。


設定を更新しました。R4/3/20


更新は火木土の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2002hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


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